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270 つくってみた『コンパウンドボウとスリングショット?』

ユニーク200000到達しました。

ありがとうございます。


 俺が動いていたことを悟られたくないが故にダニエルを呼んだのだ。

 ここで動いてもらわないとね。

 呼んだのが無駄になるだろ。


「騙してポーションを飲ませれば、アンタの指示でやらせたことにできるよな」


 汚いやり口だが向こうも悪党。

 細かいことを気にしてはいけないのである。

 ここで宰相が乗り込めば現場の人間の印象を誘導することができる。

 第2班の連中を粛正するため宰相が動いていたとね。

 我慢に我慢を重ねた宰相がキレて行動に出たという噂が流れてくれれば御の字だ。

 国際問題にもならないだろう、たぶん。

 その辺り、宰相の手腕次第だとは思うが後のことまで知らん。

 上手くやってくれ。

 さて、魔導師団第2班の連中は昏睡状態である。

 揺すろうが叩こうが起きることはない。

 剣で切り付けられても結果は変わらないだろう。

 たとえ四肢が欠損するほどの重症を負ってもである。

 そういう魔法だからな。

 半永久的な麻酔みたいなものだ。

 もちろん出血多量となれば目を覚まさぬままに死亡する。

 病気にかからないということもない。

 ひたすら眠り続けるだけである。

 唯一起こす方法は眠らせるのに使った以上の魔力をぶつけることだ。

 魔法でも構わないが選ぶ必要はあるだろうな。

 火魔法なんて目を覚ますと同時に焼死するぐらいの威力が必要になるから。

 攻撃系なら間違いなく死ぬ。

 治癒系なら大丈夫だけど、別の理由で無理だな。

 最低でもレベル80は必要になるだろうから。

 まあ、これは攻撃魔法でも条件は同じなんだけど。

 事実上の死刑執行と言われても仕方のないところである。

 だが、眠っている間は飲食が不要になるので餓死することはない。

 寿命が来るまで眠り続けるので終身刑というのが俺の認識ではある。

 極刑にしたければ、そのまま攻撃すればいい。

 奴らは覚めない眠りについているだけだからな。

 あと、要請があるなら目覚めさせるつもり。

 どう処分するかはゲールウエザー王国サイドに任せると決めたからね。

 だからナターシャを使って小芝居をして薄めたポーションを配って飲ませたのだ。

 宰相の手配ということにするためにね。


「……御配慮恐れ入ります」


 それを理解したダニエルは深々と頭を下げた。

 しかし、俺はその礼を素直に受ける訳にはいかない。


「さて何のことだろうな」


 俺はとぼけることで最初から貸し借りが発生するような事件はなかったのだと強調した。

 幻影魔法で監視しているのに図々しいとは思うがね。

 ここでの出来事を目撃されたら、それはないだろとツッコミを入れられるだろう。

 ただ、向こうの状況が見られるのは俺たちだけである。

 秘密を知り得るのはうちの面子以外だと3名のみ。

 宰相のダニエル。

 魔導師団総長のジョイス。

 そして案内役として俺らの世話を任されているメイド。


「俺は何もしていないし何も知らない」


 面の皮の厚いことだと思う。

 それでも向こうが自分たちで内部の問題を解決したことにしてもらわないとね。

 火の粉が飛んで来かねないからな。

 念押しするように俺は目で問いかけた。


「そうでしたな。

 私は何を勘違いしていたのでしょう」


 ダニエルもしれっとした顔でとぼけたことを言っている。


「前々から計画していたことを来客時に実行しただけのことでした」


 そう言いながら総長の方を見た。

 心得ておりますとばかりに頷く総長。


「この計画は大がかりなもの故に情報が漏洩する危険がありました。

 迅速さこそが至上とされ、来客中であろうと延期することは許されなかったのです」


「おっと、独り言が過ぎたかもしれませんな」


 白々しい口振りでダニエルが問いかけてくる。


「いいや、俺は何も聞いていないが?」


「そうですか、それはなにより」


 俺の返答に満足そうに頷いたダニエルが席を立つ。

 総長がそれに続いた。


「ヒガ陛下、我々は内部の揉め事を片付けるために行かねばなりません。

 部下の非礼を謝罪していた席であるにもかかわらず、誠に申し訳ございません。

 謝る側である我々が先に離席してしまう無礼を平に御容赦いただきたく」


 あー、そういう形にするんだ。


「揉めてるんなら早く行った方がいいだろうな」


 小芝居である。

 しかも態とらしい。

 俺に芝居の才能はないな。

 スキルを取ればいいだけの話だが、必要性を感じない。

 役者を目指している訳じゃないからな。

 ただ、芝居の方は必要であったことはすぐに理解できた。

 俺たちの案内をしていたメイドの表情が引き締まっていたからだ。

 もし、俺が関与しているという噂が流れれば彼女がその出所ということになる。

 緊張した面持ちを見れば、そういうことにはならないとは思うがね。

 漏らせばタダでは済まないんだろう。

 墓まで持っていく覚悟だと言われても頷けるくらい真剣だったし。

 そういったことを承知で働いているんだとは思うけど、内心ではどう思っているやら。

 恨まれていたら嫌だなぁ。

 オッサンに恨まれても屁とも思わないが相手は女の子だし。

 女子には嫌われたくないと思うのは男として普通のことだよな。

 不幸中の幸いと言うべきか、うちの国民じゃないのが有り難い。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 昼の御飯は親子丼とはいかなかった。

 俺たちが客人であることを失念していたのだ。

 当然、昼食だって用意されている訳だ。

 自分たちで勝手にとはいかない。

 直前にキャンセルとか失礼にも程があるしな。

 専属の料理人が時間を掛けて仕込みをしているのだ。

 誰かに指摘されるまでもなく気付けたのは幸運である。

 自分の我が儘を押し通して国家間の関係をこじれさせるとかアホのすることだろう。

 俺の無能ぶりを披露せずにすんだ。

 親子丼については夕食以降にしよう。

 出発した後の食事はこちらで用意する手はずになっているからな。

 倉で魔法を駆使して作って倉庫で保管しておく。

 こうしておけば半永久的に出来たてとなる。

 いつでも食える状態だから後回しにもできるけど早く食いたい。

 その次は牛系の肉を入手して牛丼とかハヤシライスも捨てがたいな。

 時間があれば王都の近くにあるダンジョンに潜るんだが。

 牛系の魔物がいるとは限らんがね。

 そうだとしても新しい素材を手に入れられる可能性はある。

 ああ、そうそう。

 素材と言えば色々と作っておかないとな。

 新国民たちの装備とかさ。

 戦闘要員でないとしても最低限の防具くらいは用意しておいた方がいいだろうし。

 夜になったら新国民たちの様子を見に行こう。

 とりあえず土産代わりに弓でも作っておくかね。

 ブルースのオッサンが【狙撃】スキルを持っているからな。

 腕前を見せてもらいたいというのもある。

 けど、普通の弓じゃ面白くないな。

 コンパウンドボウとかどうだ?

 初見だと色々と困惑する弓である。

 なんで弦がこんなに複雑に絡み合ったようになってるんだとか。

 両端についている滑車に意味はあるのかとか。

 棒が突き出しているけど意味があるのかとか。

 こういうのを辛口の掲示板で質問すると「ググれ!」と言われるだろうけど。

 コンパウンドボウの特長はいくつかある。

 まず、弓の大きさに対して威力が強い。

 引き初めは力がいるが引き切った時の保持にかかる力が少なくて済む。

 放った時の振動を抑制することでブレを抑え命中率を上げている。

 どれもそういう構造になっているからな。

 普通の弓など作っても面白くもない。

 さすがに所持したことはないので即座にレプリカを用意とはいかないのが残念だ。

 しかし自作している動画はあるんだよな。

 構造を解説しているサイトもあるし作るのは楽な部類だ。

 神級スキル【万象の匠】様々である。

 材料の選定は必要だがな。

 それも倉の中で【多重思考】を駆使して並行作業で複数作ることである程度解決する。

 試行錯誤の手間も省けてしまうとかチートにも程があるな。

 我ながら恐ろしくなることもある。

 が、作ってると楽しくて気にならなくなるんだよね。

 輸送機の時なんかは特にそういう感じだった。

 それはともかく、ブルースたちの反応を見てみたい。

 あのゴテゴテした感じを見て弓の一種だと知ったら、どんな顔をするだろうか。

 実に楽しみである。

 実際に使った時も驚くだろうな。

 極力コンパクトにしてやろう。

 魔道具の技術で仕上げれば小さくても強力な弓になるはずだ。

 強すぎて引けないとかはあるかもしれないが。

 まあ、そこは程々にだな。

 そういう部分も術式を組み込んでとなるかもだが、魔力消費の兼ね合いもある。

 派手に魔力を消費するなら思いっ切り凝ったものにしたいというのが本音ではあるが。

 そういうのは別口で考えている。

 当初はクロスボウでやるつもりだった。

 コッキングして発射可能状態にしておけば狙うだけだしな。

 コンパウンドボウは疲れてくると引くのが辛くなるし。

 いくら引き切った後は保持に力がいらないとは言えブレが生じるようになるだろう。

 そこはレベルを上げれば問題なくなるとは思うんだけどね。

 まあ、そんなのは些細な理由だ。

 何度も言うようだが色々と凝った作りにしたいだけなのだ。

 ギミックを考えて実現する。

 ロマンがあると思わないか?

 色々な動画に刺激されてアイデアを温めてきたのだよ。

 エアコンプレッサーでコッキングする動画なんかは特に刺激されたさ。

 しかも回転弾倉を脱着するクロスボウでそれを実現していたからなぁ。

 とにかくアイデアが秀逸だった。

 魔道具で実現させるなら空気圧にする必要もないからコンプレッサーも不要になる。

 なかなか面白いことになるだろう。

 短時間で次の矢が撃てて連射性能がクロスボウのそれじゃなかったもんな。

 しかも回転弾倉は交換式だ。

 弾倉というか矢倉だけど。

 事前に準備しておけば撃って撃って撃ちまくれるってことだな。

 決してブルースをトリガーハッピーな感じに仕立て上げたい訳ではない。

 これはメカを愛するがゆえのロマンなのだ。

 大した構造にはならんだろうけどな。

 とにかく動画で見たまんまの再現にはならない。

 構想上ではクロスボウには見えなくなることが確定済みだし。

 ふとしたアイデアでスリングショットになってしまったからさ。

 最初はクロスボウで考えていたはずなんだけど。

 どうしてこうなった。

 だが、ロマン武器になりそうだから後悔はしない。

 デザイン案の段階で何処かで見たアサルトライフルっぽい感じになっている。

 銃身がグレネードランチャー並みに太くなるけどね。

 内部にスプリングを入れるからな。

 そう、このバネで弾を飛ばす。

 言ってみれば銀球鉄砲のようなものだ。

 構造的には似ても似つかないけどな。

 こちらは銃身内のバネを引き延ばして使うからね。

 形はバネだけどゴムのような性質を持っている。

 術式で変形強化させた特殊バネであるのは言うまでもない。

 金属スプリングまんまだと弾が飛ばないもんな。

 飛んでも初速からショボいことになる。

 では、何故に形をスプリングにしたのか。

 内側を弾の通り道として利用するためという普通に考えればあり得ない仕様だ。

 スプリングには術式を刻み込み、魔法で弾とは触れないようにしているけどね。

 あと、銃身内を通過する弾を回転させる術式も追加した。

 擬似的にライフリングの役割も持たせた訳だ。

 そこまでするなら火薬を使う銃器の方がいいだろと言われそうだが。

 効率とかだけで考えるなら、それも頷けるんだけどね。

 このスリングショットは本物のアサルトライフルみたいにフルオートとかで撃てないからな。

 普通なら短所となる発射音や閃光は術式を組み込んでおけば魔法で消せるし。

 まあ、間怠っこしいことをしているのはお遊びだからだ。

 後は火薬銃を広めてしまう懸念もあるので回避したというのもある。

 作ったスリングショットには使用制限とか解析と分解を阻止する術式を刻み込むけどさ。

 それでも誰か勘のいい奴が見様見真似で作ろうとすることは考えられるし。

 魔道具なら真似のしようがないだろうという思惑がある。

 かなり無駄がある構造になってしまうが、そこを気にしていてはロマン武器は作れない。

 言うほど格好良くはないけどね。

 もっと効率の良い武器を作ろうと思えば理力魔法で射出する方法を採用しただろう。

 真似できないし音も閃光も発しない。

 その上、魔力次第で威力は跳ね上がる。

 では何故採用しないかというと遊び心と言う他はない。

 そもそもガンセイバーが既にあるからな。

 同じ構造のものを別デザインで用意しても面白みに欠けるだろ。

 見た目がアサルトライフルなのにオートマチックじゃない時点で遊ぶ気満々なのだ。

 コッキングはショットガンみたいなポンプアクション式だし。

 珍妙に見えるかもしれないが楽しそうなので採用した。

 ちなみに実際のスライド距離と特殊スプリングの伸長される長さは一致しない。

 スライドはワイヤーを引くためのスイッチでしかない訳だ。

 魔道具だから、その辺りは融通が利く。

 あと弾倉から弾が迫り上がるようにする。

 アサルトライフル風の見た目なのに回転弾倉とか面白いとは思うんだけどな。

 撃ちまくるためにこうなった。

 次に作る時はバリエーションとして仕様変更するのもやぶさかではない。

 とまあ、昼飯を食う間に色々と考えながら試作していたのは内緒である。

 一番弟子にはバレバレだったようだが。


読んでくれてありがとう。

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