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249 殴って意趣返しするようで……

修正しました。

内臓破裂は起こした → 内臓破裂した

ムカついたから~ → (該当行を変更し次行も修正)


 皆が進化したことに関しての追及は何とか押し止めた。

 後で説明しなきゃならんがね。

 それよりも残った後始末である。

 元奴隷たちに地下牢の連中のことを説明すると全員が1発ずつ殴ることになった。

 俺に言わせれば随分と穏健な対応だ。

 数十人いる戦闘職の元奴隷から殴られて生き残れる奴はそうそういないだろうけどさ。

 彼等が本気でやったら一発で内臓破裂じゃないかな。

 鍛えた相手を殴るのならともかく、ブヨブヨかプヨプヨした奴しかいないし。

 脂肪がつきすぎてダメージが通らないとかいう何処かで見たような奴はいないし。

 どうやら適当に手加減するつもりのようだ。

 積年の恨みを晴らすなら、もっと苦しめる方法を考えても不思議はないんじゃないの?


「我々よりも恨みが募る相手に引き渡す」


 レオーネの言葉に納得させられた。


「我々は道具にされてしまったが、まだ生きているからな」


 身内を殺された相手こそ復讐を成し遂げるべきってことか。

 となると、本気で殴る訳にはいかなくなるのも道理というもの。

 けどなぁ……

 やっぱり本気で殴ってこそ恨みを晴らせるんじゃないの?

 死にそうになったら治癒魔法をかければいいんだし。

 俺が治癒魔法を使うから思う存分殴るよう提案したらお願いされた。

 やっぱ、そうこなくっちゃね。

 試しに下っ端くさいのから転送してきてやってみる。

 最初は状況を把握できずにキョロキョロと視線を動かしていた。

 理力魔法で体の自由は奪ってるから、それくらいしかできないんだよね。

 頭の方が追いついてきた途端にギャーギャー騒ぎ出す。


「何をしている、こいつらを殺せっ!!」


 おいおい、まだレオーネたちが奴隷だと思ってるのかよ。

 もう首輪はないんだぞ。

 首を見りゃ一目瞭然だろうに。

 気付いてないのかねえ。

 それとも現実が受け入れられないのか。


「黙れ、下種野郎!」


 元奴隷の一人がボディブローを決めた。


「げえっ!」


 派手に嘔吐いちゃいるが中身のリバースだけはしない。

 俺が胃の内容物は戻させないようにしてるからね。

 殴った彼が手加減したというのも多少は影響してるかも。

 少なくとも内臓破裂はしていない。


「死なないように調節するから遠慮しなくていいよ」


 俺がそう言ったら彼は首を振った。


「コイツらを殴って満足はしたくないっす」


 ああ、自分は罪人だという意識が残ってるのか。

 そこは俺が口出しするところじゃないな。

 こちらの世界の倫理観を語っても彼らがどう思うかは彼ら次第だし。

 いつか本人たちが己の中で何かしらの決着をつける日が来ることを願うばかりだ。

 たとえ死ぬまで自分を許すことがないのだとしても。

 何かを決意したときにはサポートぐらいはしないといけないな。

 うちの国民になることがほぼ確定しているんだし。

 俺がそんな風に考えている間も下級貴族はボコボコにされていく。

 途中で内臓破裂したときは少しだけ治癒魔法を使った。

 完全に戻してしまうと痛みも引いてしまうからな。

 それじゃあ殴る意味がない。

 そんな訳で最初のうちは「ぎゃっ!」とか「うぎっ!」みたいな悲鳴を上げていた下級貴族だが。


「……………」


 顔が腫れ上がって元の形が分からなくなったあたりで声を発さなくなった。

 最後にレオーネが顔面にストレートを入れて終了。

 それで完全に鼻が潰れてしまったな。

 でも、死んでない。

 これなら行けそうということで今度は一定間隔で流れ作業のように転送魔法で引っ張ってくる。

 どいつもこいつも似たようなことしか言わないね。


「奴隷の分際で何をしている!」


 だから奴隷じゃないって。


「そんなに悪夢が見たいのか!」


 首輪が無くなった今は、そんな効果が発揮されるはずないだろ?

 俺が光魔法でバフってるからフラッシュバックもしづらくなってるし。

 定期的に治療していけば回復も見込めるはずだ。


「お前たちはワシらの言うことだけ聞いていればいいんだ!」


 もともと聞く必要も義理もない。

 恐怖に屈服させられていただけなんだ。

 元凶が消えたなら誰も従いはしない。

 なのにコレである。

 何なのかね、この思い込みの激しさは。

 しかも、ほとんどの輩がこんな感じである。

 誰もが同じようなことを言って俺たちを殺せと命令するだけ。

 マジで首輪が消えたことに気付いていないみたいだ。

 あるということが当たり前すぎて首輪の有無は気にしていないのかもな。

 そうとしか思えないんだが。

 中には首輪が消えていることに気付くのもいたけど。


「バ、バカな!?」


 そう言ったきり絶句するしかできない奴。


「あり得ん! 何かの間違いだ!」


 現実を受け入れられない奴。

 こいつらの常識からすれば首輪を外すのは不可能なんだろうがな。

 お生憎様、とばかりに俺は心の中で舌を出していた。

 観察力があっても受け入れる度量がないなら気付いてないのと同じである。

 多少はマシという程度で、言うなればドングリの背比べ。

 この連中はそんな可愛いものではないがな。

 なんにせよ最後まで潔い奴は出てこなかった。

 むしろ上級貴族の方が見苦しかったのは何故だろう。


「金なら幾らでも出すぞ!」


 それ、他所から強奪してきた金だろ。

 もしくは絞りに絞った税金だよな。

 反吐が出る気持ちを通り越すと呆れることしかできないらしい。

 思わず「何言ってんだコイツ?」とツバキに聞いてしまったくらいだから。

 聞かれた方も困惑するしかできないんだけどね。

 首を捻って「さて、私には理解不能だ」と返されたのは至極当然のことだと思う。


「命だけは! 命だけはぁ─────っ!!」


 こういう典型的な奴もいた。

 俺らに命乞いしても意味ないぞ。

 決めるのは、この場にいない人達になるだろうからな。

 どう考えても極刑を免れることはできないがね。

 ああ、でも誰に引き渡すかが問題だな。

 どうしたものかと考えてみたけど、権利関係が複雑すぎてどうしようもない。

 周辺7カ国すべてが被害者だもんな。

 あとは散々痛めつけられてきた自国民もか。

 彼等には畏怖と憎悪の象徴であった王子を残すかね。

 国としての責任を取らせるのは他の王族で充分だろうし。

 そういや、この王子も見苦しい奴の典型だったな。


「俺はこの国の次期国王であるぞぉ!」


 いや、もう王子ですらないよ。

 この国は俺が占領したから。

 現に脳内でレーヌ儀を表示させてみたけど国名が空欄になっていた。

 バーグラー王国は無くなりましたとさ。


「無礼者どもがっ!」


 既に何発も殴られた状態で傲慢な態度を崩さない。

 命乞いなんてしないもんね。


「跪けっ、豚ども!」


 ある意味スゲえわ。

 コイツの頭の中身はどうなっているんだろうと思ったよ。

 でも、あることを思い出したら妙に納得させられた。

 日本の国民的なアニメの登場人物。

 自分は歌が上手いと思い込んでいるガキ大将な少年だ。

 外見を含め似ても似つかない部分が多いものの完全に一致するものもある。

 少年の代名詞とも言える考え方。

 俺のものは俺のもの、他人のものも俺のもの。

 この思想がコイツに染みついているなら、この態度も頷ける。

 これは死んでも治らんね。

 後日、コイツは石を嫌と言うほど投げつけられた挙げ句に火あぶりで死ぬことになる。

 そんなどうしようもない状況においても最期まで次期国王を主張するんだけど。

 俺には理解不能だわ。

 あー、でも物語の登場人物で悪役のイケメンだったなら人気は出たかもね。

 死ぬまで悪の美学を貫き通したってことでさ。

 これは物語の出来事じゃない上に人徳のないブサメンだから人気なんて欠片もなかったけどね。

 国民たちを震え上がらせるほど狂信的だっただけだ。

 普通なら精神疾患を疑うところなんだが、そういう状態異常はなかったし。

 さすがは国民にもっとも被害を負わせた輩である。

 王より苛烈でアグレッシブに悪事に勤しむ王子ってどうなんだろうな。

 別に王が弱腰だとかじゃないんだぜ。

 やることやってるんだ。


「貴様ら! ワシは国王だぞ!!」


 親子そろって似たような台詞である。

 数発殴ったら違いは出てきたけど。


「やめぬか……」


 言葉遣いはともかく覇気がない。

 更に殴ると──


「や、やめてくれえっ」


 泣きながら懇願する始末だ。

 元奴隷組も、その情けない姿を目にして呆れてたよ。

 最後の言葉が「何でもするからぁ───……」であった。

 幼児かよってくらい号泣しながらってのがね。

 なんとも言えない情けない気分にさせられたみたい。

 見学するだけの俺らが辟易させられたんだ。

 察するに余りあるとしか言えないだろ。


「俺たちは、こんなのに道具にされていたのかっ!」


 元奴隷の1人が言った言葉が、他の皆の気持ちを代弁していた。

 情けなくも腹立たしい。

 彼等の意趣返しは、そんな気持ちを抱いた形で幕を閉じた。

 掛けるべき言葉が見つからない。

 無理に慰めてもダメだというのだけは分かる。

 切り落とされた腕や足は戻ったが、それでも失ったものは戻らない。

 時間や親しい人など人それぞれだろう。

 それらを喪失したことで湧き上がる感情に同調するなど安易にできるものではない。

 同じ体験をしなければ共感することは許されないと思う。

 だから俺はすぐには声を掛けない。

 高ぶった感情を少し鎮めるくらいの時間は待つさ。

 こちらにも都合があるから完全に落ち着くまでは待てないかもだけど。

 その間に王子以外の連中の引き渡しをどうするか、考えるとしよう。

 この振り分けが面倒極まりない。

 どう工夫しても分配が上手くいかないんだよ。

 まさか体重で割り振るわけにもいかんし。

 王族にも継承権で順位があるし、貴族も爵位で上下関係ができる。

 それだけなら数値化して計算する手が使えたと思う。

 全員は無理でも過半数を納得させることはできたかもね。

 だけど、コイツらがやらかしたことを加味すると話は変わってくる。

 誰が何をしたかなんて証拠はないからな。

 噂から罪状を割り振るわけにもいかないだろう。

 同じ爵位でもやってることがバラバラで不明となれば数値化して計算するなど不可能である。

 俺は鑑定結果から算出できるけど、それを証拠とすることなどできるはずもない。

 証拠もなく「コイツの罪はこれくらいです」と言われて納得する者はいないと思う。

 被害者からすれば、自分が一番ひどい目にあっていると主張するだろうし。

 罪人共に請求する権利を誰よりも多く求めるはず。

 人死にが出ているなら、なおのことだ。

 憎むべき対象者がいるなら恨みが尽きはしないってことだな。

 各個人を相手に話をまとめようとすると絶対に終わらないだろうね。

 それ故、国単位で考える。

 それでも下から突き上げがあるから要求はハードだ。

 今回のケースだと、どの国も国王をまず要求してくるだろう。

 一歩も引かないのは目に見えている。

 下手すりゃ暴動になりかねないからな。

 それを回避するために各国が自国の主張を通そうとする訳だ。

 結果として戦争になることも考えられる。

 いくらなんでもそれはないと思いたい。

 が、それだけ恨みを買っている国だからないと断言もできない。

 色々なパターンでシミュレーションしてみたけど、ダメだ。

 どう分配しても揉めない状況というものが存在しない。

 少し甘めの条件に設定しても、である。

 ムカついたからこの国ぶっ壊しに来たけど最悪だ。

 思いつきで動くと碌なことがない。

 後始末が超面倒くさいのなんの。

 あー、やめやめ。

 考えてもダメだっていうなら分配はなしだ。

 え? どうするつもりかって?

 丸投げですよ。

 俺が元いた世界の管理神エリーゼ様を見習うことにするさ。


読んでくれてありがとう。

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