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348 ネタばらしと説得開始

修正しました。

俺が使っていた~自信満々になれるものだ。 → (追加および変更)


 マイカがホラー映画と言うだけのことはある。

 グロ注意な千切れ方をした魔物の四肢がそこかしこにあるからなぁ。

 屍が折り重なっているだけならまだしもね。

 氷弾で倒したから血の臭いが充満することだけはないのが救いだ。

 なんというか俺も慣れてしまったものだ。

 死体が並んでいても何も思い浮かばない。

 死んでいるのが魔物だからというのもあるだろうけど。

 風景の一部として捉えてしまっている。

 まあ、ミズキやマイカには刺激が強いかもな。

 とりあえず、今この瞬間だけでもグロいのを何とかするか。

 あれだけの数の魔物を格納するとなるとノエルたちでは些か時間がかかる。

 一瞬では無理だ。


『おーい、聞こえるか』


 念話で古参組と訓練組に声を掛ける。


『ハル兄』


 真っ先に反応したのはノエルだった。

 名前を呼ぶだけだが、返事と何の用であるかの確認のニュアンスが込められている。

 故に古参組の一同は沈黙していた。

 訓練組は口々に念話を返してきたけど、慣れていないからしょうがない。


『そこの死骸の回収は俺がやる』


 言いながら地魔法のメタルワイヤーを発動。

 無数にワイヤーを作り出して氷弾壱式を射出させるような勢いでドンドン伸ばしていく。


『いまワイヤーを送り込んだ』


『わかった』


 転送魔法と倉庫のコンボでも良かったんだけどね。

 今更感満載だけど気を遣ったのだ。

 予告なしでいきなり魔物が一瞬で消えたら……

 ノエルたちでも驚くのでね。

 で、一瞬だけ虚を突かれたようになって俺の仕業だと気付くんだよな。

 いつものことだから。

 そして文句を言われたり苦笑されたり。

 古参組ならその程度のことだ。

 毎度のことだからね。

 ただ、今回は国民になって間もない訓練組がいるからなぁ。

 大声を出して驚かれるのは避けたいところだ。

 目撃されていないとはいえ冒険者たちが扉の向こう側にいる。

 妙な噂が立つようなことは極力避けたい。

 それ以前にパニックとして部屋の中に伝わってしまったなら、とても面倒だ。

 まだ始まったばかりだからな。


『ワイヤーが来た』


 ノエルがわざわざこんなことを言うのは訓練組を意識してのことだな。

 伸ばしたワイヤーに過剰反応させないよう気を配ってくれている訳だ。

 結構な勢いでワイヤーが迫ってくるのを見て騒がれては元も子もないからな。

 桃髪ツインテ天使様のおかげで誰も騒ぎ立てたりしない。

 安心してメタルワイヤーを魔物や千切れ飛んだその四肢に突き刺していく。


『それじゃあ回収するぞ』


 返事を待たずにワイヤーごと倉庫へ回収した。

 魔力消費は節約できたな。

 すぐに回復するから、あんまり意味はないんだけど。

 ふと気付くとミズキとマイカが呆気にとられた表情で俺を見ていた。


「何したのさ」


「ワイヤー? みたいのが凄い勢いで伸びていったよ」


 しまった。

 この2人に念話を聞かせるのを忘れてた。

 おまけに幻影魔法は仕留めた後に消しているから、何がなにやらとなるのも無理はない。

 つくづく俺は抜けている。


「メタルワイヤーの魔法だな。

 アレを伸ばして死体の回収をした」


「ワイヤーで接触して回収ってこと?」


 ミズキが聞いてくる。

「ああ」


「そうすると転送魔法より魔力効率がいいの?」


 分かってらっしゃる。


「そうだけど、メタルワイヤーを使ったのは向こうにいる皆を驚かせないためだ」


「ああ、そうだね。

 いきなり消えたんじゃビックリするもの」


「ハルにしては気を遣うじゃない」


「……………」


 くっ、マイカに指摘されるとは。


「それよかさー、気になったことがあるんだけど」


 はて、何が気になったというのか?


「何だよ」


「今の返事だと転送魔法とメタルワイヤーだっけ?

 使った魔力の差は大したことないって言っているように聞こえるんだけど」


「……………」


 雑な性格をしているのに鋭いよな。


「あ、そうだよね」

 ミズキにも気付かれたか。

「いくら短距離でも、さっきの魔法の倍は魔力を消費してるんじゃないの?」


 しかも見積もりが的確だ。


「どちらを使ってもすぐにMPが回復するからな」


 隠すつもりはないので正直に言う。


「うそぉ!?」


「にゃんじゃとぉ!?」


 ミズキが目を丸くし、マイカが変な驚き方をしている。

 あ、この2人は俺のレベルを知らないようだな。

 上だとは聞いているんだろうけど4桁とか具体的な話は耳にしていないとみた。


「声がデカいよ」


 風魔法でブロックしたけど、緊張感は持って欲しいものだ。


「あ、ごめん」


「ぬうっ、……すまぬ」


 約1名の口調が変だがスルーしよう。

 半ネコ化したり武士っぽくなったり、忙しいことである。


「……規格外すぎるわ」


 何か呟いてるけど、これもスルーだ。


「ほら、行くぞ。

 ノエルたちを待たせているからな」


 なんだかんだで足を止めてしまっていた俺たちは再び歩き始めた。

 数百メートル程度なんだから歩かずに走れとツッコミが入るかもしれない。

 それをしないのは訓練組の仕事が残っているからである。

 避難誘導を始めるにあたって籠城している冒険者を呼び出して説得するという仕事が。

 実に面倒くさくて根気のいることだろう。

 とりあえずガンフォールとエリスに任せておけば大丈夫だとは思う。

 場合によってはタフな交渉が必要になるだろうけど。

 疲れる仕事を押し付けてしまっているなぁ。

 【多重思考】と【天眼・遠見】のスキルを組み合わせて見守っておく。

 あ、【遠聴】も使ってるよ。

 問題発生時に介入できるようにするのがメインの目的だ。

 サブの目的は「勉強させていただきます」である。

 エリスやガンフォールの交渉術が参考になるだろうからね。

 で、向こうの様子を確認しながら皆と話をしているというのが現状だ。

 話題は氷弾弐式なのでシヅカとマリカは口を挟んでこないんだけど。

 それでも俺たちの話の内容に耳をそばだてているようだ。

 だから無理に話を振る必要もないだろう。


「見た目は弾丸だったけどミサイルだったね」


「アニメの再現かと思ったわ」


 ミズキもマイカも一般的な女子の感想じゃないよね。

 的確なので指摘するべき言葉は何もないんだけど。


「でも、変だよね」


 ミズキが首を傾げている。


「何がさ」


 マイカはミズキの疑問が何であるか見当がつかないようだ。


「だって私達は皆の向こう側から見下ろす感じで見てたんだよ」


「んだんだ」


「魔物が邪魔だからハルくんがそういう角度にしてくれたと思うんだけど」


 そこまで言われるとマイカも気付くらしく「あー」とか言いながら頷いている。


「奥の魔物をロックオンする方法が謎なんだ」


 手前の奴らが邪魔で見えないからね。


「正面から魔物を見てたんじゃ無理だもんねー」


「そうなのよ」


 2人でうんうん唸り始めた。

 そこで考え込んじゃうんだね。

 マイカなんて自分でヒントになるようなことを言ってるのに。

 何気なく言ったことなんて意識する訳もないか。


「ハルがアシストした」


 こちらを見ながらドヤ顔で聞いてくるマイカ。


「ブブー、俺は手助けしてないよ」


 あえなく撃沈である。

 その割には悔しそうではないんだけど。

 だったらドヤ顔は何だったんだ。


「ハルみたいなスキルがあった」


 ドヤ顔ふたたびである。

 俺が使っていた幻影魔法と同じ原理だと思ったらしい。

 【遠見】スキルと幻影魔法でテレビ中継のようなことをしたと言いたいのだろう。

 幻影魔法は使っているが使い方がまるで違う。

 スキルの補助なんて必要ない方法だ。

 俺みたいなスキルがあったと言っている時点で根拠なしの勘で答えているよな。

 当てずっぽうだろうに、よくもまあ自信満々になれるものだ。


「ブブー」


 またも撃沈だが、悔しがっていない。

 まるで自分はまだ何も答えていないと言っているかのようだ。

 白々しいんだから。


「あ」


 それまで考え込んでいたミズキが不意に声を発した。

 無意識なんだろうけど上を指差して見ている。

 どうやら気付けたようだ。


「天井を鏡面化したのね」


「うーん、正解かな。

 天井そのものを鏡面化した訳じゃないけど、それに近いことをした」


「おおっ、やるじゃん」


 自分が正解したかのようにマイカが喜んでいる。

 こういう部分が此奴の良いところだな。


「実際はどうやったの?」


「幻影魔法を使ったのさ。

 アレなら任意の場所に出せるから」


「そっか、幻影魔法で鏡を映し出してそこに魔物を映したんだ」


「……ややこしいわね。

 でも、正解っぽい気がする」


「ぽいじゃなくて正解だ」


「こんな感じ?」


 さっそく試しているミズキ。

 すぐに再現できている。


「私もやる」


 追随するように幻影魔法を使ったマイカも完全に再現できていた。

 これくらいはできて当然なんだが。


「それを真似するなら弐式をコピーしてくれ」


「あっ、そうだった」


「いけね」


 大丈夫かよ……


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 籠城の扉前に到着するまでに氷弾弐式を習得とはいかなかった。

 複雑ではないが、それなりに工夫はしたからな。

 が、2人とも範囲魔法的な発想自体はすぐに気付いていた。

 誰かが思いついたことを他の人間が思いつかないはずはない。

 さすがに範囲内でランダムに動かすところで躓いてはいたけど。

 歩きながら色々やっていると時間などあっと言う間に過ぎていく。

 今の俺たちがまさにそれ。

 扉の前で休憩している一同を見て、とりあえず魔法の授業はお終いだと悟った。


「ガンフォール」


 呼びかけてようやく反応があった。


「来たか、ハルトよ」


「その様子だと苦戦しているようだな」


「状況しか説明できておらんのだ」


 溜め息と共にガンフォールがお手上げポーズをした。

 見聞きしていたから、それは知っているとは言えない。

 ちょっともどかしいが話を聞くことにした。

 それによると状況を説明しても一切の返事がないということだった。

 部屋の中に人の気配は感じるものの動きをほとんど感じられないという。

 全員が重症で動けないことも考えてたって?

 ないない、それはない。


「今度はエリスが説得してくれないか」


「私がですか?」


 ピンと来ないらしい。


「一緒に逃げよう的なニュアンスで頼む」


「わかりました」


 それでも指示には従ってくれた。

 ドアを3回ノックしてから声を掛ける。


「中の人、聞こえますか」


 ガンフォールの時のように体を強張らせるような感じの気配は伝わってこない。


「部屋の外の異常事態は解決しました」


 戸惑っている雰囲気がある。


「下の階はここより危険なようです。

 我々は上の階へ向かいます。

 もし良かったら一緒に行きませんか」


 さて、どう反応するかな。


読んでくれてありがとう。

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