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237 奴隷解放したら睨まれた

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


新作「切り札は俺にしか見えないっ!」も連載開始しました。

こちらも合わせてよろしくお願いします。


 俺が皆殺しに来たとか、はなはだしく勘違いされていますよ?


「そんなこと微塵も考えてないっての」


 思わずツッコミ入れてしまったわ。

 ちょっとオーバーキルっぽいことをしただけじゃないか。


「「「「「なっ、なんだって────────!?」」」」」


 全員でハモってくれるとか、どうやって誤解を解いたらいいのか途方に暮れますな。


「違うに決まってるだろ」


 俺には大量虐殺で恍惚とするような趣味はないのに否定しただけで、そろって怪訝な顔をするし。


「俺はこの国をぶっ壊しに来ただけだ……って、おい!」


 そこはフンフンと頷くところではないだろう。

 謁見の間で派手にやるところを幻影魔法で見せたが、あの程度で国をどうこうできると思うのはどうなんだ?


「我々は罪人だ」


 レオーネが重苦しい雰囲気を漂わせて口を開いた。


「略奪に人殺しにと数え切れないほど加担してきたからな」


 周囲の者達も同意するように重苦しく頷いている。


「俺たちはアンタやアンタの仲間になら殺されてもいいと思ってるんだ」


 レオーネの言葉を継ぐように左の膝から下が義足の男が衝撃的なことを言ってくれましたよ。

 勘弁してくれ。

 自ら進んで処刑されたがるとか想定外もいいとこだ。

 こっちは殺す気なんてさらさらないぞ。

 どうしたものかと考えていたら他の奴隷たちも口々にそれぞれの思いを語り始めた。


「この国の連中に殺されるなんて真っ平だが、アンタなら納得できる」


「カス共を始末してくれたしな」


「喜んで罪を償うさ」


「今日ここに来ていない連中の死ぬところを見られないのは残念だがな」


 みんなやけにいい笑顔をしている。

 この国での奴隷生活は俺の想像など及びもつかない生き地獄であったのだろう。

 故に外の人間が彼等の心中を察することなどできはすまい。


 だからムカつく。心底ムカつく。

 笑って死を覚悟させてしまう境遇など糞っくらえだ。


「お前たち、この国の貴族連中を断罪したいか」


 誰もすぐには答えられなかった。

 言葉に俺の怒りがにじんでいたようだ。

 殺気だけはどうにか放たないように我慢したものの、それでも迫力はあったらしく気押され金縛りにあったように動けないでいる。


 ゆっくりした呼吸を意識して徐々に落ち着いていく。

 俺の中にあった荒ぶるものが静まり始めると義足のオッサンが深く息を吐き出した。

 よく見れば何処かの潜入ミッションが得意なオッサンにそっくりだな、この男。

 眼帯はしてないし義手じゃなくて義足だが。


「……できるもんならな」


 ナンバー2的な立場らしいオッサンは静かに断言した。


「だが、俺たちには無理だ」


 自嘲するかのように苦笑している。


「この首輪がある限り二度と自由になどなれんからな」


「そうでもないぞ」


「なにっ!?」


「お前たちの願いを叶えてやると言ったはずだが?」


「そんなこと、できる訳が──」


「ないってのはお前らの思い込みだ」


 まずはデモンストレーションで証明してみせるか。


「そこの死体を見てみろ」


 俺の掌底をくらって血の海に沈んでいるクズ剣士を指差す。

 皆がそちらに視線を向けたところで、そのままパチンと指を弾くと首輪が淡く発光した。

 毎度お馴染みの光魔法による演出なので見る者に与える心理的影響ってやつ意外の効果はないのだが。


「「「「「おおっ!」」」」」


 半数以上の奴隷たちが驚きの声を発していた。

 他の面々も信じられないものを見る目をしている。


 光が消えていき──


 パキン


 静まりかえった広い空間に響き渡る乾いた音。

 直後、クズに装着されていた首輪が真っ二つに割れた。


 奴隷たちが驚愕の表情で固まる。

 物理的に首輪を破壊すれば爆発する仕掛けが発動しなかったからだろう。

 首輪が血塗れの床の上に落ち、そして砕け散った。


「な、何をした……!?」


 義足のオッサンが呻くように聞いてきた。


「賢者の俺にかかれば魔道具の術式を封じて破壊するくらいは朝飯前だ」


 全員、首輪のなくなった死体と俺とを交互に見て絶句する。


「信じられないか? こういうこともできるぞ」


 パチン!


 再びフィンガースナップをすればクズ共が血の一滴も残さずに消滅した。


「「「「「なっ!?」」」」」


 驚きの連続で誰も彼もが茫然自失といった有様だ。

 この機を逃すのはもったいない。


 パチン!


 どさくさに紛れて全員の首輪を破壊する。

 そこかしこで首輪が光って割れ、そして落下した。

 床に落ちた衝撃で砕けた後はゴミなので分解の魔法で消し去る。


 何人かは泣いていたが誰も喜ばない。

 罪の意識が自由になった喜びを縛り付けているのだろう。


 そんな中でレオーネがわなわなと震えていた。

 俺を睨みつけ怒りの表情をあらわにしている。


「何故だっ!?」


 レオーネが吠えた。


「罪人は罪人らしく奴隷のまま死んだ方が世の中のためとか言いたいのか」


「そうだ!」


 面倒くさい奴だなぁ。

 不真面目な奴がいいとは言わないが生真面目すぎるのもどうなんだろうね。


「死にたきゃ勝手に自害しろ」


「なんだと」


「俺は死にたがりの自殺に手を貸すつもりはない」


 レオーネが殺気垂れ流しで睨みつけてくる。


「お前、何か勘違いしてないか?」


「どういう意味だ」


 問答無用で喧嘩をふっかけるような真似はしないか。


「俺にはお前たちを殺す理由がない」


「なに!?」


「確かにクズどもは断罪しに来たが、それも理由があってのことだ」


 思い当たる節がないせいかレオーネの表情が怪訝なものになる。


「こっちの都合だよ。クズどもを始末できれば後は知ったことじゃない」


「私が重ねてきた罪は奴らと同じだ」


 我々と言わないのは一人で罪を背負うつもりだからか。


「お前はアホか」


「なっ!?」


 まさかの言葉だったのだろう。

 怒りの感情を一時どこかに忘れてきたかのようにレオーネが動揺していた。


「周りを見てみろ。お前だけが罪を被るなど誰も納得するものか」


 奴隷仲間たちが俺の言葉に同意して頷いていた。


「酷えっすよ、姐さん」


「俺たちだって同罪じゃないか」


「この中で罪を犯していない奴なんていないぜ」


「「「「「そうだそうだ!」」」」」


「俺たちは姐さんが助けてくれたから生きていられるんだ」


「しかしな……」


 仲間たちの意見にレオーネは反論できないでいる。


「姐さんが死ぬってんなら俺たちも死ぬぜ」


「覚悟はできてる」


「どうせ拾われた命だ。惜しくはねえよな、みんな!」


 ひとりの呼びかけに全員が口々に同意していた。


「だ、ダメだ。お前たちは死んじゃいけない」


「そう思うんなら、死ぬのは止めな」


 俺の言葉にレオーネが苦々しげな視線を向けてきた。


「簡単に言うな! どれだけ罪深いことをしてきたか知らないから、そんなことが言えるんだ」


「ああ、その通りだな」


「なに!?」


 俺が反論してくるとでも思ったのだろう。

 レオーネは戸惑いを見せていた。


「だが、逃げるのか?」


「なんだと!?」


 更に戸惑いを深くするレオーネを見て、ここが勝負所だと確信した。


「死んだら終わり。つまり罪から逃げる訳だ」


「なっ……」


 レオーネが目に見えて動揺する。


「罪は生きてこそ償えるものだと俺は思うがな」


「そ、それは……」


 俺が言い切るとレオーネは反論できなくなった。


読んでくれてありがとう。

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