表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
282/1785

276 スキルの種が仕事をしてます?

 外野の様子を覗いながら残りの3人を見る。

 ちょっとトリップ気味の2名は右と正面。

 ただし、悪夢から目覚めたかのように顔色が悪い。

 それは左の奴も同じだが。

 外野連中の話に耳を傾けている間に徐々に悪化していった。

 それでも逃げ出さないのは、つまらない見栄からか。

 あるいは後々のことを考えている?

 仲間を見捨てて逃げ出したとか色々と言われるだろうからな。

 もともと信用がない連中だ。

 ゼロがマイナスになるのは避けたいだろうし。

 問題はそこまで考える頭を持っているかだ。

 どうも見栄だけのような気がするんだよなぁ。

 だとすると恐怖心に負けて逃げ出すことも考えられるか。

 それは避けたいね。

 こういう奴らは喉元過ぎれば熱さを忘れるからな。

 トラウマを刻み込んでおかないと逆恨みで復讐とか普通に考えるだろう。

 いちいち相手してられるかっての。

 ここで逆らう気力をへし折って後は放置プレイだ。

 さあて、どうやって奴らの降参を阻止するかね。

 あの様子じゃ挑発しても効果はなさそうだし。

 念のために試してみるか?

 いや、逆効果で降参されちゃかなわん。

 ここは黙らせるに限るね。

 逃げようとするなら、その瞬間を逃さず仕留めりゃいいんだし。

 ならば軽く威圧するか。

 コイツらだけ黙らせても似たようなのが湧いて来ないとも限らんし。

 ここにいる外野連中には俺に絡めば恐ろしいことになるっていうのを宣伝してもらうとしよう。

 目立たずに離脱するのはもはや諦めた。

 後は蹂躙して関わる気を失わせるのみよ。

 やり過ぎると、それはそれで面倒なことになりかねないから様子を見ながらだが。

 まずは瞬間的に殺気を放ってみる。

 あ、ダメだ。

 口々に喋っていた外野連中まで静かになったぞ。

 どいつも恐怖で顔が引きつっている。

 ベテラン連中への影響は少なめのようだけど。

 【殺気】スキルって細かい制御ができないのか?

 そんなはずはないんだが。

 いままで調整できてたんだし。

 【諸法の理】で確認してみたら殺気の威力と効果範囲を拡大するだけのスキルでしたよ。

 縮小する方はスキル外で本人が調整するしかないってさ。

 要するに俺の心理状態次第で乱れる訳か。

 なんだかんだでムカついている現状では出力が上がってしまうのも納得である。

 どんな精神状態でも殺気をコントロールできるスキルとかないのかね。

 【殺気】スキルが上級だから、おそらく特級スキルになってしまうだろうけど。

 【諸法の理】に問い合わせてみたら[正解]という返事があった。

 あるんだ、やっぱり。


[特級スキル【気力制御】を取得しますか?

 取得した場合、【殺気】以外のスキルと共に統合されます]


 馴染みの深いスキルだと【気配感知・気配遮断】なんかが統合されるみたい。

 別にポイントを消費する以外で損はないんだし構わないだろう。

 とりあえず取得するだけにしておくか。

 熟練度は使っている間にカンストさせる方針で。

 スキルポイントはつぎ込まない。

 神級スキルほどは食わないけど熟練度を上げるのはコストが高いからね。

 特級なら熟練度を上げるのも苦ではないし。

 そうやって考えてみると神級スキルって桁違いだよな。

 5個も持ってる俺は何なんだってなるけど。

 考えるのはよそう。

 俺の精神衛生上よろしくない。

 そんなことより【気力制御】だ。

 ほい、取得っと。

 これで試してみるか。

 軽く威圧する程度でいいだろう。

 おっ、効果範囲も絞れるのか。

 威力を抑えつつ方向を指定すると効果範囲を狭めるのが難しそうだ。

 ……熟練度を上げれば威力と方向と範囲を同時制御できそうだな。

 範囲どころか効果対象も個別に選べるという確信がある。

 スキルを取得したことで効果を把握できるようになったのか。

 色々と応用を利かせることができるとはチートスキルだな。

 これは修練して熟練度を上げないと。

 とりあえず今回は威力を絞って威圧するに止めた。

 目の前にムカムカする連中がいるのに微細な威力調整ができるのは有り難い。

 今までなら気を静めない限り完全にカットオフするしか手がなかったからな。

 さて、チンピラ345はどんな具合かね。


「……………」


 顔色がよろしくないですな。

 はて、そこまで明確に分かるほど殺気立っている訳ではないのだが?

 全員を黙らせた時の余韻が残っているのか。

 それが今の威圧で恐怖の記憶が呼び覚まされたとかだったら笑うしかない。


「……………」


 試しに威圧を止めてみたら明らかに安堵してる。

 引きつった表情が完全に元に戻るようなことはないようだけど。

 どうやらマジでトラウマを植え付けてしまったようだな。

 【気力制御】をギルドに来る前に取得していたら絡まれた時点で終わらせることもできたか。

 今更な話になってしまうがね。

 いずれにせよチンピラ345はほぼ戦闘不能だろう。

 なんか当初の目的は達成してしまったようで。

 だが、ここで終わらせる訳にはいかない。

 周囲の連中に俺の存在を印象づけるための犠牲になってもらうとしよう。

 それに、ここまで来たら終わらせるつもりはない。

 コイツらを許すつもりなんて毛頭ないからさ。

 この程度で萎えるような連中だからなんて理由で見逃すとかあり得ん。

 本気で反省するなら話は別だが、それをコイツらに求めても無駄だろう。

 反省したとしても上辺だけの話で終わる。

 あと、コイツらの【隠蔽】スキルもどうにかしないといけないしな。

 これのせいで、みんな騙されていたんだから。

 別に被害者の無念を晴らすとかは考えていない。

 結果的にはそうなるかもだけど。

 思うように声が出せないであろう今のうちに叩きのめして封印だな。

 チンピラ345はばらけてるから面倒だ。

 連中そのものではなく終わってからが問題になる。

 3人まとめて一瞬で終わらせるのは論外だ。

 ベテラン連中が3段蹴りで驚いていたからなぁ。

 化け物扱いはゴメンである。

 既に手遅れかもしれないけれど……

 それとチンピラ1と2は投げと蹴りで料理したから、この系統で通した方がいいか。

 ここからなんちゃってカンフーに切り替えたら今以上に目立ってしまう気がする。

 うむ、投げと蹴りか。

 あんまり参考になる資料が思い当たらない。

 蹴りはともかく投げの方が普通の技とは明らかに違ったし。

 リアルより漫画の世界の方が参考になったりして。

 そう言えば、無手で千年不敗とかいう幻の武術の漫画があったな。

 ああいう感じでやるのも悪くないか。

 丸々コピーという訳にもいかないが、それっぽくはできるだろう。

 じゃあ、まずは右のドレッドヘアなチンピラ3からだ。

 すっと音もなく踏み込む。


「速いっ!」


 外野のベテランが唸った。

 遅いんですが……

 でも、チンピラ3は反応できていないか。

 何が起きたのかって面だしな。

 一気に懐に飛び込んだ俺は拳を脇腹に押し付けた。

 この瞬間ではダメージにはなっていない。

 チンピラ3が驚愕の表情で下を見る。

 何をされたかは分からぬだろうが、誰がそれを為したかは見届けろ。

 一撃!


「ぐはっ……」


 拳を押し当てたままで打撃を与えた。

 チンピラ3の体が反り返る。

 内臓を少々と肋骨を数本やった手応え。

 苦悶の表情を見せるが手加減してるんだぞ。

 それに拳を振動させる奥義な技も使ってない。

 もう少し意地を見せろと言いたくなった。

 が、コソコソするのが戦闘スタイルのコイツには無理な相談だったか。


「3人目、終わりっと」


 崩れ落ちようとしているチンピラ3を回転飛び膝蹴りですっ飛ばす。

 威力よりも蹴り飛ばす方向を重視したものだ。


「どうなってる……」


「何をした?」


「分からん」


 外野が喋っている間にチンピラ3は地面を転がるようにして同1と同2の元に辿り着く。

 着地した俺は正面だったチンピラ4へとダッシュした。


「次、4人目」


「ひいっ……」


 驚きで目と歯をむきながら仰け反るように剣を振るうチンピラ4。

 もはや、こいつらはスキルを使って礫を飛ばすことも頭にないようだ。

 それはそれで詰まらんな。

 木剣を振って抵抗の意志を見せるだけマシか。

 子供が駄々をこねるような情けない感じだがな。

 この様子では本人が木剣を振るっているという意識があるかは怪しいところである。

 チンピラ4が振るった木剣を前方宙返りで躱しつつ脚を振り下ろす。


「なんだ、ありゃあ!?」


 踵で蹴りを入れるだけですが、なにか?

 ダッシュと前転の勢いが加算されたハンマーのごとき一撃。

 いや、反対の脚による追撃がある。

 1撃目は木剣を握る腕に入ると同時に鈍い音がした。


「ぎゃあっ!」


 右前腕部の骨が折れた。

 木剣が手放される。

 それとほぼ同時のタイミングで2撃目が肩にヒット。


「ぐあぁっ!」


 こちらは1撃目よりも重くしたので右肩周りは酷いことになっている。

 更に内臓にもダメージが通るようにした。


「げぼっ……」


 コイツもダメージで失神し崩れ落ちていく。

 が、今までと同じように蹴り飛ばして仕留めた連中の仲間入りをさせた。

 後でまとめて処理しないといけないからな。

 結局、チンピラ4には空中にいる間に3回蹴りを入れたことになるのか。

 あまり細かいことを気にしてはいけない。

 技の再現をしている訳ではないのだからな。

 それよりも最後はどんな方法で片付けるかの方が大事だ。

 着地するまでの間にそんなことを考えていた。

 けど、よくよく考えたら答えは決まっていたな。

 チンピラ3で拳を使って、4では蹴った。

 ならば投げだろう。

 それも関節を決めながら投げを放たないとね。

 ちょっと考えてみた技があるので試してみよう。


「ラスト、5人目だ」


 無造作に間合いに近づく。

 ダッシュではない。

 ごく低く爪先だけで軽い跳躍をした。


「何だ、今のは?」


 チンピラ5ではなく外野が反応するか。

 俺は木剣の間合いからほど遠い位置にいたのに瞬きした後には距離を詰めていた。

 まあ、奴は何が何だか分かっていないだろう。

 何の反応もできていないのだから。

 間の抜けた顔で「え?」とか言ってるし。

 仮に反応できても木剣の間合いからはわずかに外れている。

 踏み込めば話は別だが、今のコイツにはそれすら無理だ。

 外野のベテラン勢ならどうしただろうな。


「横滑りしたように見えたが分からん」


「何でもありだな、アイツ」


 外野組がまたしてもガヤガヤと賑やかになり始めた。


「あれって、まさかなぁ」


「なんだよ?」


「俺が駆け出しの頃に引退間際の爺さんから聞いた話だ。

 相手との距離を一瞬で詰めるスゲえ奴がいたってな」


「それならワシも聞いたことがあるぞ。

 爺さんがそいつに聞いた話では縮地って技らしい」


「マジかよ……」


 それは俺の台詞だ。

 技と言うほどの大層なことはしていない。

 こんなの縮地の訳ないだろ。


「縮地っていうのか」「縮地……」「縮地か」「縮地だってよ」


 なんか間違った認識が拡がろうとしている。

 どうしたものかと思っていたらログの一部が赤表示になっていた。


[特級スキル【縮地】を取得しました]


 マジか……

 俺の方が間違った認識になりそうだったから【諸法の理】が気を利かせたらしい。

 こんなに簡単に特級スキルを取得するとか……、あり得るのか。

 スキルの種をもらったし。

 今の俺のステータスなら余裕で取得できるみたい。

 この調子だと称号とかも増えてそうだよな。

 見るのが怖くなるけど。


読んでくれてありがとう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

下記リンクをクリック(投票)していただけると嬉しいです。

(投票は1人1日1回まで有効)

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ