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40 仮面の賢者で戦ってみる

改訂版です。

 偽装盗賊団の大半は商人たちの方へと向かった。

 俺には2人が左右から挟み込んでくるようだ。

 対応するべくホルスターから銃を引き抜いた。


『いつまでも銃じゃ格好つかないな。

 今から、コイツはガンセイバーにしよう』


 ガンセイバーは「ヴンッ」と音を発して薄紅色の光の棒を長剣サイズまで伸ばす。

 光剣モードだ。


『まずは【剣術】スキルを伸ばしたいんだが』


 光剣モードにしたら敵が踏み込んでこなくなったんですが?

 仲間が次々と正体不明の攻撃で倒されたからだろう。

 またもや得体の知れない攻撃をするんじゃないかとビビっている訳だ。


「ええい、何をしている!

 さっさと殺さないかっ!!」


 熊男は興奮しているが、口だけだ。

 一歩も動かず地団駄を踏むだけの簡単なお仕事しかしていませんよ?


『部下に押しつけて逃げる気だな』


 頃合いを見て隠れそうだ。


『させんよ』


 先手を打って結界魔法だドン!

 少し広めに展開したから、すぐには気付かれないだろう。


「うわっ」


「なんだ、これは」


「ビクともしないぞ」


 背後から動揺する声が聞こえてくる。


『そっちは気付くよな』


 商人や護衛に攻撃しようとしたら魔法障壁によって接近すら阻まれるんだから。


「くそっ、剣でも貫けない!」


 忌々しげに毒突いている。

 突こうが切り付けようが弾かれるからだろうな。

 魔法剣でも使えば話は別だがね。

 それでも簡単には破壊できないが。


「無駄だ」


 その言葉は障壁を越えようとしている連中に聞かせるためのものではなかった。

 単なる独り言だ。

 だが、俺を挟むように立っている2人には聞こえたらしい。

 更に動揺したようで完全に腰が引けていた。


『練度も経験も奴らの中で最低か』


 どうやら時間稼ぎが狙いらしい。


『たった2人で?

 舐められたものだな』


 俺は右側の男へ向かって無造作に踏み込んだ。

 本気にはほど遠い動きだったのだが……


「ひっ」


 仰け反るのが精一杯といった様子だ。

 後は間合いを取ることなどせず構えた剣をカタカタと振るわせていた。

 普段の訓練は何の意味もなさなかったようだ。

 拍子抜けである。

 おかげで右手の光剣を振るうことを忘れてしまった。


『俺も人のことは言えねえか』


 自嘲しながらも右手の光剣を振るおうとすると背後の気配に変化があった。


「うわああぁぁぁ─────っ!」


 左側の男が泣き叫んでいるような声を発した。

 上段に振りかぶって我武者らに突進してくる。

 完全に我を忘れた状態だ。


『相手に追い込まれた途端にボロが出るのか』


 訓練も実戦経験も少ないのは見え見えだった。

 実力は推して知るべしってやつだ。


『む』


 ここで目の前の奴が動いた。


「ええーいっ!」


 突きを入れてくる。

 背後から迫る奴は振り下ろし。

 どちらも多少は訓練を受けているだけはある動きをしている。

 それが背後と正面からほぼ同時のタイミングとなった。

 示し合わせた訳でもないのに、偶然とは恐ろしいものである。


『これを回避するのは勿体ないな』


 俺は左右の光剣でこれらの攻撃を流しつつ受け止めた。

 両手でそれぞれ鍔迫り合いするような形になる。


「えっ」


「うわわ」


 まさか受け止められるとは思っていなかったのか、2人は無防備な状態で固まっていた。

 せっかく鍔迫り合いの状態なのに力で押し返そうとすらしていない。


『ダメだ、話にならん』


 早々に見切りをつけた俺は2人を左右の光剣で同時に切り伏せた。

 と同時に間合いを外すと血飛沫が派手に舞う。

 俺はそれを被ることなく間合いを取った。

 2人は互いの血で濡らし合ったのち地面へ崩れ落ちた。


「お?」


 たったこれだけで上級スキルの【二刀流】をゲットですよ?

 【剣術】スキルの熟練度も上がったみたいだし。

 相手の歯ごたえのなさに、あんまり嬉しくないと思ったのは贅沢だろうか。


『さて、熊男は逃げたな』


 既に姿は見えないが、森の中へ逃げただけだ。

 十中八九、馬が繋がれているアジトに向かうだろう。


『馬で逃げるなど許さんがな』


 アジトは結界のすぐ外だ。


『せいぜい走り回るがいいよ』


 その間に俺は部下どもを片付ける。

 ひとつ懸念があるとすれば、熊男がいないことに部下どもが気付くことだ。

 士気が著しく低下して算を乱すように逃げ惑われると厄介である。

 終わらせるのに余計な時間がかかってしまうからな。


 故に速攻で連中に余裕を与えない。

 ただし速過ぎると、そのせいで士気が崩壊することもあり得る。

 連中がギリギリ反応できない程度の速度に絞った。


『【手加減】から統合した【身体制御】スキルが仕事してますよ?』


 あと仮面ワイザーのスーツも補助的に働いている。

 十倍の負荷がかかるようにしてあるからな。


 引っ掛かる程度にしか感じないが、この感覚のお陰で加減を意識し続けられる。

 やり過ぎ防止の安全装置みたいなものだ。


 俺が奴らの1人の間合いに踏み込むと──


『ほう』


 相手は距離を取るべく飛び退り、他の面子が牽制してきた。


『連携ができているか』


 そして魔法障壁への攻撃を保留し、俺を囲むように動き始める。


『判断も的確だな』


 少なくとも先程の2人とは比べ物にならない。


『これで熊男が逃げたことに気付かないなんて考えられないな』


 それでも逃げずに戦うことを選ぶとは意外である。

 何か様子がおかしい。

 先程の動揺が嘘のように連中が暗い目でこちらを見ていた。


『何を考えている?』


 疑問を感じたら【天眼・鑑定】タイムだ。


『重犯罪を犯した奴隷、か……

 しかも隷属の魔道具で絶対服従状態』


 全員がそういう連中だ。

 おそらく熊男以外は犯罪奴隷ってことなのだろう。


『捨て駒ってことか』


 熊男が逃げる訳である。

 そして、この連中は敵前逃亡ができないと。


『暗い目をするわけだ』


 死刑宣告を受けたようなものだからな。

 一方で修羅場慣れしているとも言える。

 どう足掻いても死ぬときは死ぬという事実を何度も目に焼き付けているのだろう。

 今度は自分の番になっただけ。


『こういう輩は開き直るからなぁ』


 どうせ死ぬならと自暴自棄な状態でやる気を見せる。

 回避も防御も考えない。

 攻撃に特化するとなればアンデッドに近いかもしれない。


『まさに生きる屍だな』


 重犯罪者なら同情の余地はないがね。

 むしろ好都合。

 確実にそういう連中を屠れてこそ弱肉強食の世界で生きていけるというもの。


 元は人を殺した経験のない現代日本人。

 ギリギリの緊張感の中に身を置いて戦い抜く。

 そこで初めて己の精神が打ちのめされるか否かが判明するはずだ。


 俺は正面にいる男に踏み込んで切りつける。

 男は反応するものの対処できずに深手を負った。


「ぐあっ」


 血飛沫が上がる前に横に回り込んで蹴り飛ばす。

 ここだけ瞬間移動したみたいになるが仕方あるまい。


『まずは1人』


 ここで一斉に襲いかかってくるかと思ったのだが……


『警戒されたか』


 やはり瞬間移動もどきはマズかったかもしれない。

 いくら攻撃に特化しても当たらなければ意味はないからな。


『とすると相打ちでカウンター狙いか』


 俺の攻撃が当たる瞬間なら踏み込みで足を止めると考えたのだろう。

 確かにその方が狙いやすくはなる。

 連中の目線では最善手になるだろう。

 だが、俺としては不満の出る展開だ。


『そっちがそのつもりなら……

 意地でも突撃したくなるようにするまでだ』


 両手のガンセイバーをマシンガンモードにしてビー玉弾をぶっ放す。

 威力的には殺傷力がないが痛みは感じる。

 三点バーストで撃つとバチバチバチと音を立てて着弾。


「ぎゃあっ!」


「ぐわぁっ!」


 実に痛そうな反応を見せてくれるので当てる部位を変えながら打ち続ける。

 結果、ビー玉弾の餌食となった男たちは奇妙な踊りを披露することになった。


 それを見た男の仲間たちは剣を構え直す。

 相打ちにすらできない状態では防御を考えざるを得ないようだ。


『透明な弾を見切れるならやってみせろ』


 すべてを見極めるなどこの連中には不可能だが。

 ならば前に出るしかなくなる。

 その場合に懸念材料となるのが下に落ちたビー玉弾だ。

 これを踏みつけて転ぶことがないよう地面に落ちた弾は自動的に回収される設定である。


 最初に狙った2人が痛みで行動不能になる前にターゲットを変更する。

 相手の変更はランダムだ。

 俺自身が向きを変えながら正面に来た奴を撃っていく。


『待っているだけだと完封で終わりだぞ』


 痛いだけでは済まないからな。

 同じ個所を何度も撃たれれば骨折だってする威力だ。

 そうならないように狙いは散らしているがね。


 そのうち横に回り込んで攻撃しようとする素振りを見せる奴が出てきた。

 ガンセイバーで牽制すると横へ横へと逃げていく。


『お前だけじゃ意味がないんだよ』


 が、そいつが足を使うようになったことで他の連中も徐々に動き始める。


『コレを待ってたんだよ』


 すかさず光剣モードに切り替えて迎え撃つ。

 一度始まってしまえば後は乱戦だ。


 背後から剣を振り下ろさんと突っ込んでくる奴がいる。

 気配と空気の流れで丸わかりだ。

 半身をずらし、なおかつ光剣で流して相手の体勢を崩す。


 斜め横から別の奴が突きを入れてきた。

 更に別の方向から斬り掛かってくる。


『ぬるいぬるい、それで退路を塞いだつもりかよ』


 後ろは見ずに打ち払う。


「なっ!?」


 突きはもう一方の光剣で誘い込むように流した。

 斬り掛かってきた男の方へ向けてね。

 と同時に背後の男を横凪ぎに斬り捨て飛び退いた。


「かはっ!」


「がはっ!」


 2人倒れていく。

 俺が斬ったのが1人、突いてきた男が1人。

 こいつは俺に斬り掛かってきた仲間の手によって斬られた。

 全力で振り抜けば途中で止めるなんて至難の業だ。

 この連中の技量では無理だろう。

 敵を誘導するだけで簡単に同士討ちという訳だ。


「くそっ」


 斬り掛かってきた男が一歩引く。

 周囲の連中もフォローするように攻撃を仕掛けてくるが動きに思い切りがない。


『死を覚悟したんじゃないのか?』


 突き男のように無駄死にすることを嫌ったようだ。

 が、その判断は間違いである。

 むしろ踏み込まねば勝ち目は遠のく。


 後は作業のようなものだった。

 袈裟切りで振り下ろされる剣を切り上げで受け流しと切り付けるのをほぼ同時に行う。

 俺には擦ることもなく相手はその一撃で深手を負い容易く絶命した。

 続いて残像を残す9連突きで3人同時に片付ける。

 左右から挟み込んできた相手には共に誘導し突き男と同じ末路を辿らせた。


 斬って斬って斬りまくる。

 最後の1人にトドメを刺し終わるまで、それは続いた。


『終わりか』


 ガンセイバーの光剣モードを解除するが特に感慨を覚えるということもなかった。

 ガンスピンでガンセイバーを回転させてからホルスターへ仕舞う。

 やはり動揺はない。

 相手が弱すぎたことは不満だが俺の精神はそれほど柔じゃないと分かったのは収穫だ。

 結果は上出来と言えるだろう。


読んでくれてありがとう。

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