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211 メイドさんたちが謎の道具について語る

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


 ポンプの設置が完了したら周囲から感心の声と称賛の拍手が降ってきた。

 少し距離を置いて見学していたはずの面々が集まっていたのだ。

 物珍しさに釣られてのことだと思うんだが……


「で、あれは何をしたの?」


「私に聞かないでよ」


 こんな感じのやり取りがいくつも聞こえてきて、なんだかなぁと思ってしまう。

 王族が感嘆の声を上げたからギャラリーと化したメイドたちが釣られて拍手したようだ。


「後でフォルト様に聞けば良いのでは?」


「それもそうね」


 一瞬「誰?」となりかけたが、フォルトとはマリア女史の家名だったな。


「それにしても昼間のように明るいわね」


「凄い魔法だわ」


 どうやら、この魔法のせいで人を集めてしまったようだ。


「宮廷魔導師が?」


「あの人たちに出来るのかしら?」


「あそこにいる賢者様の魔法みたいよ」


「賢者様?」


「禿げをぶっ飛ばした人らしいわ」


「マジ!?」


「マジマジ! 禿げが相手にならなかったもの」


「ウソ!?」


「ホントだって。可愛い顔して凄かったわよ」


「えー、あの男の子が賢者様なのぉ?」


 女子の話は目まぐるしいよな。

 しかも可愛いとか言われてしまいましたよ?

 まあ、ベリルママの因子を前面に押し出す格好で転生してしまっているからなぁ。

 この春でようやく17才になったばかりだから日本じゃ高校生だし。

 可愛いと評されてしまうのも仕方ないのか。

 自分としては可愛いとは思えずギャップを感じてしまうので居心地が悪いのだけど。


 ただ、ポンプの試運転がまだなので逃げ出す訳にはいかない。

 作業に集中することで気にしないようにするとしよう。


「ポンプの設置後は呼び水を入れる」


「呼び水?」


 クラウド王が聞いてきた。


「井戸から水を引き上げるために必要なんだよ」


「それは……」


 渇水対策で井戸を掘るのに水が必要なのかと言いたげだ。


「ツバキ、頼む」


「うむ、心得た」


 ツバキが俺を真似して魔方陣の演出で魔法を使うが、すぐには水を出さない。

 過大な評価をされかねないからな。

 やがて魔法で生成された水がポンプの上部から導水管へと注ぎ込まれていく。


「「「「「わあっ」」」」」


 どよめきが起きた。

 メイドたちがキャーキャー言ってるし、貴族や騎士たちは唖然としている。

 それなりに加減してバケツ何杯分かしか出ていないはずの水を出しただけでも驚かれるのか。


「ねえ、無詠唱よ」


「それに杖も使っていないわ」


「そうね。あの女の人も凄い魔導師だったのね」


 そっちかよ、と内心でツッコミを入れた。

 凄いと言われるほどのものでもないのだが。

 ミズホ国民にしてみれば面倒でいちいち詠唱なんてしていられないもんな。

 騒がれてもスルーし続ければ、そのうち慣れるだろう。


「主よ、終わったぞ」


 ざわめきが残る中、ツバキは呼び水の注ぎ込みが完了したことを告げてきた。


「はいよ」


 入れ終わったらハンドルを漕いで水が出ることを証明しなければならない。

 単に水を流すだけなのは勿体ないので容器を確保したいところだ。

 この城のものを使った方が良いだろう。

 そう考えてマリア女史に目を向ける。


「バケツを用意すればよろしいですか」


 こちらが声をかける前に聞いてくれるとは察しがいいね。


「ああ。悪いけど手早く集められるだけ用意してくれるか」


「承知いたしました」


 即座にギャラリーしていた何人かのメイドに指示して持ってこさせた。

 マリア女史の薫陶を受けているおかげか仕事が早い。


「全部で18個か。これなら呼び水より多いことを証明できるだろう」


 ひとつを手に取ってポンプの排出口の下に置く。


「ボルト、出番だ」


「ええっ!?」


 まさか自分が指名されるとは思わなかったのかボルトは戸惑いの色を濃くしている。


「俺たちがやると魔法を使ったと思われかねないからな」


 魔法適性が低いと言われているドワーフが適任というわけだ。


「大丈夫。誰にでもできる簡単なお仕事だ」


 アルバイト求人広告の文言みたいだな。


「はあ」


 なのにボルトは生返事をする。

 どうやら注目を浴びて緊張しているようだ。

 とはいえ指名した以上は何もしないまま選手交代はできない。

 説明すべき相手から不審がられてしまっては取り返しがつかないからね。


「そこの緩くカーブした棒状の部分を持ってみろ」


 一抹の不安を抱きつつ指示を出す。


「こう、ですか?」


 言いながらボルトは片手でハンドルの真ん中あたりをつかむ。


「持つのは端の部分だ」


 ボルトが手の位置をずらしてアイコンタクトで確認してきた。


「そう。それで上下に何度か漕いでみろ」


 戸惑いつつもポンプのハンドルを漕ぎはじめると──


 バシャッ


 排出口から水が出てきてバケツに流れ込む。


「「「「「おおっ」」」」」


 軽いどよめきが起きたが驚愕というほどではなかった。

 呼び水が出てきたと誰もが思っただろうしな。


「続けろ」


 ガチャコンガチャコン


 促されたボルトは更にハンドルを上下させる。

 そのたびに排出口から水が出てきて、じきにバケツは一杯になった。


 当然、空のものと交換する訳だが月影の面々が自主的にやってくれた。

 何故かバケツリレーしているけど。


「ね、ねえ、変じゃない?」


「なにが?」


 メイドのひとりが別のメイドに話し掛けていた。


「だって、あそこから出ている水って魔法使いのお姉さんが入れた水より多いわよ」


「もしかして井戸の水があそこから出てるの?」


「そうとしか考えられないわよね」


「魔道具ってことは?」


 そういう疑いを抱く奴はいるよな。

 だが、すぐに頭を振って否定する者がいた。


「そんな風には見えないわよ。あれだけの量の水を出すなら魔石もかなり大きいのが必要だろうし」


 随分と効率の悪い魔道具だな。

 何にせよボルトに実演させたおかげで人の魔力を利用して動作していると言い出す者はいなかった。


「じゃあ、何をどうしたらあんなことが出来るの?」


「知らないわ。難しいこと聞かないでよ」


 原理を説明していなければそんなものか。


「それと最初に水を流し込んだのは何故?」


「難しいことを聞かないでって言ってるでしょ。で、どうなの?」


「だからって私に振らないでよ」


「えー、気になるじゃん」


「アンタって子は相変わらずのナゼナゼちゃんよね」


 変なあだ名がついているな。


「そんなに気になるんなら賢者様に聞いたらいいじゃない」


「ええー、陛下もいらっしゃるのに無理だよぉ」


「聞く気はあるんかいっ」


 なんだか漫才になってきているな。


「どっちにしても私らじゃ相手にされないって」


「いい男なのに残念」


「そんなのどうでもいいわよ」


 変な方向に進み始めていた話を年かさのメイドが軌道修正する。


「アレがそのままになるのかの方が重要よ」


「「「「「どういうこと?」」」」」


「あの妙な道具がそのままなら私たちが使うことになるじゃない」


 妙な道具って……


「「「「「あっ!」」」」」


 俺が微妙に落ち込んでいる間もメイドたちの話は続く。


「あんな簡単に水が出るなら楽よね」


「うん、楽だ」


「楽なんてもんじゃないわよ。手の豆が潰れたりしないでしょうし」


 水の入った桶を引き上げるのは重労働だもんな。


「だよねえ」


「でも動かしてるのはドワーフだよ」


「そうね。私たちの力で動かせるかな、アレ」


「「「「「あー……」」」」」


 おっと、そこまでは考えてなかった。


「ドワーフは軽そうにしてるけど」


「少なくとも桶をロープで引っ張り上げるよりは楽なんじゃないの」


「とんでもなく重いかもしれないじゃない」


 そこまで言うなら、やってもらおうじゃないか。


読んでくれてありがとう。

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