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380 亜神の仕事は報告案件

修正しました。

マイカ → マリカ(2個所)


気が付けばPV1千万に到達していました。

ユニークも600000到達です。

ありがとうございます。

本当はユニーク500000で報告したかったんですけどね。

気付くのが遅れましてw


 レオーネ一家の再会に茶々を入れるつもりはない。

 さて、誰と話したものかな。

 そんな風に思っていると少し背の曲がった爺さんがヒョコヒョコした足取りで近づいてきた。

 どことなく飄々とした感じのする爺さんだ。

 割と人懐っこい雰囲気がある。

 聞いていた海エルフの印象と違うな。

 もっと排他的で冷たい感じがすると思っていた。


「やあ、こんにちは」


 試しに俺から挨拶してみる。


「はい、こんにちは」


 感じた雰囲気と違わぬ親しげな挨拶が返ってきた。


「ひとつ、よろしいですかな」


「ああ」


「ハルト・ヒガというのは貴方のことですかな」


 ん? なんで、この爺さんは俺のことを知ってるんだ?

 神託で俺のことを聞いただけなんだよな。

 人相風体まで事細かに教えるとは思えないんだが。

 なんにせよ、質問には答えないとな。


「いかにも俺のことだ」


 返事をすると周囲にいた海エルフがどよめいた。


「神のお告げ通りの姿だ」


 そんな細かな神託だったのかよ。


「銀髪に濃紺の瞳の王」


 あー、銀髪は俺だけだよな。

 それを言うだけで伝わるか。


「あのとき見た姿のままだ」


 は? 見たってどゆこと?


「本当ね、綺麗」


 1人だけじゃないのか。

 これって……


「幻を見た時は驚いたけど」


 ああ、やっぱり。

 そこまでやったのかよ、ラソル様。

 芸の細かいことをしてるな。

 視覚情報まであるなら見間違える訳もないよね。


 なんだか珍しく真面目に仕事してるぞ。

 遊んでいる時並みの熱心さだ。

 やっぱりベリルママの監視付きだと違うってことか?


「実は神託がありましてな」


「なるほどな。

 神の言葉を聞いたか」


 あ、爺さんが目を丸くしているな。

 俺があっさり爺さんの言葉を肯定したからか。


「あーっと、……爺さん?」


 名前を聞いてなかったので呼びかけるのも微妙な感じになる。

 が、呼びかけたことで何とか意識が己の内側から戻ってきたようだ。


「これは申し訳ありません。

 名乗っておりませんでしたな。

 ワシはこの集落の長でガットと言います」


「そうか、ではガットと呼ばせてもらおう」


「はい」


 返事をしたガット爺さんは何か迷いを含んだ視線を向けてきていた。


「何か考え込んでいたようだが?」


 故に少し水を向けてみる。

 それだけでガット爺さんは喋り始めた。

 あまり思い詰めた感じではなかったようだ。


「もしやヒガ様も神のお告げを受けられたのですか」


「まあな。

 俺が聞いたのは神の敵を倒せということ。

 後は海エルフに俺のことを話したということぐらいだ。

 だから、ここでどんな神託が下されたか詳細は知らない」


「おお! おおっ!!」


 ガット爺さんが仰け反っている。

 腰は大丈夫なのかよ。


 あー、でもそれどころじゃないや。

 またしても外野がざわめきだした。


「神の使いにして神の戦士」


 ……ちょっと待て。


「賢者にして王、そして神の戦士」


 なんだ、その神の戦士というのは。


「我らの救世主、神の戦士」


 誰も彼もが俺のことを神の戦士と呼んでいる。

 前言撤回だ。

 真面目に仕事をしてるとか思って損した。

 遊びやがったな、あのダメ亜神。


 【ポーカーフェイス】スキルに頼らなきゃ怒り顔を抑え込めそうにない。

 とりあえず【多重思考】で怒り担当と愚痴担当を何人か用意して会議だな。

 集落の人々に対応する表の俺は参加しないが荒れるであろうことは容易に分かる。

 で、会議の結果をメールでベリルママに報告と。


「なんだか騒ぎになっているようだが?」


 素知らぬ振りで集落の人々の様子に困惑した様子を見せておく。


「すみませんな。

 皆、怯えていたのです」


「怯えていた?

 神の敵はすでに姿を見せたりしているのか」


「いえ、そういうことではなく……」


 ガット爺さんが言い淀む。

 最初の飄々とした雰囲気が萎むように消えてしまっていた。

 それでも言わねばならぬとばかりに決意の表情を見せていた。


「この集落だけでなく近隣で行方不明になっている者が大勢いるのです」


「その話はリオンから聞いた。

 事情を聞いて神の敵を倒す理由がハッキリしたな」


 だが、行方不明になるだけなら怯える理由としては弱くないか?


「神のお告げにより消えた者は異界の使者に食われたと知りました」


 うわー、ぶっちゃけやがった。

 最低だ。

 なに考えてんだよ、ダメ亜神。


 事実だとしても伏せるべきじゃないのか。

 家族とかが時間をかけて受け入れられるようにしないと傷つくだろうが。

 確実に報告案件だ。


「我々は漁がなくては生きていけません」


 些か思い込みが激しいように思えるが、事情はある。

 この近辺では獣が少ないのだ。

 しかも農耕に適した土地とは言い難い状況である。

 必然的に海の資源に頼らざるを得ない。

 それ以外の方法で生活を変えるには移住しかない訳で。


「ですが、異界の使者がいる限り我々は常に死の恐怖と向き合わねばなりません」


 確かにそうだ。

 どのタイミングで襲われるかが分からないからな。

 それ以前に防ぐ手立てがないことが恐怖をより増幅させている。


「漁に出る者だけではありません。

 家族の誰かが突然いなくなる。

 これもまた我々には耐えがたい恐怖なのです」


 ああ、身内の絆が何より大事な種族か。

 これは俺らが思う以上にダメージがデカそうだ。

 ダメじゃんかよ、ラソル様。


 ざっくりで見て肝心な部分をあんまり見てなかった感じか。

 やらされた感満載の仕事をした結果ならマジで度し難いんですが。

 そうも思ったけど、何か違う。


 これ自分で泥を被りに行ったな。

 で、尻ぬぐいを俺にやらせることで俺の株を売る。

 目的がイマイチ不明だが……

 バーグラー王国の時と似ている気がするな。


「行方不明になった者がいるという話はリオンから聞いた。

 そういう事情だったとはな。

 俺はただ神の敵を倒せと言われて場所を告げられただけだからな」


「そうだったのですか」


「まあ、身内の家族が困っているなら頑張るしかねえな」


「もったいないお言葉です」


 平伏されてしまった。


「……そういうのは無しで頼むよ」


 言ってる側から集落の皆が土下座状態。

 誰一人やめてくれません。

 勘弁してください。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 あの後、どうにか土下座を止めてもらって話を更に聞いた。

 異界の使者と彼等が呼ぶクラーケンだったものは翌朝に襲撃してくるらしい。

 そこを神の使いである賢者が戦って滅ぼすと言われたみたいだね。


 最初から俺の勝ちを前提とした話をしていたようだ。

 俺としては逃げられることも無いとは言えないと思っていたんだが。

 情報が少ない敵だと手探り状態になるというのに。

 これでは確実に仕留めなければならない。


 まったく……

 程良い具合に倒さないと、俺が化け物扱いされかねないんだぞ。

 まあ、海エルフは他種族との交流は希薄な方だから情報は漏れにくいだろうけど。

 おそらく口止めすれば言うこと聞いてくれるとは思うし。

 後始末とか余計な仕事を増やしてくれるぜ、ラソル様。


 ああ、そうそう。

 神の戦士というのは海エルフたちが言い出したのではないってさ。

 おまけに戦士の衣を纏って戦うって、なんだよ。

 人前で変身しろってことか。


 冗談だろ?

 黒歴史級の羞恥プレイをしろと俺に言うのかね。

 ハードルをやたらと上げてくれるじゃないか。

 お陰でベリルママへの報告が増えたさ。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 夜を徹して俺たちは準備した。

 密かに空中空母を呼び寄せて周辺の警戒も行った。

 相手は海の中だからな。


 観測は海流のシミュレーションをデータとして用いて行っていた。

 発見できるのではと期待してたんですけど甘くはありませんでしたよ。

 この程度で発見できるなら、とっくに神様たちが何とかしているだろうよ。


「さて、ローズさんや」


「くうく?」


 なあに? と可愛らしく首を傾げて聞いてきた。


「死角の敵の確認は任せた」


 戦うのは俺だけだが、リンクしているローズなら視覚を共有できたりするのでね。


「くっくくぅ!」


 任せなさい! とは自信たっぷりだな。

 まあ、武闘派なローズさんであるからして信用するとしよう。


「シヅカとマリカも頼むな」


「ウォンッ」


 ハイフェンリル本来の姿に戻ったマリカは即答したがシヅカは少し違った。


「主よ、些かやり過ぎではないか?」


 龍の姿に戻ったシヅカが答える。


「目立つのは嫌なんじゃろ」


「その辺の対策はやってる」


 空中空母で広域に幻影魔法を展開中だ。

 海エルフたちには見られるが、それは仕方ない。

 むしろ彼等に対するアピールである。

 効果は上々だろう。

 最初はパニックになったがな。


 反省はしている。

 後悔は……口止めしておいたからしないと思う。

 たぶん大丈夫。

 それより、そろそろ時間だと思われる。

 気合い入れて変身しないとな。


読んでくれてありがとう。

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[気になる点] 帰って来ない者は異界の使者に喰われた、と聞いて、何やってんだよダメ亜神、報告案件だな、とか主人公の心象が描かれていますが、前話で飛行機から降りる前に、遠聴によって村人の声を聴いた時、異…
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