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216 巨人兵がいるらしい

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


 俺から手渡された2個の指輪を見ながら困惑の表情を浮かべるマリア女史。


「知り得た事実を公表することは許さないってことだ」


 それで何かの魔道具だと悟ったのか一気に顔色が悪くなった。


「死なせはしないが、この国にいられなくなるぐらいは覚悟してもらおう」


 時代劇で言うところの所払いだな。


「今ここで聞いた話を誰にも伝えなければ何も問題はない」


「絶対に誰にも言いません!」


 必死な感じで詰め寄るように宣言するマリア。


「世の中に絶対などありはしないさ」


 あっさり俺に切り返されると、悔しげな表情をのぞかせはしたが萎れるように引いていく。

 子供のように自分の考えを押し通さないところを見ると世間知らずのお嬢さんではないのだろう。


「そこで、その指輪だ」


 己の掌の中にある指輪を見つめるマリア女史。


「呪いの魔道具ですか?」


 発想が極端だな。心外である。

 隠蔽の術式を刻んでいるだけだ。


「そんな訳あるか。しばらく他人から認識されなくなるだけの代物だ」


「どうしてこんなものを?」


「お嬢ちゃんと離ればなれになるのは嫌なんだろ。だったら、ここに連れてこい」


「なっ……」


 秘密を共有すれば所払いになっても一緒にいられることは理解しただろう。

 なぜ認識阻害の指輪を使わせるのかも察したはず。


「タイムリミットはお嬢ちゃんが就寝するまでだ」


 王女のことになるとダメダメになってしまうマリアに余裕など与えない。

 こういうのは熟考するより心が望む行動をした方が後悔しなくて済むってものだ。


「わかりました」


 返事をしたマリアは刹那の時すら無駄にできぬとばかりに慌ただしく部屋を出て行った。


「さて、エリスはどうする?」


 マリア女史がいなくなったところで声を掛けた。


「前に弟子になりたいと言ったな」


「はい」


「うちの国民でない者を弟子にするつもりはないぞ」


 前に外国人でも弟子にできるとガンフォールに話した言葉を違えるつもりはないが、ウソも方便というやつだ。


 退路を断つような誘い方だが色々と加味してのことである。

 クラウド王たちとのやり取りをじかに見てエリスが王族に戻れないと確信した。

 家族の情がゼロじゃないのは感じられたものの大国の王家としては公の態度を優先させなきゃならないのだろう。

 結果として妹とは会う機会が皆無に等しいものとなる。

 それを覆そうというのが俺の最終目標だ。


「妹はお誘いにならないのですか」


「それをすると親か実の姉かという二者択一になるぞ」


「マリアに言ったことと矛盾するのではありませんか」


 国には残れない前提で行動させたにもかかわらず選択肢が残っているような言い様が引っ掛かったのだろう。


「確かにゲールウエザー王国には残れないが、それだけで強制的にうちの国民にしてしまうのは乱暴だよな」


「それは……」


「何処かの誰かさんのように別人になる未来もあるんじゃないか」


 その誰かさんが返事をできずにいる。

 未知の国に行くか苦難の道を進むかは難しい選択になるからな。

 それも本人ではなく妹が決断すべきことだ。


「あの子が自分の意志で望むことなら止めはしません」


 葛藤はあっただろうが、きっぱりと言い切った。


「エリスはどうするんだ?」


「迎えていただけるのでしたら、お受けしようと思います」


「移動が制限されてもか」


「どういうことでしょう」


「ミズホ国は大山脈の遙か向こうの島国だ」


「そんなに遠いのですか」


「輸送機の全速力ですら半日はかかるだろうな」


「そんなに……」


 そこまでとは思っていなかったようだな。

 ただ、元から国を捨てたつもりでいたエリスにしてみればハードルは高くなかったらしい。


「構いません」


 表情を変えることなく、あっさりと決断していた。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 なんだかんだと話し込んでいるうちにマリア女史がクリス王女を連れて戻ってきた。


「申し訳ありません」


 マリア女史の第一声がそれなのは、到着と同時に指輪が壊れて欠片も残らなかったからだ。


「壊れるように作ったから心配しなくていい」


 魔道具を使い捨てにするのが信じられないのか言葉もなく驚いているな。


「あのぅ」


 マリアが呆気にとられている間に王女が俺に声を掛けてきた。


「ヒガ陛下が戦争をされると聞いたのですが」


 困惑の表情である。


「私のためという訳でもなさそうですし」


 それを聞いているなら充分だ。


「我が国もバーグラー王国との戦争は避けていることだけは知っておいて欲しいのです」


 国力差を考えれば、それを覆すだけの手札を持っていると見るべきか。


「あの国には巨人兵がいます」


「巨人兵? オーガでも飼い慣らしてるのか?」


「いえ、人の形を模した岩石の巨人です」


 魔道具として作られたゴーレムなんだろう。


「巨人兵1体で大型の魔物に匹敵すると言われています」


「複数いるのか?」


「11体以上と言われていますが、正確なところは……」


「ふーん」


 【諸法の理】スキルで巨人兵を検索してみる。


[巨人兵と呼称されることがある]


 というのが引っかかったが、これは大型人造ゴーレムの項目だな。

 古代のアーティファクトの一種となっている。

 全長は8メートル程度ということなので機動する警察なアニメのアレとほぼ同じくらいの大きさか。

 外観がダサくて類似点は全長だけだが。


 しかもマイクみたいな魔道具を使って音声入力で遠隔操作する時点で機敏には動けないのがわかるし性能はお察しというものだ。

 ただ、ロケットパンチが使えるらしいという点にはロマンを感じてしまった。

 そこだけは胸が熱くなるな。


 まあ、攻撃対象からすると恐怖や脅威でしかないんだろうけど。

 逆に運用側からは魔力効率が悪くて長時間は稼働させられない上に魔力の充填にも時間がかかるという欠点があるのでフル活用されていないようだ。


「それ、きっと大型の人造ゴーレムのことだな」


「御存じなのですか!?」


 驚いたように聞いてくるのはマリアである。


「知識としてはな。堅くて攻撃力があるってだけだ」


「「だけって……」」


 王女とマリアがハモっている。


「戦力的に見てどうですか」


 冷静に聞いてくるエリス。


「鈍くさい的でしかないな」


 ロケットパンチはそこそこ速いみたいだけど月狼の友なら普通に受け止めるだろうし。


「雑魚とか言う以前の問題」


「「なっ」」


 短く驚きの声を上げて絶句してしまう王女とマリア。


「ちゃちゃっと終わらせるさ」


「ちょう待ってえな、ハルトはん。うちらの分ちゃんと残しといてや」


 俺の発言にアニスだけでなく月狼の友の面々が慌てふためいている。

 標的を総取りするとか思われてしまったようだ。


「心配しなくても王城にいる段ボール野郎の始末は任せるつもりだよ」


「アイツ、城にいるの?」


 レイナが勢い込んで聞いてきた。

 斥候型自動人形を使って偵察させているけど、そういう情報が入ってきている。

 聞いただけの特徴で誰だかすぐに言い当てられるくらい段ボール野郎は分かり易い見た目をしているので探すのは楽だ。


「貴族を集めて行われている晩餐会に参加しているな」


「よっし!」


 握り拳を作ってやる気を漲らせている。


「まずは前哨戦から行こうか」


 俺はフィンガースナップでパチンと音を鳴らすと同時に魔法を使った。


読んでくれてありがとう。

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