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248 ハルト詰め寄られる

修正しました。

ツバキの真の姿 → シヅカの~


修正しました。

リーシャー → リーシャ


 皆に詰め寄られましたよ。

 あっと言う間に取り囲まれてしまった。

 俺が皆の待つ場所に転送魔法で戻ったとたんにね。


「主よ、これは一体どういうことなのじゃ!?」


 口火を切ったのはシヅカである。

 ちょっと予想外。

 俺としては真っ先に来るのはアニスかレイナだと思ってたんだよね。

 シヅカは本来の姿じゃないから進化後の変化がもっとも乏しい方だったんだがなぁ。

 なのに呆れるくらい興奮してて鼻息が荒いんですよ。

 肉食女子が草食男子を押し倒すシチュエーションとか想像してしまったさ。

 まあ、そんなくだらないことを考えられたのも一瞬だったけどね。

 ドアップで迫ってくるんだもん。

 お陰で進化に気付いたのかと思って冷や冷やしたじゃないか。

 もっとも、気付いたのならこんな聞き方はしない。

 なぜ進化したのかを聞いてくるはずだ。

 恐らくだが龍の姿の方に大きな変化があって、それを本能的に感知したのだろう。

 この慌てっぷりだと大きな変化をかなり正確に把握していると見るべきだな。

 ただし、進化したことには気付いていないと。

 焦らせてくれるぜ、まったく。


「せやせや、どないなってんねん!?」


 そして出遅れて2番手となってしまったアニスである。

 シヅカに負けず劣らず興奮した状態で顔を近づけてくる。

 あー、今の状況って二股がバレて弁解を迫られているっぽく見えない?


「そうよ!

 なんなのよ、これ!?」


 レイナも負けてないな。

 三股だったりして、ハハハ。

 そもそも、こっちの世界は何人と付き合おうがノープロブレムだ。

 地球と違って魔物とかいるせいで男の生存率が低いからな。

 必然的に女の方が多くなるから、一人の男に女が何人も集まるわけだ。

 それが世間の常識になっている。

 男からすれば夢のような環境のように思えるかもだが、世の中は残酷である。

 貧弱な非モテはこちらの世界でもリア充にはなれないのだ。

 強者であるならブサメンでもリア充になれる可能性がある点は向こうとは違うかな。

 魔物と戦って生き残れるかどうかは女性サイドの判断基準でも上位に入るわけだ。

 イケメンでも惰弱であれば見向きもされないことがあるくらいだからな。

 貴族や金持ちは例外となるけど、それは当然だろう。

 自分が強くなくても権力や金の力で強い連中を集めて守らせることができるからな。

 そんな訳で異世界でもハーレムを目指すのはなかなか困難なのである。

 出生率が高いせいで子供は多いけどな。

 簡単に死ぬからガンガン増やそうって発想なんだろう。

 現代日本に魔物を放てば出生率が上がるかな。

 死亡率も同時に上がるから意味ないか。

 ……現実逃避して他のことを考えている場合じゃないぞ。

 まだまだ右からも左からも押し寄せてくるからな。


「左様。説明を求む」


 ルーリアも興奮を隠しきれていない様子。

 普段はクールな感じなんだが、さすがに現状は理解不能で混乱しているようだ。


「ハルトよ、ワシも聞きたい」


「ワシも王と同じだ」


 ガンフォールとハマーも前のめりで迫ってくる。

 女性陣の迫力に負けて彼女らの後ろから声を掛けてくる感じではあるが。

 まあ、着ている服に余裕がないくらい体が大きくなれば慌てもするか。

 元々だぶついた服だったのに、今はぴちぴちに近いからね。

 控えているボルトにしたってガンフォールたちの言葉に合わせて激しく頷いているし。


「自分もどういうことなのか聞きたいです」


 普段、あまり自己主張しないハリーまでもがこの調子だ。

 わざわざ着ぐるみを脱がなくても中で自分の状態を確認できるからなぁ。

 操縦方法を変更して将来的に有人ロボットをつくるときのデータ取りをしている最中だから。

 そのせいで中の空間を拡張する改造を施したから、内部空間にはかなり余裕がある。

 必然的に自分の目で確認できてしまうわけだ。

 だからハリーが焦ったり興奮したりするのも無理のないことなのである。


「そうだな。私も知りたい」


 ツバキだって何も言わないわけはない。


「「ハルト様、教えて~」」


「教えてほしいですー」


 双子とダニエラからは泡を食っているような空気が感じられなかったけど。

 それなりには驚いたり焦ったりはしているようだ。


「私も妹たちと同じです」


 まあ、リーシャもそう言うだろうね。

 前のめりになっている面々と比べれば落ち着いてはいるけれど。

 月影のメンバーで何も言ってこないのはノエルだけだ。

 ちゃっかり俺の横を陣取ってはいるがね。

 この状況下ではシヅカの次にステータスが高くなってしまったからなぁ。

 ローズは霊体モードに戻って出てこられないし。

 さすがというか見事というか自分の定位置だと言わんばかりに俺に引っ付いている。

 桃髪天使さんなので俺も嬉しいんだが、ひとつ問題ができた。

 今回成長してしまったことで妹成分が薄れてきてるんだよ。

 ふとした拍子に大人びた雰囲気を感じるというか何というか。

 ロリコンではない俺だが懐いてくるノエルを見ると、ドキドキしそうになる。

 未成年相手に何を焦っているのだろう。

 いや、そんなことより皆の顔が近いんですがね。

 女性陣ばかりなので助かっているが、別の意味では助かっていない。

 みんな美形度が増して大人の雰囲気も出てるから心拍数が跳ね上がりそうな状況だ。

 色々と当たってるし。

 抗議されてて面倒事になっているはずなのに心の中は天国ってどういう状況?

 自分も男だったんだなと図らずも思い知らされてしまった。

 そんな訳で心拍数を意識してコントロールしているのが現状である。

 まあ、この状況を放置するわけにはいかんので状況を整理しよう。

 囲んでいるのは身内の女の子たちだな。

 やや離れてジェダイト組や俺が連れて来た面々。

 俺を中心にして歪な輪を形成している感じか。

 外側は内側より捲し立てる度合いが少ないというか多少は冷静なようだ。

 エリスなんて何も言ってこなかったし。

 ただし、目で語ってきている。

 説明を求むと。

 内側の一同よりはプレッシャーが少ない。

 一応は空気を読んで説明しやすい状況をと考えてはくれたようだ。

 意志の強そうな視線を見る限り、逃げることは許されそうにないけどね。

 一方でクリス姫は「あら~、大変ですねえ」とか言いつつ笑みを浮かべて傍観している。

 お、大物だな。

 この状況でありながらマイペースを崩していない。

 ノエルに匹敵するな。

 しかも、こちらは不思議系天然ちゃんの雰囲気を漂わせている。

 こんなのは彼女だけだろう。

 現にマリア女史は顔を引きつらせながら何か言いたげだ。

 クリス姫の脇に控えて耐える様子を見せているけどな。

 心境的には何か言わずにいられないんだろう。

 けれども自分の主が何も言わないので黙っているといったところか。

 差し出がましい真似はできないと思っているのかね。

 別に公式な場じゃないんだから、もっと自由にしていいんじゃないの?

 そういうのをとやかく言うようなお姫様でもないだろうに。

 まあ、俺が気にしてもしょうがない。

 そして歪な円から間を置いて取り囲むようにしている集団。

 元奴隷組だ。

 彼等も何か言いたそうな空気を醸し出していた。

 レオーネやブルースも同様だな。

 ただ、先に説明を求めた面々の剣幕に負けたというか引かされた感じになっている。

 俺を囲む輪っかから些か距離があるのはそのためなんだろう。


「あー、説明はするが今すぐって訳にはいかないな」


 とりあえず先延ばしにしておくことにした。


「えー、なんでやの?」


 アニスなどは口を尖らせて抗議してくる。


「そうよそうよ」


 責め立てるトーンではなくなったがレイナも乗ってきた。


「犯人が捕まっていない」


「「「「「ええ────────っ!」」」」」


 そこかしこから驚きの声が上がっていた。

 身内はもちろん、元奴隷組からもだ。

 彼等の反応は分からなくはない。

 皆は俺の仕業だと思っていたんだし。


「言っておくが俺も被害者だぞ」


 この発言に誰も声を発することができなかった。

 が、誰も彼もが大きく目を見開いている。

 驚愕の度合いは犯人が捕まっていないと言った時より激しいことを物語っていた。


「それって、どんな奴なのよ!?」


 ようやくレイナが口を開いたかと思ったら半ギレしてますよ?

 チラリとそちらを見て納得した。

 俺を手玉に取るような相手がいることが信じられないと顔に書いてあったからだ。

 漠然とした恐怖感があるんだろう。

 尻尾を膨らませ怒っているように見えるが、顔から血の気が失せ頬も引きつらせている。

 それこそ恐怖を感じているなりよりの証拠だね。

 だけど、俺とルディア様の会話をローズの中継で聞いていたんじゃなかったっけ?

 少なくとも途中までは聞いていたはずだ。

 シヅカは危うく騙されるところだったと念話で報告してきたからな。

 だったらイタズラの元凶が誰かは分かるはずなんだが。

 と思ったらルーリアがレイナの肩に手を置いた。

 振り返ったレイナの目を見て頭を振るルーリア。

 そのまま沈黙の時間がしばし続いた。

 レイナの表情が徐々に驚愕のそれに変わっていく。

 念話を使っているようだな。


「そこまでする……?」


 ようやく口を開いたレイナの一言は事実を受け止めきれていない様子がうかがえた。


「どういうことやねん?」


 それを見たアニスが首を捻っている。

 本気で想像がつかないようだ。

 これはもしかすると……


『ひとつ聞きたいんだが』


 うちの国民だけに聞こえるよう念話を送る。


『俺に国民を押しつける程度でイタズラが終わると思ってないだろうな?』


 返事はない。

 ないが、何人かはギョッとして俺を見てきた。

 周囲の者には変に思われたかもだが、まだ誤魔化せる範疇だろう。

 レイナは一瞬だがウンザリしたような表情を見せた。

 ルーリアの話に裏付けが取れたというところか。

 当のルーリアは「やっぱり」と言いたげに見える。

 同じような表情はシヅカもだ。

 誰の仕業か最初から分かっているツバキとハリーは「諦めてます」と顔に書いてあった。

 あと無反応なのはノエル。

 対して月狼の友のほとんどのメンバーは二重三重のトラップだとは思わなかったようだ。

 ラソル様のイタズラは俺が軽く裏をかかれて終わりだったのだろうと。

 軽くと言っても彼女らにしてみれば重く感じたみたい。

 俺に国民を押しつける行為はイタズラレベルだとは思えなかったのかもね。

 更に彼女らが現状で直面しているような事件までも画策していたとは想像がつかなかったと。

 亜神の存在は知っていてもラソル様の本性を知らんからな。

 会ったこともないんじゃ無理もないか。


「俺も踊らされたということだ」


 アニスの疑問に答えるような口振りでフォローしておく。


「俺が魔法を使えば、その結果がもたらされるよう仕組まれていた」


 絶句と驚愕が同時に場を支配した。


「皆には済まないと思っている」


 深々と頭を下げた。

 本来ならば土下座ものだろうがな。

 俺も道具にされたのだから、それは回避したけど。

 もしやっていたら物言いがついたかもしれないというのもある。

 エリスかガンフォールあたりからね。

 一国の王が軽々しくそういう真似をするものではないとか言ってさ。


「い、いや、主は悪くない。

 あまりにも相手が悪すぎる」


 ツバキが慌てた様子でフォローしてきた。


「自分も同感です。

 あの方が動いた結果だとすると誰も文句は言えません」


 ハリーが追随した。


「そんなに質の悪い相手なのか?」


 青い顔をしながらガンフォールが聞いてきた。

 シヅカの真の姿も見ているし、あれ以上を想像しているか。

 具体的には何も出てこないとしてもな。

 まさか亜神だとは夢にも思わないだろうし。

 そうなると俺が対抗できるのかとか被害とかのことも考えてしまうか。

 人の上に立つ人間は、まずそこを考えそうだ。


「心配しなくても誰かが怪我をするとかそういうのだけはないよ」


 そういう被害だけはな。

 ストレスは半端なくのしかかってくるのだが。

 若干、疑わしげな目を向けられてしまった。

 結局は溜め息ひとつで押し流してくれたようだけど。


「細かいことは後で説明する。

 犯人も捕まえるよう手は打った。

 処罰の依頼も出しているから、しばらくは静かになるはずだ」


 ツバキとハリーが何か言いたげな目をして顔を見合わせていた。

 たぶん取っ捕まってお仕置きされるときの状況を想像しているんだと思う。

 ルディア様がお仕置きスタイルで降臨されたときは大変だったよなぁ。

 ああ、今回もあれに近い状態で降臨されるんじゃなかろうかと怯えているのか。

 君らに害はないだろうに。

 でも、新入りの連中は土下座しちゃうか。

 あり得る……ね。

 ルディア様にメールしておくか。


読んでくれてありがとう。

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