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234 因果応報

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


「「「「っ!」」」」


 俺が軽く殺気を放つと攻撃が激しさを増した。

 フォーメーションを崩すことこそしないが掛け声もなしで滅多矢鱈に突いてくる。

 無茶苦茶やっているだけなんだが先程よりもマシになったのが皮肉だ。


 まあ、マシという程度なんだが。

 スルリクルリと回りつつ重心を移動させることですり抜ける。


「「「「バカな!?」」」」


 驚愕の叫び声を上げるクズども。

 俺が逆にバカかと問いたいんだが?

 突きなんて点の攻撃だっていうのに、それしか知らぬと言わんばかりの攻撃しかしてこないじゃないか。

 しかも殺気にビビったのか連撃してこないし、及び腰になったせいで上半身しか狙ってこないとくれば、アクビが出るくらい温い。


 そもそも旋風の陣とやらが間合いを取りすぎているせいで穴だらけなのだ。

 踏み込めない分どうしても一撃が軽くなる上、スピード重視のステップがそれを助長している。

 せめて刺突専用の剣を使っていれば多少は違ったのだろうがな。


 引導を渡すべく攻撃に切り替えようと思ったところで──


「網に切り替える」


 クズ剣士の一人が指示を出した。

 踊るようなステップが止まり剣の歩法に切り替わった。

 ジワジワと包囲網を狭めてくる。

 斬撃の間合いから半歩外のところで周回の輪が固定された。


 対応が遅いね。

 すでに連中の息が上がり始めている。

 ここから先の攻撃にキレの良さなど望むべくもない。


「行くぞ!」


「「「おう!」」」


 いまだ気合いは充分の攻撃が始まった。

 連中にしてみれば怒濤のごとき勢いなんだろうが消耗しているのが、ありありとわかる。

 連携も何もあったものではなく闇雲に剣を振るっているだけだ。


「へえ」


 それが絶え間のない攻撃となり偶発的に達人が連携したような攻撃になっていた。

 無心というのはスゴいものだ。

 歩法だけで当たらずに中心に居続けることは難しくなってきた。

 スピードを上げれば話は別だが、コイツら相手に本気になったようで癪だ。


「ならば」


 隙間がないなら押し広げればいいまでのこと。

 剣の腹を掌や脚を使って払い除けながら躱していく。


「お、おい……」


「バカな」


「あれでも当たらないだと!?」


 外野が騒がしくなってきた。

 ずっと回避し続けてて暇だったから首輪の悪夢を見せる部分に対抗する魔法を使ってみたんだけど思った以上に効果が出ているな。


 この首輪は威力を重視しすぎで制御系の術式が甘い。

 一般の光魔法使いじゃ対抗できなくてもノエルたちなら余裕だろう。

 加減を間違えて破壊してしまう恐れもある。

 それだと装着者の首を傷つけかねないので今は保留だ。


「いや、当たってるんじゃないか?」


 ギリギリでかわしているからそう見えるかもな。


「血が出ていない」


 当たっていないからな。

 それに普通の剣で俺は斬れないよ。

 ツバキが作った服も同様だ。


「当たってないのか」


 クズ共の攻撃が当たるような雑な仕事はしないさ。


「やっぱり当たっていない」


 離れて見ていると全体を見渡すことはできても至近の攻防はわかりづらいようだ。

 死角になったりもするだろうしな。


 とはいえ何度もかわし続けていると……


「おい、素手で剣をさばいていないか」


 見切ることのできる者も出てくるようになる。


「そのようだ」


「夢じゃないよな」


「あんな神業を見せられりゃ、そう思いたくもなるさ」


 ギャラリーは目がいいな。

 この国の連中によってハンパに壊されているのが、もったいない。

 何とかしたいところだが……


 さて、クズ剣士共のペースが落ちてきたな。

 存外しぶとかったが心を折るには最適のタイミングと言えるだろう。

 そう思った瞬間であった。


「む」


 クズ共の隙間を縫うように何かが飛来した。

 眉間、胸、腹に向けて飛んで来たそれは黒く塗られた五寸釘のようなものだった。

 暗殺用のニードルってところか。

 投げてきたのは出っ歯ネズミである。

 何もしないと思わせておいて俺の気がゆるむ瞬間を虎視眈々と狙っていたな。


 左右からの水平切りは円を描く腕の動きで払い除け。

 前後からの袈裟切りは爪先を軸にクルリと回って縫うようにかわす。

 その際に軸線をずらせば飛来したニードルなど飛んでこなかったも同然となる。


 ニードルは背後にいたクズ剣士に当たりそうになっていたが知ったことではない。

 ただ、そいつが泡を食って転びそうになりながら回避していたのは見逃せない事実だ。


 鑑定するまでもなく致死性の猛毒だろう。

 出っ歯ネズミは仲間など捨て石同然に思っているのが、これで明らかとなった。


「ちっ」


 出っ歯ネズミが舌打ちしながらも次を用意している。

 ならば、それを利用させてもらおう。


 再びクズ剣士どもの攻撃が始まった。

 それをさばきながら待っていると俺が出っ歯ネズミに背を向けた直後にニードルを投げつけてきた。


「それを待っていたよ」


 振り返りざまに飛んで来たニードルの側面を両手で払って軌道を変え、残りのニードルは膝で尻を叩いて加速させた。

 左右にいた奴らは軌道が変わったことに泡を食ってニードルを眉間と胸に食らう。

 俺が振り向いたことで背を向ける格好になった奴には加速したニードルが牙をむく。

 もちろん深々と腹に刺さっている。


 残りのクズは攻撃のタイミングが少し違ったため今頃になって次のモーションに入っていた。

 袈裟切りを軸線をずらしながら軽く沈み込んで剣の軌道から外れる。

 空振りでフラつきかけるも、どうにか踏ん張って逆袈裟を振るってきた。


「遅い」


 踏み込みながらスルリと反転し、クズ剣士と横並びになりかけたところで奴の腕の下を潜り抜けた。

 同時に軸足を払いながらクズの右上腕をカチ上げる。


「がっ!」


 肩関節が外れ体が完全に浮いて無防備となった脇腹へ回転の勢いを乗せた掌底を流すように叩き込む。


 ドッ!


 水面に石を放り込んだ時の波紋のようにクズの体内を掌底の衝撃が伝わっていく。

 有り体に言ってしまえば浸透勁だ。

 奴の内蔵は今の一撃でズタズタになった。

 目とか耳から勢いよく血が吹き出さないよう調整したつもりだったが──


「ごふっ」


 床に倒れ込みながらクズは大量の血を吐き出し絶命した。

 他の3人も即効性の毒により泡を吹いて絶命している。


「どうなってんだ!?」


 ギャラリーの誰かの叫びを皮切りに場が騒然となった。

 あっという間だったからな。

 さすがに見切れなかったのだろう。


 が、その状況すらも利用しようとする輩がいる。

 言うまでもなく出っ歯ネズミだ。


 コソコソと背後に回り込んでニードルを投てきしてくる。

 今度は6本だ。


「通用するわけないだろ、出っ歯野郎」


 振り返り様に手刀で叩き落とすも奴はそれが隙だと言わんばかりにダッシュしてきた。

 背中を丸め低い姿勢で逆手に持った短剣を前へ突き出しながら。

 右手の短剣を囮にして左手のニードルで勝負する腹づもりなのが見え見えだ。

 半身になって左手を上手く隠したつもりなんだろうがバレバレである。


 ああ、まともに相手をする気が失せた。

 こんなセコい手に頼るようじゃコイツの【短剣術】も見る価値などないな。

 俺は隠し持っていたニードルを奴の眉間に向けて投げつけた。


「終わりだ」


 自分の武器がいくつ叩き落とされたのかくらい把握しておいた方がいいぜ。


読んでくれてありがとう。

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