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379 海エルフの集落へ

修正しました。

ハッチの開く → ハッチが開く

 結局、海エルフの集落には全員で来た。

 といってもヤクモで訓練していた面子は居残りである。

 彼等には引き続きハリーがつくことになった。

 ローズは俺と一緒に来てもらっている。

 居残りとなった面々も集団で行動すれば危機的状況に陥りはしない。

 俺がそう見て取った訳ではなく、ローズがそういう風に太鼓判を押したのだ。

 ならば信用するさ。


 という訳で輸送機で飛んできたように見せかけて海エルフの領域へと転送魔法を使った。

 ただし、いきなり集落の上にパッと現れたりはしない。

 リオンという客人を乗せているので。


 ある程度の距離は飛ばないと、どうやって移動したのかという話になるからな。

 最初は空を飛んでいると言っても信用していなかったし。

 幻影魔法で下の様子はずっと見せていたんだかね。


 乗り込んだ記憶がない上に移動している感覚がないと本当だとは思えないらしい。

 乗り心地が良すぎるのも考え物である。

 まあ、疑うのもここまでだ。

 海エルフの集落が見え始めたからな。


「ほら、あれがリオンの集落なのだろう?」


 壁面モニターの一点を指差した。

 するとリオンが食い入るように、そこを凝視している。

 ぐんぐん大きくなる集落の光景にリオンが目を丸くしていく。

 口も開いているな。


「皆が集まってる!?」


 リオンの言う通り、集落の人々が広場のような場所に集まってこちらを見ていた。


「こっちを見ているような?」


 そりゃ見るだろうな。

 ベリルママの指示でラソル様が神託を出したから。

 どんな内容かは知らないんだけど。

 特に把握してなくても行けば分かるって言われたし、大丈夫だろ。


「見ているような、じゃなくて見ているんだよ」


「えっ!?」


「到着すれば分かるさ。

 たぶん神のお告げがあったと言われるだろうけど」


「ええっ!?」


 仰け反ろうとして介護ベッドのマットに阻止されているリオン。

 反動で前のめりになってしまったのは御愛嬌。

 この調子なら安静にする必要もないな。

 様子を見ようかと思ってたけど意味なかったわ。


「神のお告げってどういうことですか!?」


 慌てて起き上がってきたリオンが勢い込んで聞いてきた。

 空を飛んでいると言っても半信半疑だったのに神様の話だと食いつくのか。

 もしかして海エルフは信仰心が厚い?


「どうもこうもないけどな。

 俺は神託があったことは知ってるが内容までは知らんし。

 知りたきゃ現場で聞けば教えてもらえるだろ」


 ここで、デタラメを言う訳にもいかないしな。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 集落の外れに輸送機を着陸させる。

 敵対的な反応は一切なかったのは有り難い。

 ちゃんと神託で俺らのことも伝えられていたようだ。

 エレベーターで下に行き格納庫のハッチを開けて外に出る。

 リオンも連れて行くことにしたが、エレベーターで騒がれたのはお約束なんだろうか。


「えっ、えっ、ええ─────っ!!」


 右を見て左を見て、あわあわしていた。


「どどどどうなっれいるんですかっ!?」


 どもってるし、噛んでるよ。


「ここは何処です?」


「さっきも説明した輸送機の中だよ。

 今まで居たのは上の階で、ここは格納スペースの下の階。

 これはエレベーターという乗り物だ。

 箱を上下させて行き来するだけの単純な仕組みだぞ」


「……はあ」


 拡張現実の表示で[困惑]の状態異常がついている。


「理解が追いつかないか?」


 聞いてみたら、ゆっくりと頭を振った。

 理解はできるが今までの常識と大きく食い違うために混乱しているようだ。

 混乱から復帰させるだけなら、そう困らない。

 魔法でバフをかければいいだけだ。


「悪いが魔法を使わせてもらう」


 さっさと魔法を行使。

 リオンを混乱状態から復帰させた。

 何時までもこのままという訳にはいかない。


 時間的な余裕はまだあるが状況は芳しくないのでね。

 脳内スマホで電話している時に聞いた話だと、むしろ悪いと言うべきか。

 欠片の灰と融合したクラーケンの様子が変わり始めているらしいので。

 もちろん悪い方へと変わるのは言うまでもない。

 凶暴化しそうだなんて聞いた日には対処せざるを得ないよな。

 レオーネの身内の危機なんだし。


「はい、終了」


「え?」


 訳が分からないと言いたげなリオン。

 だが、今度はバフの効果で状態異常には陥らない。


「降りるぞ」


 後部ハッチを開ける。

 と同時に外からの音も聞こえてくるようになった。

 集落の海エルフたちが近づいてきているようだ。


「神のお告げは本当だった」


 聞こえてきた第一声がこれだよ。

 俺以外には明確に聞こえてはいないはずだけどさ。

 集落の人達の位置をピンポイントで把握して【遠聴】で確認してるからね。


「おいおい、神の言葉を疑っていたのかい」


 頭からお告げを信じ切っているっぽいお言葉ですよ、これ。

 海エルフはかなり信心深そうだ。

 外界との交流が少ないせいなのか?

 いずれにせよ下手なことは口に出せないね。


「神を疑うんじゃなくて自分を疑っていたんだ。

 もしかして自分が壊れたから幻覚を見たのかって」


 壊れたというのは大袈裟だなぁ。


「確かに、そう言いたくなる気持ちも分かるわ」


「神の使いが空飛ぶ乗り物で飛んでくる、だもんね」


「賢者にして東の果ての島国の王なんて言われたし」


 あー、そこまで言っちゃうんだー。

 ちょっとベリルママにメールで問い合わせておこうかな。

 場合によってはラソル様のお仕置きが追加延長されるかもね。


「それよりもワシは我らの危機というお言葉の方が気になったぞ」


 声の感じからして年配と分かる人が別の話題を口にした。


「邪悪なる異界の使者が我らが母なる海を穢しに来るだったよね」


「ええ、怖いわ」


「大丈夫だって」


「そうだよ。

 神の使いが滅ぼしてくれるって言ってたじゃない」


 ハードルを上げてくれるじゃないか。

 場合によっては逃げられることも考えておかないといけないのに。

 念のためにメールの報告に追加しておこう。


「そうだけど……

 異界の使者は帰ってこない皆を食べたんでしょう」


 ぶっちゃけたな。

 しょうがないとは思うけど。

 下手に帰ってくるかもしれないと期待を抱かせるよりはマシか。


「それも聞いたね」


「だから異界の使者は神の使いが滅ぼしてくれるって」


 大事なことだから2度言いました、か?

 更にハードルを上げてくれるとはね。

 念のためじゃなくてメールの報告は確定だ。


「これ以上、犠牲者が出ないとは聞いてないわよ」


「言われてみれば……」


「だ、大丈夫だよ」


「そうそう」


「きっと、そこまで言う必要がなかっただけだって」


 こうして聞いていると楽観的な意見の方が多いように思える。

 が、決してそうではない。

 重苦しい雰囲気に包まれているからな。


「あ、空飛ぶ乗り物の形が変わっていくよ」


 ハッチが開くのに気付いたのは子供と思しき声だった。


「本当だ」


「何が起こるんだ?」


「分かんないよ」


 反応するのは子供たちばかり。

 大人は見守ることにしたようだ。

 そこは有り難いね。


 飢饉対策で訪れた最初の村は敵対的な行動をされたからなぁ。

 眠らせて事なきを得たけど。

 後処理が面倒だから、アレはできればやりたくはない。

 とにかく彼等が見守る中で俺たちは降りていくことになった。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 集落の海エルフたちと対峙する形になった俺たち。

 向こうは色々と驚いていた。


「ド、ドワーフ!?」


「ラミーナもいる」


 ちょっとしたイタズラ心で先に降りてもらったのだ。


「子供もいるぞ」


 ノエルの機嫌ゲージが一気に下がった。

 きっと内心では「子供、違う」と言っているはずだ。


 ちなみにマリカは狼モードで俺の側にいる。

 マイカがモフモフモードで手放さないとも言うが。

 頼むから海エルフたちの前で「うへへ」とか奇妙な声を出さないでくれよ。


「しかもエルフだ」


 そこに驚くのかよ。

 同族みたいなものでしょうが。


「女の人が多い……」


「ホントだ」


 ゴメンとしか言い様がない。

 リオンと狼な状態のマリカを除外すれば俺の妻か婚約者だからな。

 今更ながらにして思うが「それ、なんてハーレム?」である。

 言わなきゃ、これ以上のツッコミも入らないだろうけど。

 そして何よりも驚いていたのが──


「「「「「リオン!?」」」」」


 リオンが降りてきたことだろうか。

 大人たちがほぼ全員でハモっていたもんね。


「どうして?

 え、あれ、レオーネまで……」


 おばさんが1人、狼狽えている。

 よく見るとレオーネが齢を重ねたような見た目だ。


「おかーさん!」


 たまらずといった感じでリオンが飛び出していく。


「レオーネは行かないのか?」


 俺がそう問うとばつの悪そうな顔をされた。


「自分は一度、ここを飛び出した身ですから」


「細けえこたあいいんだよ」


 そう言って背中を強引に押し出した。


「えっ、あの、ハルト様」


「親が生きているってのは、それだけで幸せなことなんだぞ」


 向こうの世界じゃ死んだ方がマシな碌でもない親もいたけどな。

 とりあえず感動の再会を満喫してくれ。

 それくらいの時間はあるだろうさ。


読んでくれてありがとう。

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