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250 後始末は続く

 ただいま囚人どもを一括で突き付ける相手を募集中。

 いや、丸投げする相手は決まっている。

 ゲールウエザー王国だ。

 他の国に知り合いはいないし。

 あの国にしても無理難題を押し付けられるほど親密な間柄って訳ではないがな。

 もちろん相手の事情とかは一切考慮していない。

 無茶苦茶だって? 俺もそう思う。

 あれこれ考えるより力技で押し通る方が世の中上手くいくことが多いってだけだ。

 押しつけられる側からすれば災難以外の何物でもないからな。

 それに万人が納得するやり方ではないのも確か。

 きっと個人レベルでは不満を抱く者が大勢出てくるだろう。

 だけど、それで国家間同士が揉めることにはならない。

 小国の首脳部あたりは処刑のコストがかからずにラッキーだと思うかもね。

 大罪人の処刑を告知もなく行うわけがないからさ。

 そうなると処刑まで何日か待つことになる。

 その間に処刑の瞬間を見たいって奴が集まってくるからな。

 当然のことながら待つ間には色々と費用がかかってくる訳だ。

 それ以前に隣国から自国の処刑場まで罪人を護送する必要がある。

 処刑する相手にも護衛は必要になるのが業腹だろうけどな。

 護送から刑の執行直前まで奪還を目論む輩が出てこないとも限らないのでね。

 主に人件費が負担になるけど、相手が大物だと人を増やす必要が出てくる。

 万が一にも囚人に逃げられれば国の名誉の問題だけではすまないからな。

 恨みを抱いている自国民が暴動を起こしかねない。

 必然的に腕の良い護衛の頭数をそろえる必要が出てしまう。

 自前の騎士や兵士を使うのだとしても馬や馬車、移動中の食事の問題がある。

 兵士の練度次第では数で補う必要があるだろう。

 もしくは傭兵を雇って少数精鋭にするか。

 この場合は頭数は減らせるが、傭兵を雇う金が余分にかかる。

 いずれにしても小国には痛い出費になりかねないわけだ。

 故に大国がすべて処理してくれるなら表面上はともかく裏では歓迎するだろうね。

 下からの突き上げ次第では抗議くらいはするかもだが、それはただのガス抜きである。

 どちらの国も事情は理解した上で芝居がかったやり取りをして互いの面子を保って終了。

 突き上げる連中も自らの手で仇が討てなかったことに小さな不満を持つだけ。

 処刑された事実については受け入れる者がほとんどだろう。

 例外がいたとしても戦争に発展するほどの事態にはならないさ。

 不満を残すと別の形で暴発しかねないから、もう一手間くらいは必要かな。

 抗議したくてもできない状況を作り出すくらいしか思いつかないけどね。

 言っておくが思いっ切り力技だ。

 この国をゲールウエザー王国が占領したことにするってだけだからな。

 占領に関して言えば、この国はゲールウエザーに譲渡するつもりだったから何も問題はない。

 囚人を独占することになるが、渋々ながらも受け入れる連中が大半だと思う。

 戦勝国が捕虜をどう扱うかを他国は口出しできないからな。

 戦争という負担をしていないお前が言うなってことだ。

 真実を知られると、ややこしくなりそうだけど。

 あと、占領された国に同盟国や友好国があれば話は別かも。

 バーグラー王国にそんなものある訳ないけどね。

 周辺国すべてに喧嘩を売っていたようなものなんだから。

 巨人兵を手に入れて気が大きくなっていたのか、それとも何も考えていなかったのか。

 後の歴史家はどう記すんだろうね。

 少なくとも俺は書き残すつもりはないよ。

 だって面倒だもん。

 なんにせよクラウド王に提案するのは夜が明けてからになる。

 はあー、気が重い。

 絶対に根掘り葉掘り聞かれるぞ。

 これはこれで面倒だ。

 あー、誰かに丸投げしたい気分……

 なんかエリーゼ様に感化されてる気がする。

 何でもかんでも丸投げという姿勢を真似をする訳にはいかんな。

 あれは悪いお手本だ。

 まあ、こういう心境になるのも無理はないんだけどね。

 ちょっと手伝ってもらおうとしたら思いっ切り振り回されたし。

 好き勝手やってるんだから多少のことには目を瞑れと言われそうだけど。

 アレが多少だという奴がいるなら俺は断固として抗議するが。

 なんにせよ傍迷惑なことをされた上で後始末をするというのが想像以上に気疲れするんだな、これが。

 ここまで面倒なことになるとは思わなかったんだよね。

 国ひとつ無くすような真似をしたんだから当然なんだろうけど。

 選択ぼっちの頃の俺なら絶対にこんなことしなかったな。

 まずは後先を考えてたと思う。

 それ以前に日本人の頃の俺じゃ実行不可能だわ。

 こっちの世界でも実行可能なレベルに到達している人は限られるけど。

 俺の知る限りだと単独で可能なのはローズやシヅカぐらいかな。

 時間を掛ければうちの子たちにもできるか。

 あと、能力的にはルディア様やラソル様にも可能だとは思う。

 こうまで深く人間の世界に干渉することは考えられないので実行はしないはずだけど。

 それをするなら、ルディア様がとっくにアルシーザ帝国を潰してると思うよ。

 バーグラー王国より国民の扱いが酷い国みたいだし。

 ちょっと想像がつかないけどね。

 この国をパワーアップした感じでもないみたいだしな。

 方針が違うというか、自国ですべて完結している国なのだ。

 国土面積は世界一で軍隊も最強と言われている。

 普通なら世界征服を目指してもおかしくないのに隣国とは関わろうとしない。

 江戸時代の日本より徹底した鎖国状態と言えば良いのだろうか。

 不思議と隣国に手を出してこないので眠れる竜の国とか言われているんだと。

 その呼び名からも分かるように西の果ての大国は近隣の国から敬遠されている。

 幸いなことに国境線は海と言っても良いくらいの湖とそこから南北に流れる大河だ。

 川の向こうはこの世の地獄とも言われる国を相手にしようとは誰も思わないのだろう。

 商人が訪れることもなければ冒険者ギルドもない。

 冒険者ギルドはバーグラーにもないけどな。

 昔はあったけど撤退したそうだ。

 こんな上辺だけの情報でも関わりたくなくなる。

 どんな風にどのくらいヤバい国なのかなんて調べる気にもならんね。

 将来的に巻き込まれないという保証はないけど聞きたくも知りたくもない。

 そうなった時はその時に対処するまで。

 ああ、対処は必要最小限にして後始末はラソル様に丸投げしよう。

 逃げようとするだろうけど、そうはさせないよ。

 動画編集した本来の姿をルディア様経由で全世界に配信するってことで交渉するさ。

 もちろん逃げた場合はだけど。

 これは脅迫じゃないよ。交渉だ。

 ……こんな保険を考えるとかフラグだよな。

 これ以上、面倒な将来の可能性について考えるのはやめておこう。

 俺は今を自由に生きるのだ。

 でも、こうして考えると矛盾だらけだな。

 ラソル様はイタズラでほいほい干渉してくるし。

 ルディア様もラソル様ほどではないにしても俺関連で人間の世界に深く関わっている。

 地球じゃ考えられないぞ。

 そういう意味では、こっちの世界は色々と緩いようだ。

 今後それが吉と出るか凶と出るかなど俺には分からない。

 未来は無限に可能性があるからな。

 ただ、現状は物凄く狭い選択肢を選ばされているけど。

 それもこれもあれも何処かのお調子者な亜神のおかげである。

 なんにせよ後始末はしましたよ。

 しないと帰れないし。

 巨人兵なんて西方の国々には脅威の存在も残っていたからなぁ。

 放置するとアレに目をつけている連中が暗躍しかねんのが鬱陶しい。

 各地にバラバラで配備されていたのが面倒だったさ。

 すべて国境線近くだったのは攻めることしか頭になかったからだと思う。

 城に何体か置いとけば防衛用に使えたのにね。

 俺らが相手じゃ何の役にも立たなかったとは思うけど。

 そんなこんなで片っ端から破壊すること合計33体。

 結構あったな。

 重要部分は利用されることのないよう丸々回収してきた。

 マイクっぽいコントローラーは言うまでもない。

 あとは制御中枢とロケットパンチの部分もね。

 ボディの大半はあえて残してきた。

 ロケットパンチの代わりにダミーの岩を転がしてもある。

 並べれば元の形に近づけることはできるだろう。

 動かせるように組み立てるのは無理だけどね。

 刻み込まれた術式とか部分的に消去して書き換えてきたし。

 だから、これを研究しても巨人兵は作れない。

 小さいゴーレムに技術転用というのもできないようにしてあるわけだ。

 どんなに頑張ってもポーズを変更できる石像止まり。

 言ってみればポリキャップを使ったロボット系のプラモデルみたいなものか。

 何度ポーズを変えても関節がユルユルにならないのはこちらの強みだ。

 巨人兵は見た目がダサいけど、そういうのはデザインする人間次第でどうにでもなる。

 向こうの世界のモデラーとかが知ったら食いついてきそう。

 いや、こっちでも需要はありそうだ。

 戦争で使われなければ何でもいい。

 いっそのこと俺が広めるか。

 まあ、やるとしても飢饉の対策が終わってからだな。

 とにかく巨人兵は使い物にならなくした。

 だがしかし、これで巨人兵の問題が終わりとならないのが嫌なところである。

 この国の連中にこんなの作れるわけないから出所を探る必要があった訳だ。

 制御中枢を解析したり本体の術式以外の書き込みをチェックしたりして発見しましたよ。

 何処で製造されたとかシリアルナンバーなんかをね。

 そういう概念があったのは意外だったけど。

 あと、それが足の裏だとは思わなかった。

 お陰で製造元らしい古代遺跡っぽいものを見つけることができた訳なんだが。

 埋めた上に地下牢でフタをする形になってたから気付いてなかったんだよねぇ。

 思わず自己嫌悪してしまったさ。

 はい、お察しの通り城の真下でしたよ。

 気付かなかった俺は間抜けです。

 もっと丁寧に調べてればと反省することしきり。

 牢屋に逃げ込む奴がいなかったとはいえ地上階ばかり気にしていたのはダメでしょ。

 色々と思うことはあったけど時間が勿体ないので中をさっとチェックしてみた。

 巨人兵の製造工場って感じでダンジョンとは違ったので一安心。

 理力魔法で陥没しないよう支えながらゴッソリ抜き取るように倉庫に回収。

 こんなの残していく方が問題あるからね。

 巨人兵はパーツの一つも残ってなくてもぬけのカラ状態だったけどさ。

 現物がなくても資料はある訳で。

 時間を掛けて調査すれば巨人兵を作れる可能性がありましたよ。

 発見できて良かった。

 もちろん空いた空間は地魔法で隙間なく埋めましたよ。

 後は念のために自動人形を国中にばらまいて虱潰しに探させた。

 翌朝の明るくなる頃までには、なんとかヤバそうなものの有無を確認できそうだ。

 ファントムミストから切り替えて濃霧を維持させておくのも忘れない。

 その間に数日かけて徹底調査すれば調査漏れの心配もないだろう。

 これくらいしておかないと何が出てくるか分からんしな。

 発見した遺跡の方も後で時間のある時に調査しよう。

 できれば今は見たくない。

 資料を眺めるだけで気疲れしそうだもんな。

 とにかく、ただの地下遺跡で良かったよ。

 ダンジョン化してたら俺もさすがに動かせなかったからな。

 不幸中の幸いというやつである。

 で、息つく暇もなく皆を連れて城の外に出た。

 最後の後始末。

 城の破壊ショーですよ。

 苛ついていたのでぶっ壊すことにしたのだ。


「それでは、これより城をぶっ壊す」


「面倒なことをするのだな」


 俺の宣言にハマーが怪訝な表情で聞いてきた。

 口調自体は軽い調子ではある。

 反対するつもりも嫌みを言うつもりでもない感じだな。


「んー、なんというか鬱憤晴らしだな」


 それ故、俺も重くならないように答えたつもり。


「ムカつくちょっかいを掛けられてイライラしているんだよ」


 この言葉を聞いてボルトが顔色を青くさせていたけどね。

 ハマーも「うわぁ……」と今にも言い出しそうにしている。

 ガンフォールはあまり表情に変化はないが雰囲気的に諦観は感じるな。

 まだ、壊してもないのにそれかよ。

 ちょっとスカッとしたいと思っただけなんですが?

 エリスは平常運転なので安心したけど。

 クリス姫はワクワクという書き文字が見えそうなくらい期待感一杯な目で見てくる。

 そんな風に期待されてもなぁ。

 俺としては、それはそれで困惑させられてしまうんだが。

 ああ、落ち着いて俺の攻撃魔法を見られる機会だからはしゃいでいるのか?

 適当に理力魔法の障壁で破片とか飛んでこないよう防ぎつつ氷弾を無数にぶち込もうかと思ってたんだがな。

 それだと地味すぎて期待に応えられそうにない。

 俺は充分スッキリするんだが。

 爆炎系の魔法に切り替えるか?

 でも、そういうのは宮廷魔導師の訓練とかで見慣れている可能性があるしなぁ。

 規模とか威力を派手にすれば、それなりに見栄えはするかもしれんが……

 目新しさが欠けることには変わりない。

 ふむ、見た目が派手な魔法でサービスしてみるか。


読んでくれてありがとう。

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