表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
330/1785

324 朝食と休日の予定

 参拝が終わり境内を出た。

 後は城の案内か。

 ボウリング場もあるけど、あれは危険だ。

 万が一、熱中されるようなことがあると時間を忘れてしまう恐れがある。

 明日──時間的には既に今日か、休みになっているけどダンジョンに行く予定を潰しかねない。

 少なくとも出張が終わってからだな。


「ねえ、ハルくん」


 ミズキが話し掛けてきた。


「なんだ?」


「この神社は、どうして出雲大社に近づけたの?」


「あ、それは私もそう思った」


 マイカがミズキの言葉に同意しつつ不思議そうな顔をしている。

 さすがは元日本人。

 縁結びの神様を祀っていることで有名な出雲大社を参考にしていることが気になったらしい。

 別に出雲大社は縁結びだけじゃないんだけどね。

 出会うべき人との縁を取り持ってくれると言った方がいいと思う。

 ただし下を向いて境内を歩いていると運気を授かりにくいので注意だ。

 出雲大社の気の流れがそういう風になっているのでね。

 他所だとまた違うってことだ。

 さて、ミズキやマイカが気になったことの答えだが──


「御先祖様が出雲出身だからだな」


「それは初耳だね」


「だな」


 ミズキとマイカが笑顔で頷き合っている。

 俺の新情報をゲットできたのが嬉しいらしい。

 そんな大層な話をしてないんだけど。


「さて、次はお城かい?」


「大きいよね」


「そして奇抜だわ。

 和に偏りすぎた和洋折衷だな」


 マイカの評価が手厳しい。


「俺にデザインセンスを期待するなよ」


「いや、悪くないと思うぞ」


 貶すのか褒めるのかどっちなんだよ。

 まあ、いいや。

 ちゃちゃっと終わらせないと睡眠時間が短くなる。


「主よ、明日にした方が良いと思うぞ」


 そう言ってきたのはツバキだ。

 どういうことだろう?


「中の広さと施設の説明が数時間で終わるとは思えぬ」


「……………」


 言われてみれば、そうだよな。

 ということで明日の晩以降のお楽しみってことになった。

 マイカが少しごねたが、留守番でもいいならカーラたちに案内させると言うと素直に引き下がった。


「再会したばっかなのに留守番とかあり得ないわよ」


 だそうである。

 まあ、俺も連れて行くつもりだったけどな。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 長距離転送を使って輸送機に戻ってきた翌朝。

 ちなみにベリルママは来ていない。

 犯人逮捕に向かったからだ。

 寒気がするほどのとってもいい笑顔だったのが印象的だった。

 犯人はベリルママの逆鱗に触れる何かをしてしまったようで……

 俺たちは背筋の凍り付く思いをさせられた。

 余計な口を挟む余地などあるわけがない。

 まあ、あの様子なら厳罰を希望なんて言わなくても相応の罰が下されるだろう。

 余計な真似をすると痛い目を見るってことだな。

 まあ、ラソル様もその辺は理解してイタズラをしているんだろうけど。

 やめられない止まらないの精神というか。

 別にスナック菓子ではないんだが。

 あれは不治の病なんだと思う。

 ということで俺たちは以後、ノータッチである。

 そんな訳で朝食の席にベリルママはいない。

 ゲールウエザー組も今日は同席はなしだ。

 休みというのもあるが食い過ぎでダウンしている何処かの王様の世話に追われている。

 もっとも、ずっと掛かり切りという訳ではない。

 朝食で俺たちと合流すると手間が増えるから同席しないのだ。

 この場合の手間というのが食い意地の張ったオッサンが駄々をこねるのを抑え込むことだったりする。

 クラウドは確実に朝食抜きだからな。

 しかし美味しそうな御飯を前にしては我慢ができなくなるのが目に見えている。

 ダニエルの命令で護衛騎士が動いて抑え込むことになる訳だ。

 それでも駄々をこねて煩いことになることまで容易に想像がつく。

 まるで子供だ。

 泣く子と地頭には勝てぬと言うが……

 クラウド以外のゲールウエザー組には同情を禁じ得ない。

 そんなことになるくらいなら最初から一緒に食べなければ良いとなる訳で。

 それはそれで俺の所の御飯が食べられないことで拗ねたりするようだが。

 今日の所は内臓を休ませておけ、クラウド。

 俺たちは食べたら行動である。

 ダンジョンに行くので、きちんと腹ごしらえしておかないとな。

 状況によっては昼を食べ損ねるなんてこともあるかも知れないし。

 そういう時のメニューはやはり和食がいいのだ。

 まずは白米と味噌汁。

 基本中の基本だが、これなくして和食で朝ご飯とは言い難い。

 そして焼き魚にホウレン草のおひたし。

 和食度が更に上がって箸が進む。

 だし巻き卵と大根下ろしのポン酢がけ。

 フワフワでサッパリしていて焼き魚とは違った形で御飯が進む。

 今日も元気だ、飯が旨い!


「白米に味噌汁とか異世界で食べられると思わなかったわぁ」


「ホントだね」


 しみじみとした雰囲気を出しているのはマイカだ。

 ミズキはマイカの言葉に同意こそしているがマイペースで食べている。

 美味しいからそれどころじゃないようですよ、マイカさん?


「みっしりと身の締まった魚」


 一口食べてウットリしているな。

 マイカもミズキの反応など気にしていない。


「おひたしの食感も味付けも絶妙よね」


 更にウットリ。


「そしてだし巻き卵」


 箸で押すと、すっと切れていく。


「うわー、柔らかい!

 綺麗に箸が通るじゃないの」


 お前は料理評論家か。


「そして……」


 だし巻き卵が口に運ばれパクリ。

 咀嚼すること数回。


「うーまーいーぞー!」


 またしてもウットリするのかと思ったら叫びやがった。

 傍迷惑な奴だ。


「マイカ、黙って食えとまでは言わんが煩い」


「あ、スマンこってす」


 テヘヘと舌を出して愛想笑いをしているが誰も見てくれない。

 みんな朝飯に夢中である。


「やっぱりハルトはんの御飯やで」


「だよなぁ」


「ですよねー」


「私も同意する」


 こんな感じで自分たちの世界ができている集団がいたり。


「「お姉ちゃん、そっちの醤油差し取ってー」」


「ん」


「「ありがと」」


「魚に使うのか?」


「「うん、ちょっと垂らすとだし巻きに合う味になるよー」」


「ほう、私も試してみよう」


 姉妹の団らんが繰り広げられていたり。


「このおひたしには酒ではなく味醂を使っている?

 焼き魚の照りは間違いなく使っているはずだ」


 首を捻りながらブツブツと呟きながらツバキが黙々と食べ進めたり。

 他にも各々なりの食事を楽しんでいる。


「くっ……」


 赤面もののマイカであった。


「マイカちゃん、食べないの?」


 そしてミズキの追い打ち。


「いいわよ、いいわよ、食べますよっ」


 その後はガッツ食いするマイカであった。

 騒がしい女だ。

 だが、こういう人間がムードメーカーになるんだよな。

 俺たちが3人で連んでいた時は、もっぱらマイカが牽引役だった。

 参謀がミズキだったり俺だったり。

 リーダーはその時の状況によって変わる感じ。

 まあ、異世界に来たばかりの両名にリーダーを任せるつもりはないがね。

 今日のダンジョンアタックも誰かの下につける必要がある。

 レベル差などを考えると組み合わせが悩ましいところだ。

 大集団でゾロゾロ動き回るのは難しいと考えられるので班分けは必要だ。

 あんまり人数が多いと小回りが利かなくなるからな。

 ダンジョンの通路の広さにもよるけど。

 細かく分けすぎると、今度は経験者が分散してしまって対応力が落ちる。

 悩みどころだ。

 新国民組にダンジョン経験者が少ないからね。

 ガンフォールとハマーくらいだろう。

 ボルトは皆無ではないが初心者である。

 レオーネはダンジョンに潜ったことはないそうだ。

 バーグラーの連中はダンジョンアタックに価値を見出さなかったようだな。

 せっかくの奴隷を失う可能性が高いからなんだろう。

 それをするくらいなら周辺国の一般人を相手にするってことだ。

 反吐が出る話だな。

 ……とはいえ、今更思い出す必要のない話だ。

 忘れよう。

 他の面子というとABコンビもダンジョンの経験がない。

 それどころか、魔物との戦闘も昨日が初めてだろう。

 あれは一方的なものだったから今日が初めてということになる。

 この点ではボルトより注意が必要だ。

 ああ、でもマリアやクリスの方がより注意しないとダメだな。

 対人の戦闘訓練すら基礎的なことしかしていないんだし。

 そういう意味ではエリスが色々と経験者だ。

 人と魔物の両方と戦ってきているし、ダンジョンの経験もある。

 ソロで潜ったこともあるらしい。

 無茶をするお姉ちゃんだ。

 その話を聞いたマリアやクリスたちが青い顔をしていた。

 が、決して大袈裟だとは思わない。

 経験が乏しいと装備やペース配分なんて分からんしな。


「あ……」


「どうしたの、ハルくん?」


「忘れてたことがある」


「ドジねえ」


 そんな軽い一言で済ませられないミスなんだがな。

 ダンジョンアタックをするのに防具が用意できていない。

 まるで何もなしではなくサイズ調整が完了していないのだ。


「ツバキ、すまんが手伝ってくれ」


「その様子だと装備の調整だな」


「そうだ」


「わかった。

 すぐに始めよう」


 ということで今回の訓練用防具の調整に追われることになった。

 メンバーの班分けとかは現場で決めよう。

 防具の性能を考えれば亜竜クラスでも致命的な被害は出ないはずだ。

 物理も魔法も通しにくい魔法の鎧にしたからな。

 装着者の体全体を覆うバリアで鎧のない露出部分とかでも防御する。

 ちょっと自重せずに作ってしまった。

 故に状態異常に関しては完全ブロックだ。

 毒も麻痺も石化も何でも来いである。

 もちろん認識阻害をかけてあるので地味な革鎧にしか見えない。

 ただし、優秀すぎて訓練にならないと意味がないので多少の細工はしてある。

 ある程度の痛みや不快感を再現するようにしているのだ。

 でないと鎧の性能に頼りっきりになってしまうからね。

 ダメージは受けないが痛い。

 あるいは状態異常にはならないが不快感がある。

 そういう部分があれば油断したり集中力を切らしたりはしないだろう……と思う。

 性能に関しては【多重思考】を使ってシミュレートもしたから特に不安はない。

 問題はサイズ調整だ。

 ガンフォールたちはデータがあるから渡せば終了なんだが。

 他の新規国民組は詳細データがないから、おおよそで作った。

 現状のままだとブカブカになるはずだ。

 調整できるようにはしたけど、その加工処理は俺以外だとツバキくらいにしかできない。

 特急で仕上げたとしても小一時間はかかるだろう。

 俺が抜けていたせいでこの様である。

 つくづく俺は間抜けだと思う。

 情けない。


読んでくれてありがとう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

下記リンクをクリック(投票)していただけると嬉しいです。

(投票は1人1日1回まで有効)

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ