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256 まだまだ明かせないことがある

修正しました。

~二度と勘弁してほしいです」 → ~二度目がないことを願います」

~運んだじゃろう」 → ~運んだろう」

~訂正しておこう。 → ~念のために言っておこう。


「もしかして、うちら更に進化したんとちゃうの?」


 俺の読みは当たっていた。


「ああ、もしかしなくても進化したぞ。

 ハイラミーナとエルダーヒューマンに」


 答えないという選択肢はない。

 いま教えないのはレイナとアニスがごねること間違いなしだからな。

 現状でギャーギャーと騒がれるのは嬉しくない状況になるのは言うまでもない。

 答えても面倒なことになるだろうとは予測していた。


「「「「「なんですとぉ─────っ!?」」」」」


 と、まあこんな具合に。

 大声を出されて注目を浴びるのはヤバいと理解しているはずなのにこれだ。

 その日のうちに間を置かず2段階で進化したと言われれば驚きもする。

 しかもラミーナの面々は種族初の最上位種である。

 ルーリアにしても俺に次いで2番目に進化したエルダーヒューマンだし。

 驚くなと言う方が無理のある話だ。

 せめて声を出さずにというのも無茶振りだと思う。

 故に彼女らの絶叫が届くのは俺らだけに留まるように処理した。

 やらかすと思った瞬間に風魔法で遮断。

 これで外部へ音が漏れるのをシャットアウトした訳だ。


「おいおい、あんまり周囲を刺激してくれるなよ」


 いかに魔法でブロックしたとはいえ注意はしておく。

 今回はダメだったが、これを糧にしてくれればと思うが故に。


「「「「「……すんませーん」」」」」


 しょぼーんと萎んでいく月影の一同マイナス1。

 充分にやらかしたことを自覚して反省しているので、これ以上は咎めない。


「まあ、なんだ。

 お前らの気持ちは分かる。

 俺も最初からエルダーヒューマンだったわけじゃないからな」


 落ち込む月影のメンバーたちを慰める。

 ノエルは平常運転だったので我関せずって感じでぼーっとしているけどね。

 仲間なんだし冷たくないかと思われたりするかもしれない。

 だけど、今のは月影の面々がミスった。

 その責任は負うべきと考えているのだろう。

 個人の自己責任の範疇でな。

 このリーダーはなかなかに厳しいですよ。


「あと、これくらいで驚いてたら心臓が最後まで持たないぞ」


「まだ何かあるん?」


 力なくアニスが聞いてきた。


「たとえばシヅカも進化してるんだが、どう思う」


「ちょっと待て、ハルト」


 俺の言葉に真っ先に待ったをかけたのは月影の面々ではなくガンフォールだった。

 かなり焦っている。


「いくら何でもマズかろう」


 国外の面子の中で唯一シヅカの正体を知っているからな。

 真の姿も見ているし。

 進化後の姿は見てないけど、それは俺やシヅカ本人も同じことだ。

 ちょっと想像がつかない。

 あれよりも更にデッカくなるとか考えておいた方がいいのかね。

 普通に考えると1サイズ大きくなっているだろうな。

 皆もそんな感じだし。

 そのあたりツバキは変わってないから絶対とは言えないが。


「まあ、普通にマズいよな。

 俺としては、すぐにでも見たいところだが」


 シヅカも確認したいらしく、うんうん頷いている。


「よさぬか、それこそ大パニックじゃ」


「ですよねー」


 慌てず騒がず止めようとするガンフォール。

 焦りはしても冷静さは失わないのはさすがだね。

 俺が本気でない軽い調子なのを見抜いているというのもあるだろうけど。

 あんまり周りを刺激するのも考え物だしな。

 俺としては月影の面々が落ち着けばいいだけだからね。

 芝居がかっているように見せて周囲を煙に巻くぐらいはする。


「そんなに凄いのですか?」


 けれども緊張感の漂う表情でエリスが聞いてきた。

 俺たちが冗談を言い合っているのでないことを察したか。

 なかなか鋭いんだよねぇ。


「国に帰った時にでも披露するさ」


 千人組にはまだまだ厳しいだろうね。

 落ち着いて俺の話を聞けるようになったとしても龍を見て平気でいられるとは思えない。

 レオーネたち戦闘組は微妙なラインだ。

 オープン・ザ・トレジャリーの威力を見せているから多少の耐性はあると思うけど。

 その彼らですらパニックを起こさない保証がない。


「残念なのじゃ」


 そう言いながらも、やけに楽しげな笑みを浮かべているシヅカである。


「お主のように驚く形を見るのが今から楽しみじゃのう」


 真の姿を見せた時の光景を想像してるから御機嫌なのか。

 此奴も何気に厨二病気質だよな。

 それを見てガンフォールは額に手を当てていた。


「思い出したくもないわい。

 我ながら無様な姿をさらしたのは一生の不覚じゃ」


 しょうがないさと俺はガンフォールの肩に手を置いた。

 亜竜でも一般人なら腰を抜かす者がいるくらいなのに龍だもんな。

 しかも今度は格が上がってるし。

 皆に披露するときは念入りにバフっておかないと心臓が止まるのが出かねない。

 だからガンフォールが思っているほど恥なことではないと俺は思うんだが。

 問題はその言葉を聞いたハマーやボルトだね。

 自分たちの王が無様をさらすほどの相手とはと青い顔をして震え上がっている。

 今からそれでどうするんだよ。

 お前らの忠節と憧れはその程度なのか?

 いや、むしろ尊敬するガンフォールがビビるほどの相手だからこそ畏縮しているのか。


「心配しなくても俺らは無意味に暴れたりはしないぞ」


 ハマーが疑わしげな目を向けてきた。


「ハルトが暴れる時はいつも無茶苦茶ではないか」


 ああ、そういうこと。

 いつもってのは違うと思うけどなぁ。


「そうか? ネイルとかヒンジを黙らせた時は大いに控えめだったぞ」


「そのくらいだろうが。

 わしは決して忘れんぞ。

 ソードホッグの時の道連れで飛び降りたことを」


 そういや、そんなこともあったな。


「あれは緊急事態だったから仕方ない」


 回り道してたらマリア女史は帰らぬ人となっていただろう。


「仕方ないで奈落の底へ飛び降りるのに付き合わされてはたまらんわい」


 奈落の底とは大袈裟だ。

 フリーフォールとかバンジージャンプ程度の高さだったはずなんだが。

 本人にとっては、それだけ刻み込まれるような恐怖だったということか。


「根に持ってるなぁ」


「持つに決まっておるだろう」


「そうなのか?」


 ボルトに振ってみると神妙な表情で頷かれた。


「できれば二度目がないことを願います」


「あらら、それはすまん」


「他にもあるぞ」


 まだあるのかよ。


「ワシをブリーズの街で荷物扱いして屋根伝いに運んだろう」


「あれは将棋で夜更かしをしたハマーが悪いと思う。

 あと、蝗害の時は緊急事態だったから悪いが諦めてくれ」


 ツバキとハリーがうんうんと頷いて俺に同意する。


「くっ、では自動車だ。

 あの無茶苦茶な走りっぷり。

 頭がおかしいとしか思えん」


「そうですか?

 速くて快適ですよ」


 続いてエリスからも援護射撃だ。

 ハマーがどんどん劣勢に追い込まれていく。


「じゃな。慣れればどうと言うほどのこともない。

 さすがに輸送機ほどの快適性はないが馬車とは比べ物にならぬわ」


 ガンフォールまで俺の援護に参加する。

 こうしてハマーはあえなく撃沈した。


「先生の本気を見てしまえば、少々のことでは驚けなくなるでしょう」


 エリスの言葉にいじけてそっぽを向いていたハマーが視線を送る。

 向きになって反論するなどの気配はない。


「何でしょうか?

 そんなに変なことを言った覚えはありませんが」


「アレですべてを見た気になっておるなら若いな」


 何がハマーの言うアレなのかは分からんが、言いたいことは理解した。

 それは正しい認識だ。

 そこはエリスも理解しているのか反論はしない。

 特に機嫌を損ねたりもしていない。

 さすがと言うべきか。

 若くして冒険者ギルドの地域本部長を任されるほどの傑物だもんな。

 ただし、事実を誤認しているのはマイナス点だ。

 俺の基準をまだまだ低く見積もりすぎである。

 オープン・ザ・トレジャリーを片手間だと言っただろ?

 まあ、千人以上の人間を見知らぬ土地に転送させた方がインパクトが大きいのか。

 倉に入れた状態だったからいないも同然だったけど。

 それをわざわざ言う必要もないだろう。

 仮に外に出してから連れてきたとしても魔力は大して減らんけど。

 制御も脂汗流して集中しなきゃならないってことはないし。

 【魔導の神髄】があるからな。

 なくても魔力が激減するってことはないし、制御も【多重思考】で分散すれば問題ない。


「ひとつ念のために言っておこう。

 俺は今回、一度も本気になった覚えはない」


「な……」


 二の句が継げないといった状況ではないが後が続かないのは同じだな。


「転送魔法でそう思ったんだろ」


 コクコクと頷きが返される。

 動揺からの復帰に手間取っているようだ。


「あんなの俺には歩くのと同じ感覚だからな。

 人数多けりゃ魔力も消費するけど、それもとっくに回復してるし」


「え……」


 驚きっぱなしのエリスというのも面白いな。

 いつまでもその状態のままで放置するわけにもいかんけど。

 エリスでこれじゃあ、待ち合わせしてるルディア様が来たときの対策を考えておかんとなぁ。

 月の女神と認識されている彼女が降臨してきたらどうなることやら。

 初めて妖精組の前に出てきた時の二の舞はゴメンである。

 あのときはベリルママがいたから上手い具合に皆を混乱させて煙に巻いたが。

 同じ手を使うのは無理だろう。

 他の亜神を連れて来れば似たようなことはできるとは思うけどね。

 でも、今回は頭数が多い。

 当時の妖精組より精神的プレッシャーに弱そうな者が多そうだし。

 せめて千人組も進化していてくれたらなぁ。

 そしたら少しは耐性も上がっていると思うんだけど。

 無茶というか勝手な要求だな。

 自分の都合のいいように考えるなど虫が良すぎる。

 それくらい、お手上げ状態なんだけどね。


「これくらいで驚いてたら心臓止まるかもな」


「それはいくらなんでも大袈裟じゃない?」


 レイナがツッコミ入れてきた。

 お、復調してきたか。

 生憎と大袈裟だとは思わない。

 月影の面々はベリルママにまだ会ったことがないからな。

 もちろんルディア様にもだ。

 先程、俺が晩餐会の部屋でラソル様の声だけ届くようにした時は耐えられたようだけど。

 部屋の外に居たことで結界によりある程度は緩和されていたからな。

 実際に降臨された時には思い知るだろうよ。

 月影の面々には俺のことを洗いざらい話してあるけどさ。

 たぶん管理神が母親だなんて信じてないと思う。


「それぐらいの覚悟を持っておけってこと。

 でないと、マジで腰とか抜かすことになる」


 俺が真顔で言い返すと「うっ」とたじろいでいた。

 それだけに留まらず、徐々に顔色を悪くしていってるぞ。

 大丈夫か、レイナ?

 半信半疑だった情報が「もしかして」って感じで頭の中で変貌しながら渦巻いているな、あれは。

 今回に限らず色々見せてきたからなんだろう。

 後からジワジワ実感させられるっていうのは相当に応えるようだね。

 あんまりビビらせても話が進まない。


「ツバキやハリーも進化してるからなぁ」


 当人たちには念話でハイアラックネとハイパピシーであることを伝えた。

 もちろんシヅカにも聖天龍だと教えたさ。

 細かな説明は後で改めてってことになるだろうけどね。


「ローズも同様にな」


 この言葉にジェダイト組が些か慌てた様子を見せた。


「あ、ローズが誰かってのは追及しないでくれ」


 こう付け足すと彼らは安堵したが、それでも驚きは消せないようだ。

 霊体モードでも進化するってことが意外だったのかね。


読んでくれてありがとう。

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