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271 予定は未定で変更するためにある

修正しました。

おまけに本人の了承を~「身柄は貰い受けた~ → (該当部分を変更)

ここまま → このまま


 昼を食べた直後にクラウド王たちからの伝言が届けられた。

 彼らとは別々の昼食になってしまったのは向こうの都合である。

 彼らが飯の時間を惜しむほど状況に振り回されていたからだ。

 その原因を作ったのは俺だけどな。

 でも、最初に話を振ってきたのは宰相のダニエルだ。

 こういう状況になることを想定していなかったというなら、それは自業自得である。

 伝言は申し訳ないが出発を明日に延期して欲しいということだった。

 しょうがない。

 魔導師団第2班の処分という仕事が増えてしまったからな。

 あと、護送中の犯罪王国の奴らに関連する処理もある。

 こっちの方が仕事量は多いかもな。

 人数が多い上に誰が誰やら状態だからな。

 一応は首に掛ける形で名札は用意してあるが。

 それでも確認は必要だし、尋問もしなければならない。

 尋問は一筋縄じゃ行かないだろうなぁ。

 アホな奴は誘導してやればペラペラ喋る可能性はあるけど。

 いずれにせよ本格的な取り調べは飢饉対策から帰還した後になるだろう。

 それでも受け入れの体制を整えておく必要がある。

 俺はいつでも引き渡せるが、ゲールウエザー王国側はそうはいかない。

 牢屋の準備、人員の配置、クズ共に食わせる食事の手配。

 どれも受け入れ前に整えておかねばならないことだ。

 それ故か、昼前には引き渡せると言った時には慌てていたもんな。

 待ったをかけられてしまった。

 俺が無理を言っているので押し通す訳にもいかない。

 しょうがないので到着を遅らせると約束した。

 向こうの準備が整いしだい連絡をもらう形で話をつけたので、どうとでもできる。

 クズ共は俺お手製の檻に監禁して倉の中で眠らせているからな。

 護送どころか到着しているも同然だ。

 引き渡していないから護送中と言えなくもない。

 思わず小学校の頃の遠足で教師が言っていたことを思い出してしまった。

 家に帰るまでが遠足ですってやつ。

 クズ共は帰るんじゃなくて目的地までの片道切符で捨てられるだけだがな。

 連中にしてみれば、到着したあとにあるのは安堵ではない。

 真っ先に湧き上がるのは不安。

 そして運命を知った後は絶望だろう。

 なんにせよ第2班と同じ状態なので自力で目覚めることはない。

 目覚めるのは檻ごと輸送機に放り込まれた後だ。

 輸送機の乗り心地を考えると運ばれているとは思わないだろうけどね。

 それでもハッチを開いて外に出された後の景色が見たことのないものである。

 錯覚するのはほぼ間違いないだろうさ。

 ゲールウエザー王国だと知ったら、どんな顔をするんだろうな。

 興味があるんじゃなくて、できれば見たくない。

 ギャーギャーと見苦しいことを言うに決まっているのだ。

 本物のクズは死ぬまでクズだ、というのが俺の持論である。

 死ねば見苦しい言動を見なくてすむからな。

 引き渡しの際に生きたままのクズを嫌でも見ることになるかと思うと憂鬱になる。

 まあ、これくらいは我慢しないとな。

 引き渡し後は見なくて済むんだし。

 という訳で今はゲールウエザー王国の連行準備が整うのを待っている状態だ。

 連絡が入ったらすぐに輸送機を引っ張り出す予定である。

 光学迷彩で誤魔化しつつだけどね。

 俺たちが、ここの城に乗り込んだときと同じ方法で侵入してきたように見せかける訳だ。

 後は城内の者にだけ見えるようにして着陸させればオッケー。

 光学迷彩なしで王都に飛んで来る形は色々とヤバい。

 王都の民がパニックを引き起こすのが目に見えるようだ。

 城内は騒ぎにならないと思う。

 経験済みの上に既に通達されているからな。

 問題は明日の出発時か。

 光学迷彩を使わずに飛び立つ予定なんだよ。

 城から飛び立つなら大きなパニックにはならないと判断があってのことだ。

 騒ぎにはなるだろうけどね。

 帰ってくる頃には噂話で持ちきりとなるとは思う。

 できれば騒がれたくはないが、今後のことを考えてのことだ。

 まさか転送魔法で城に乗り込む訳にもいかんからな。

 いや、とっくの昔に転送魔法で侵入してるけどさ。

 宰相補佐官の一件の時に。

 間接的なものも含めば斥候用自動人形とかシノビマスターで好き勝手やったし。

 どう考えても泥棒の所業だよな。

 もちろん盗みは働いていない。

 置き土産を残していったりはしたけど。

 悪党どもの悪事の証拠とか情報とか。

 あ、補佐官を一時的とはいえ拉致したか。

 返却したけどさ。

 返せばいいってもんでもないよな。

 盗んだけど返したから罪にならないとか強弁する犯罪者がたまにいるけどね。

 あの野郎は犯罪者だから良心の呵責もなかったがな。

 普通に考えると犯罪行為なんだよ。

 少なくとも不法侵入ではあるからな。

 ……細かいことを考えるのはよそう。

 今が上手くいっているなら、それで良いのだ。

 開き直りとも言うがな。

 なんにせよ、国王や宰相の忙しさは理解した。

 出発が明後日以降になってもおかしくないのに明日の昼過ぎと言ってきたのだ。

 頑張っていると思う。

 そんな訳だから予定が遅れるのはしょうがないと了承。

 返事は俺たちの案内役であるメイドが伝えに行った。

 伝言を持ってきた者たちには他にも用件があったからだ。

 そう、1人ではなく2人。

 伝言を届けに来たのはリーゼとミュラー。

 俺が勝手に魔導女子ABとあだ名をつけていた両名であった。

 当人たちは、このあだ名を知ることはないだろう。

 一度も呼んだことはないし、このまま封印するからな。

 たまに復活するかもしれないが……


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 俺たちにあてがわれた部屋まで戻ってきた。

 立ち話も何だからという名目で。

 実質的には話を他人に聞かせないためである。

 案内のメイドもこの場にはいない。

 感知結界で俺たちのいる別棟の建物を覆った。

 誰かがゲストハウス内に入って来れば俺以外の者でも分かるようになっている。

 警報音みたいな派手な音ではないがアラームをセット。

 今のところは外から近づく者もいないので役立つかは微妙なラインだが。

 その上で室外に音が漏れ出さないように外部と遮断する結界を張った。

 これで魔法や魔道具で覗き見したり盗聴したりはできない。

 ちなみにフィンガースナップなどの魔法を使ったと思わせるようなアクションはしなかった。

 故に連れてきた元魔導師団第2班の両名は結界には気付いていない。

 この部屋に入った時点で誰かに聞かれるとも思ってはいないと思う。

 そのためのゲストハウスだからな。

 これで盗聴とかしてて気付かれたりしたら問題になるだろう。

 俺が結界を張ったのはどこかのダメ亜神に余計な話を聞かせないためである。

 未だに逃亡中という往生際の悪い真似をしているからな。

 お仕置きの仕様変更には気付いていないはずだけど。

 嫌な予感でもしたんだろう。

 その危機感知力をもっと仕事に生かしてほしいものだ。

 とにかくラソル様に下手なちょっかいを出されると、またややこしいことになる。

 この程度の結界を筆頭亜神がどうにかできない訳がないのは分かっているさ。

 が、こうすることで細工が必要になるよな。

 監視網を強化しているルディア様に発見されるリスクが高くなる訳だ。

 そう、これは罠である。

 捕まるかどうかは分からないけど、更なるイタズラを阻止することはできるはず。

 できれば捕まってくれ。

 そして、要らんことはするな。


「で、何処まで宰相から聞いている?」


 2人は互いに顔を見合わせた。

 その困惑ぶりからすると説明らしいものは、ほぼ受けていないようだが。


「伝言を伝えるよう命じられただけか?」


「いいえ」


 魔導女子Aことアンネローゼ・ミュラーが返事をした。


「最初は謝罪でした」


「ほう、ジジイは小さい男ではなかったようだな」


 冗談のつもりで「ハハハ」と笑いながら言ったのだが……

 反応がない。

 HA・HA・HA……

 目の前のミュラーと魔導女子Bことバーバラ・リーゼが困惑するのは、まあ分かる。

 自分の国のお偉いさんに対するコメントだからな。

 慎重になるのはしょうがない。

 だが、うちの面子はどうか。

 やはり慎重になったのかね。


「はいはい、不謹慎なコメントでしたよー」


 体ごと横を向いてふて腐れる。

 それを見たリーゼとミュラーが慌てた様子を見せた。

 とりあえず何か言い出す前に姿勢を元に戻す。


「心配するな、お前らの緊張をほぐしたかっただけだから」


 どこがだよというツッコミが聞こえてきそうである。


「それで謝罪の後は何だって?」


 そこからの話は特に変わったことはなかった。

 2人を第2班から外すということ。

 それと俺への伝言を頼まれたことだけである。


「あのジジイ、丸投げしやがった!」


 思わず席から立ち上がって天井に向かって吠えてしまう。


「ハルトよ、落ち着かんか」


「あ、すまん」


 ガンフォールに注意された俺はすぐに席に戻った。

 態とやっているじゃろという目が向けられているが、言葉にはしないようだ。

 故にスルーする。

 今は2人を優先だ。


「まあ、お前らには迷惑な話だと思うがな」


「「いえっ、決してそのようなことはっ」」


 うちの双子ちゃんたちかよってくらいハモってるな。


「ぶっちゃけ、お前らの処遇は俺が勝手に決めた。

 魔道具のペンと交換でお前らを引き取るということでな」


「「えっ!?」」


 まあ、普通は驚くよな。

 人対人のトレードならともかくね。

 物と交換されたと聞かされちゃあそうなるのも無理はないだろう。

 おまけに本人の了承を得ずのことだから人身売買と言われても否定はできない。

 それ以前に事情の説明をしておかないと訳が分からんか。

 そんな訳で、2人には簡単にではあるが一通りの事情を説明した。

 結果は当然のことながら唖然呆然とするばかり……


「何か色々とスマン」


 俺は頭を下げた。

 ガンフォールからも注意されたことだし軽くだけどな。

 返事はない。

 というか絶句した状態で答えられないというのが正解か。

 一応、俺も王様だからな。

 それを知ってしまえば俺が謝った意味も分かるというもの。


「俺が頭を下げたのは自己満足のためだ。

 無理かもしれんが、お前たちは気にするな」


 罪悪感を減らすために頭を下げたようなものだからな。

 故に2人には返事を求めない。

 そのまま話を続ける。


「身柄は貰い受けたことになっているが、この先のことはお前たち自身で決めろ。

 俺の国の国民になるも良し。

 もう一度、試験を受けてこの国の宮廷魔導師団に入り直すも良し。

 どんな選択肢でも好きに選べ。

 それこそ、どの国にも属さず冒険者として自由に生きていくのでもいいんだぞ」


 2人は呆然とした面持ちであったが、それでも互いに顔を見合わせていた。

 困惑しながらも俺の言ったことは伝わったようだ。


「今すぐ決めろとは言わねえよ。

 とりあえず俺らの側にいて考えろ」


 期限も特には決めない。

 区切ると焦るかもしれないからな。


「あのっ」


 明日まで暇になったからヤクモの様子でも確認しようかなと思ったら声を掛けられた。

 今度はバーバラの方だ。


「ん、なんだ?」


「どうして、そこまでしてくださるのですか」


「別にお前らのためじゃない。

 俺は俺がやりたいように生きている。

 気に入らんことがあったら俺の流儀で原因を潰すだけだ」


 両名は俺の言葉に戸惑いを見せている。

 予想外だったかね。

 見ればガンフォールが苦笑している。

 ハマーとボルトは神妙な表情ながらも俺の言葉に頷いていた。

 他の面々も首肯しているな。

 表情こそ苦笑だったり呆れたような感じだったり様々であったが。


「他に聞きたいことはあるか」


 そう聞こうとした瞬間にケータイの着信があった。

 倉の中で鳴ると、もの悲しい感じがするな。

 いや、つまらんことを考えるより確認が先だ。

 メールのようだが。

 送信者はハリーか……


「ちょっと出かけてくる」


 そう言い残して俺は転送魔法でヤクモへ向かった。


読んでくれてありがとう。

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