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341 電話の後は身内で騒動?

修正しました。

そんな正確 → 損な性格

「まっ、待って!」


 両手を前に突き出して逃げ腰になっているマイカ

 だが、ミズキは知ったことではないとばかりに獲物を追い詰めていく。


「ウフフ、待つ訳ないじゃない」


 ここで制止するのは危険だな。

 俺がマイカだけを贔屓していると見られかねない。

 可哀相だが──


『ハルトよ』


 おっと、ルディア様だ。


『はい』


 今まで何故か音信不通だったが、話も再開になるようだな。

 マイカたちに構っている時間はない。

 【多重思考】を使えばできなくはないが、できれば現状より自分の思考を増やしたくない。

 あ、コブラツイスト。

 痛そうだ。

 マイカの絶叫的悲鳴が聞こえてくる。

 一応はミズキも加減してるみたいだけど。


『いきなり会話を中断してすまぬ。

 随分と待たせただろう』


 どうだろう。

 こちらも色々あったから待った気がしない


『いえ、お気になさらず』


『実は問い合わせていたのだが』


 話の流れからして、相手はあの御方だろうな。

 それにしては復帰が早い。

 超高速の念話でやりとりしていたようだ。

 うちではローズとシヅカならできる。

 教えればミズキやマイカもすぐできるようになるだろう。

 マリカで頑張ればなんとかなるかぐらいと思われる。

 ともかく膨大な情報のやり取りがあったはずだ。


『エリザエルス様が仰るには、いずれ動いてもらうことになると思う、だそうだ』


 やっぱりエリーゼ様だったか。

 それにしては表現が珍しく控えめだと思うのは気のせいだろうか。

 普段であれば「あとはヨロシクー」で丸投げしてくると思うのだが。

 原文ままじゃなくニュアンスを変えてきた?

 いや、そんな感じじゃない。

 ならば動くのはルディア様たちだけということだろうか。

 できれば、その程度の騒動であってほしいんだが。


『いずれの面子には俺も含まれるのですか』


 念のために確認してみた。


『そうだな、そうなるだろう。

 ハルトだけではなく協力可能な者はすべてだと思っておいてくれ』


『そんなに酷い状況なんですか?』


『分からぬそうだ。

 最悪のケースであれば、そういう状況になり得るとは聞いた。

 エリザエルス様が普段使っている封印の力を限界まで落としても読めぬらしい』


 何か知ってはいけない情報を聞いてしまった気がするんだが。

 最後の方の話は気付かなかった振りをしておこう。


『それは、もっと上に持って行けばどうにかしてもらえるのではないでしょうか?』


 上司だろうが何だろうが使える時に使うべきだろう。

 それでこそエリーゼ様だと思うのだが。


『こういう仕事を最も得意としているのがエリザエルス様なのだ。

 伊達に厄介な鏡面二重世界の管理を任されている訳ではないのだよ』


 【ポーカーフェイス】スキルを使っておこう。

 でないと頬が引きつって、また誰かに心配されかねない。

 マイカさんはコブラツイストの餌食中なので別の誰かだろうけど。

 次はノエルあたりか。


『……………』


 現実逃避は程々にしておこう。

 そう言いたいが、聞いてはマズいような情報がポンポン出てくる。

 ルディア様も動揺しているのがありありと分かるね。

 絶対にツッコミ入れないぞ。

 向こうが気付いても俺が素知らぬふりで押し通す。

 知ったことで引き返せなくなるなんて真っ平だ。


『では、人海戦術でとはいきませんか』


『それもやっている。

 場合によっては邪神戦争よりも厄介なことになりそうだからな』


『それは……』


 こちらにも仕事が回ってくる訳だ。


『すまぬ』


『いえ、ルディア様の責任ではないでしょう』


 むしろ皆が被害者である。

 なんにせよ俺らもお仕事を割り振られるのは決定事項のようだ。

 最悪のケースってやつになると地上でも少なからず異変とかが発生するようだな。

 こりゃあ保険は山ほど用意しといた方が良さそうだ。

 せめて友好国ぐらいは守れるように考えておくか。

 でないと人類滅亡とかあり得るかもしれんし。

 まあ、そんなのは最悪中の最悪のパターンを辿った時だけだろうけど。


『そうは言ってもな。

 惑星レーヌ上でも問題が発生するおそれがあるのだそうだ』


 ああ、やっぱり。

 そこは既に予想してましたよ。

 という訳で結局は働かされるんだよなぁ。

 でも、今回は丸投げって感じがしない。

 それだけに怖いというか不気味なんですけど。


『具体的にいつ頃かは……』


 ダメ元で聞いてみた。


『それについても確定情報はない』


 ああ、やっぱり。

 でなきゃ、とっくにエリーゼ様の言うプロが何とかしてくれてるって。


『今すぐということはないようだ』


 その今すぐが、どのくらい先のことかは聞くだけ無駄だと思う。

 でなきゃ確定情報なしなんてことにはならないだろうし。


『色々とすまぬ』


 さっきからルディア様は謝ってばかりだ。

 損な性格をしてらっしゃる。

 まあ、ラソル様を見習えとは言わないけどね。


『いえ、新しい情報があったらメールしてください』


 おそらく、いや間違いなくルディア様たちは忙しくなるからな。


『分かった。そうさせてもらおう』


『では、自分たちは29層から上にいる者たちの避難誘導に入ります』


『すまぬが頼む』


 こんなやり取りがあって脳内スマホの電話が切れた。


「ミズキ、もういいよ」


 動かざること山のごとし。

 俺の言葉が聞こえていないかのようにミズキは不動である。


「それくらいで勘弁してやれって」


「うん」


 溜め息交じりの俺の一言で、ミズキはようやくマイカを解き放った。


「いだいよぉっ」


 ようやく解放されたマイカは四つん這いで痛みの余韻をやり過ごしている。

 涙目になるのも無理はない。

 俺の電話中にずっとコブラツイストの餌食になっていたんだからな。

 ちょっと可哀相だ。

 お仕置きとしての意味はなくなってしまいそうだが治癒魔法を使っておこう。

 手をかざして魔法を使う。


「ん? おおっ、痛くない!」


 即座に起き上がってピョンピョン跳びはねるマイカ。


「次からは自分で治せよ」


「わかったー」


 満面の笑みで返事をしてくる。

 それだけで終わるなら騒動にはならないのだが……


「ありがとー、ハルー」


 礼を言いながら飛びついてくる。

 明らかに抱きつこうとしているんですがね。


「アホの子か、お前は」


 言いながらアイアンクローで迎撃した。


「いだだだだだっ」


 ミズキが見ている前で調子に乗るからだ。

 お仕置き目的ではないので、すぐに解放する。


「もう1回、ミズキのコブラツイストを味わいたいのか?」


 ブルブルと首を高速で振っている。


「テンションが上がるのは分かるんだが」


 何十年ぶりの再会だからな。

 それもずっと一緒にいられるとくればゲージを振り切った状態になるのも無理はない。

 犬っぽいとは思うけど。

 どっちかというとマイカは猫って感じなんだが。


「それはミズキも同じなんだぞ」


「あうっ」


 一挙にテンションが萎んでしまう。

 まあ、周囲のことが見えていない状態だったということだ。

 これで多少は調子に乗った行動も控えてくれるだろう。


「程々にしておけば、そのうち良いこともある」


 そう言ってからマイカのおでこにキスをした。


「あ─────っ!!」


 大きな声を出してくるのは予想していたよ、ミズキくん。

 故に【縮地】で懐に入って同じようにおでこにチューしておいた。


「えっ、なっ、え───っ!?」


 ちょっと壊れてしまったかもしれない。

 マイカも真っ赤になってフニャフニャだ。

 後を追うようにミズキもフニャフニャになる。


「……………」


 選択をミスったかもしれない。

 直接的な行動ではなく餌をぶら下げるべきだったか。

 いかんせん、こういうことは初めてだからな。

 ラノベの知識に頼ったのが良くなかったのかも?

 分からん。

 どうすれば正解なんだ。

 いや、今更か。

 そもそもこんなことを考えている場合じゃないだろう。

 この2人は戦力としてしばらく当てにできそうにないから輸送機に転送して……


「ん?」


 何故か女性陣が1列に並んでいる。

 先頭はノエルだ。

 ツバキにシヅカ、月影の面々に新規国民組と続いている。

 どゆこと?

 並んでないのは不思議そうに首を傾げている幼女マリカだけである。


「ねー、あるじー。

 みんな、なにがしたいのかなぁ?」


 それは俺が聞きたいよ。


「ハル兄、ズルい」


 ちょっとむくれた感じのノエルさん。


「は?」


 俺には何がなにやらサッパリなんだけど?


「そうだな、私もズルいと思う」


 ツバキもかよ。


「主よ、チューを所望するのじゃ」


「はあっ!?」


 この状況下でそれってどうなのよ。

 思わず口にしそうになったけど、ストップした。

 元はといえば俺が悪いもんな。


「悪いが帰ってからだ」


「「「「「え────────っ!?」」」」」


 酷いブーイングが始まる。

 俺以外の男性陣が両手で耳を塞ぐくらいの大ボリューム。


「頼むから後にしてくれ。

 この2人みたいになられちゃ困るんだよ。

 並んだ順番は覚えたから。

 後で必ずチューするから勘弁してくれー」


「分かった、約束」


 ノエルの言い分に頷くしかできない俺。

 これで約束を破ったりしたら……

 考えたくもないな。


「しかたあるまい」


 ツバキもノエルに同意している。

 外堀が埋まっていくな。


「そうじゃな。

 後の楽しみとしておこう」


 シヅカさんもですかい。

 それと、その言い回しはどうなのよ。

 まるで食後のデザートだ。

 その後も次々と同意していった。

 そしてラストはレオーネ。

 申し訳なさそうに肩を縮めている。


「レオーネはどういうこと?」


 おでこにチューの列に並ぶとか訳分からん。

 皆が妻になりたいと言ったときは何も言わなかったんだが。

 ということは他の理由か。

 他に考えられるとすれば……

 状況に流されて並んだとか?

 あり得そうだ。

 なら、気にしなくていいな。


読んでくれてありがとう。

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