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261 色々と方がつく?

修正しました。

国元 → ミズホ国

倉庫倉庫 → 倉庫

仮説 → 仮設


 ジェダイト王国の全国民が進化したという話は本当にシャレにならない。

 手を下したのはラソル様だけど、俺にも責任がある。

 俺が暴走気味に魔法を使った時の魔力が使われているからな。

 いくらガンフォールがスカウトの許可を出してくれたとはいえ無茶苦茶だ。

 タイミング的にはフライング確定だし。

 何考えてんだ、ダメ亜神。


「……………」


 いや、そこを問題にしても手遅れだ。

 元に戻すことはできないのだし。

 ならば、まずは謝らねばなるまい。

 謝って済む問題ではないとは思うがね。

 だが、そこを省略するのは人としてダメだろう。

 俺はガンフォールの前に行き、土下座した。


「すまん!」


 俺の周囲は呆気にとられている。

 まさか土下座するとは思わなかったんだろう。

 だが、そんなことを気にしている場合じゃない。


「頭を上げてくれ、ハルト」


 軽々しい土下座だと思われてしまうだろうが、その言葉に従った。


「一国の王がそのような真似をするものではないぞ」


 諭すように言ってくる。

 言われると思ったさ。

 随分と穏やかな感じで意外ではあったが。

 そんなことを言うと怒られるとは思うけどな。

 だが、努めて冷静に振る舞おうと無理をしている感じには見えない。

 とすると国民全員が進化したこと自体をなんとも思っていないということか。

 どうだろう?

 いずれにしても落とし前のつけようのない結果になったのは事実だ。


「だが、ケジメはつけなきゃならんだろ。

 どう考えても征服したのと変わらん結果だからな」


「いや、むしろその方が良かったかもしれん」


「は?」


 訳が分からん。

 状況的には否定しようのないくらい侵略行為になっているというのに落ち着きすぎだろ。

 何処の国の国王が征服されて納得するというのだ。

 ……目の前にいるが、信じがたい。

 まさか丸々受け入れられるとは思わなかった。


「正直、ワシが王を辞め国を出ると言ったときの影響が読めておらなんだ」


 そう言ってガンフォールは一度ハマーやボルトの方を振り返った。


「当初、ハマーは残ると思っておったのじゃ。

 それが予想に反して来ると言いおった。

 ボルトで五分と考えていたのじゃが。

 此奴も悩みはするかと思うたら即決じゃったしな」


 視線をこちらに戻して続きを話し始める。


「この調子では下手をすれば国民の大半が付いて来かねん」


 ガンフォールの予想では追随する者はもっと少なかったのだろう。

 その上で国が傾かない程度の人数だけを連れて来る算段だったように思える。

 少なくとも俺が予想していた人数よりは少ないだろうな。

 来ないよう説得するのに俺も奔走することになるというのがこちらの読みだったから。


「そこまで読めていなかったと?」


「そうじゃ。

 国王失格と言われても仕方あるまい。

 国民の意思を読み切れなかったのじゃからな」


 自嘲気味に嘆息するガンフォール。


「意思確認したのは、まだ2人だけだろう」


「ここまで読めなかったのじゃ。

 後の結果は自ずと分かるじゃろう」


 なんか妙なところで自信喪失しているな。


「それでいいんじゃないか」


「なんじゃと?」


「ガンフォールは見通しが甘かったと思っているんだろうが、そうじゃない」


 ハマーやボルトの方を見ると頷いている。

 コイツらの方が分かっているな。


「アンタが国王だったから皆が付いて来るんだよ。

 他の奴だったら、そうですかの一言で終わっただろうからな」


「むう」


 難しい顔をして考え込むガンフォール。

 自分の魅力というものを理解していないのか信用していないのか。

 あまり考え込ませても答えには辿り着かないだろうから話を戻そう。


「いずれにせよガンフォールが納得してくれるなら助かる。

 あとはジェダイト王国の国民が納得してくれるかが鍵だな」


 王がこうだと方針を決めても不満を持つ者が出てくる可能性はある訳だし。

 例えば王を誑かしたと難癖をつけてくることも考慮しておかないといけない。

 というより、不満を持つ者の大半がこうなると思う。

 いずれにせよ万人が納得してくれる訳ではないと考えておくべきだ。


「それについては心配いらんだろう」


 そう言ってきたのはルディア様だ。

 どういうこと?


「兄者が小細工を弄しておった」


 何をしたのかは、すぐに見当がついた。


「神の啓示とか言って強引に納得させた訳ですか」


「そうだ」


 渋い表情で肯定の返事をするルディア様。

 こういう所で抜かりなく仕事をするなら普段から真面目にやれと言いたいんだろうなぁ。

 まあ、気持ちは分かる。


「後で説明をする手間は省けるだろう。

 ここに居る者たちも次の眠りで何がどうなったか理解するはずだ」


「睡眠学習ですか」


「うむ、知識などについてもある程度だが与える用意がある」


 ホントに睡眠学習だな。


「随分と至れり尽くせりで逆に怖いんですが」


「兄者のことだ。

 これくらいのフォローは当然と言うであろうな」


「俺たちの怒りを少しでも和らげるためですか」


「それもあるが、あれは自己満足だろう」


「……分かるような気がします」


 ラソル様の性格を考えるなら「アフターケアもバッチリだよ」と爽やかな笑顔で言いそうだ。

 アフターケア云々じゃないっての。

 いらんことをするなと言いたい。

 するなと言われると余計にやってくるだろうけど。

 その上で「リスペクトしても良いよ?」とか言ってきたりするんだよな。

 図々しくもドヤ顔しているところまで想像できてしまう。

 ……深く考えるのはよそう。

 きっとムカつくだけで終わる。

 無駄の極みだ。

 今は苛つくよりも建設的な話で前に進むべきである。

 とりあえずジェダイト国民は納得してくれたものという前提で話をしよう。

 俺もけっこう図々しいよな。


「すまんな、ガンフォール」


 俺はもう一度、頭を下げた。

 今度は土下座じゃないし、すぐに頭を上げたけどね。

 数千人を一気に引き受けるプレッシャーに怯んでいる自分が情けない。

 もっとしっかりしなければ。


「何度も詫びるな。

 軽んじられる元だ」


 確かにガンフォールの言う通りだ。

 思わず苦笑が漏れる。


「これくらいにしておくさ」


「そうしておけ」


「責任の重さってやつに負けないようにしないとな」


「なるほど、そういうことか」


 俺がビビっていたことに気付かれてしまったようだ。

 ガンフォールも苦笑した。

 笑われたことについてはしょうがないと思う。

 俺だって人間だからな。

 想定外のことにビビることだってある。

 それを認められず虚勢を張る方が恥だと俺は思うよ。

 状況によっては、そうしないといけないこともあるだろうけどな。


「責任の重さは人数で決まるものではないぞ」


「ああ、そうなんだろうな。

 一夜で国の人口が百倍以上になるのは、できれば勘弁してほしいがね」


 百倍という部分にガンフォールは目を丸くしていた。

 が、すぐに不敵な笑みを浮かべる。


「違いない」


 俺とガンフォールは互いに顔を見合わせて大いに笑ったのである。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 さて、夜が明けた。

 もうすぐ朝食の時間だ。

 皆あんまり寝ていないので一部にボンヤリ顔の面子もいる。

 可哀相なので固形ポーションを渡しておいた。

 いつもの梅干し味ではなくレモン味だ。

 効果も違う。

 疲労回復など重複する部分もあるが、それに関しては梅干し味よりも劣る。

 最大の効果は睡眠不足による眠気の解消において発揮されるよう調整してあるからな。

 ただ、どこかで帳尻合わせは必要だ。

 あくまで眠気の解消と睡眠不足による作業効率の低下を防ぐためのものなのでね。

 効果は一時的なものでしかない。

 昼寝をするための時間の確保については各自で御自由にだ。

 そこまで面倒は見ていられない。

 俺は誰かさんのお陰で色々と忙しいからな。

 ヤクモから帰ってくる前も忙しかったし。

 千人を超える面子の食料を倉庫から引っ張り出して唖然とされたり。

 地魔法で仮設倉庫を作って食料を放り込んで唖然とされたり。

 雨露をしのぐための仮設住居を植生魔法でドーンと用意して唖然とされたり。

 ローズを実体化させて神霊獣だと紹介して唖然とされたり。

 まあ、これはうちの面々にも呆れた視線を向けられたけど。

 夢属性のカーバンクルだと説明したらエリスなんかは仰天してたし。

 なかなか珍しいものが見られたかもしれない。

 仰天と言えばハリーの着ぐるみだろう。

 首をスポンと抜いたら卒倒するかというくらい驚かれたもんな。

 中から本体であるパピシーのハリーが出てきたときは唖然とされるだけで済んだけど。

 ていうか何やっても唖然とするってどうよ。

 一部は仰天だったけど、それを見せつけられる俺からすれば大差ない。

 最終的には俺まで土下座されることになったし。

 完全に恐れられてしまったんじゃねえか、これ?

 これから国民になる相手にビビられるとかないわー。

 まあ、その辺のフォローは戦闘組にお願いしましたよ。

 え? ルディア様はどうしたのかって?

 早々に帰ったよ。

 居続けると話を始められなかったものでね。

 少々バフを掛けたくらいじゃ千人組が畏縮したままで話を聞ける状態じゃなかった訳だ。

 戦闘組もだけど。

 他所の国と違って降臨する機会もあるから早々に慣れてほしいね。

 すぐには無理だろうけど。

 このままだと説明不足になるのでラソル様の技を俺たちも利用させてもらった。

 要するに睡眠学習で事の顛末を説明することにしたのだ。

 ルディア様が直々に夢の中で説明する感じになるので威圧感ゼロとはいかないけど。

 念話よりやや弱いくらいかな。

 それでも情報量の多さに混乱しないと分かっているのは大いに助かる。

 寝ないと学習できないという欠点があるけどね。

 だから千人組はその場ですぐに事情はおろか状況を理解することは適わなかったけど。

 戦闘組にしても今回の背景事情を理解するのは寝てからだ。

 とりあえず休んでおけで納得させたけど。

 目覚めた時がショックかもな。

 亜神のイタズラで振り回されたとか知ってしまうんだから。

 なんにせよローズとハリーが残るので指示に従うようには言っておいたよ。

 そしたら千人組に土下座されてしまったから従ってくれるのは間違いないと思う。

 合間に様子を見に行くつもりだけどミズホ国に連れて行く日がいつになるやらだ。

 少々のことでは動じないくらいになってもらわないとなぁ。

 あ、ジェダイト王国にも行かなきゃならないんだよ。

 皆ビックリするだろうな。

 ジェダイト王国が無くなってミズホ国のジェダイトシティになると説明されるんだもん。

 あの後、ガンフォールと話し合った末の結論である。

 属国にするとか方法は色々あったと思うんだけどガンフォールの主張が採用されることになった。

 ハマーもボルトも特に反対はしなかった。

 むしろ中途半端なのは嫌だからと俺の属国案の方を否定されたよ。

 実際に向こうで説明して反応を確かめてからという条件はつけたけど。

 ジェダイト組は自信満々でジェダイトシティ案が受け入れられると言っていた。

 ドワーフのことはドワーフがよく分かるってことだろう。

 おっと、今はドワーフ+だったな。

 エリスたちはフェア3姉妹案を提案したら、すんなり受け入れられた。

 というより喜ばれたので、俺としても一安心である。

 あと彼女らの実家がらみの問題はルディア様が対処してくれた。

 エリスも含めてそういう人間は居なかったということになる。

 変にしがらみを抱えるよりは、お互いに心理的な負担を抱えずにすむだろうという話になったからだ。

 提案したのはルディア様だ。

 酷なことを言うようだが後々まで引きずるようなことになるよりはと言っていた。

 賛否両論ある話だと思う。

 事実、エリスたち当人が受け入れられないなら別の方法に切り替えるという話だったし。

 彼女らは全員がそろって同じ状態ならばと即決で受け入れていたけどね。


読んでくれてありがとう。

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