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204 ハルト待たされる

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


 俺の発言にジェダイト組はそろって頭を振っている。


「ここまで曲げてしまうと元には戻せんぞ」


 ハマーがそんなことを言ってきたが百も承知だ。

 歪みが入った金属は脆くなるからな。

 更に元に戻そうとして力を加えれば状態はもっと酷くなる。


「それ以前にどうやってこの状態から直すんですか?」


 ボルトの言うことも至極もっともだと思う。

 一度でも曲げが入ると、どうやっても元通りにはできないからだ。

 事故を起こしたバイクなどはその典型例だと言える。

 少しでもフレームが歪んでしまうと修理してもバランスが崩れるんだよね。

 中古バイクとかは、そういうのが紛れているから気を付けないといけないのだ。


「力で直すとは言ってない」


 言いながら光の魔方陣を描いて魔法を使うことをアピール。

 そのまま地魔法でハルバードの柄を再構成させていく。


「うおっ、気持ち悪っ!」


 再構成していく柄を見て過敏に反応したのはハマーだ。

 何しろグネグネウネウネと触手のように蠢いているからな。

 触手じゃわかりづらいというなら朝顔の生長動画を早送り再生で見た感じだろうか。

 王城組の中には顔を背けている者もいるくらいだ。

 そのせいか俺の治癒魔法を見たとき以上にざわめきを増していた。


「うげっ」


「なんだよ、あれ!?」


「気持ち悪ぃ……」


「なんで勝手に動くんだよ」


 魔法の知識が薄い兵士連中は騎士とは違って思ったことを口にしているな。

 ただ、騎士たちだけでなくエリスも絶句しているのは、ちょっとした驚きだ。

 ハマーとボルトは驚きつつも俺だからということで納得しようとしているように見える。


 そうこうするうちにハルバードは元通りの姿に戻った。


「どうだ?」


 諦観満載の呆れ顔をしているガンフォールに手渡しながら問うてみる。


「こんなものじゃろうて」


 軽く検分したガンフォールは溜め息をついた。


「元の状態は詳しく知らぬが少なくとも歪みや劣化はないから問題ないはずじゃ」


 ガンフォールのお墨付き、いただきました。

 これで難癖つけてくる奴も減ってくれればありがたいところだ。

 やり過ぎた自覚があるので皆無とは言えないが後悔は寸毫たりともしていない。


「なら、いいよ」


「少しは自重するんじゃな」


「周りがさせてくれないんだよ」


「まったく……」


「そんなことより仕事だよ」


 こちらに向かってくる3人組がいる。

 真ん中が宰相で、その両脇を固めているのは腰に長剣を下げた騎士服の男たちだ。


「む、宰相じゃな」


 騎士のことはスルーしているので単なるモブ護衛と認識しておく。


「お久しぶりです、ジェダイト王」


 俺たちの前まで来ると宰相たちはそろってガンフォールに頭を垂れた。


「うむ」


 ガンフォールは言葉少なに応じている。

 それから宰相は俺の方に目を向けてきた。

 護衛たちのように顔色を悪くさせたりしていないのは大したものだと思う。

 人生経験の差が出ているか。


「して、こちらの御仁はどなたですかな」


 ガンフォールとは並んで立っているせいか、どういう態度を取ればいいのか量りかねているようだ。

 禿げ脳筋を締め上げた影響は少なからずあるか。

 大臣でなくなったとはいえ、この国では名門として知られる家の上級貴族だし。


「賢者にしてワシの友、ハルト・ヒガだ」


 宰相の眉が微かに動いた。

 賢者という言葉には反応を見せなかったが、友という単語には何か思うところがあるらしい。


「見たところドワーフではありませんな」


 うちの王とは友誼を結んでいないのにそりゃねえだろと嫌みでジャブを入れてくるか。


「ほう、貴殿はワシに指図するつもりか?」


 宰相の眉がピクリと動いた。


『くっくぅー、くぅくうーくっくぅくー』


 ヘイヘーイ、ピッチャービビってるーってローズが聞こえないあおりを入れる。


「いえ、決してそのようなことを言っている訳では──」


「あまり下手なことを言うものではないぞ」


 言い訳しようとする宰相を遮りながらガンフォールは鋭い視線を送る。


「シノビマスターとやらが言うておったじゃろう。遥か東の果てに浮かぶ島国の王と」


「それは……」


 話半分にも思っていなかったようで宰相が動揺した。


「あの者がどうやって知り得たかはワシにも分からんが、あの言葉は真じゃぞ」


「っ!?」


 一瞬で血相を変えてしまう宰相。

 どうにか叫んでしまうことだけは踏みとどまれたようだ。


「ワシもハルトのミズホ国に招待されたことがあるからのう」


「……左様でしたか」


 宰相の顔が引きつっている。


「信じておらんじゃろう」


「いえ……」


 歯切れの悪い返事にガンフォールはフンと鼻を鳴らした。


「まあ、よい。ワシらは用があってきたのじゃ」


 ガンフォールの言葉を聞いた宰相は即応できずに固まっている。

 どうやら頭の回転が追いつかない状態に追い込まれているようだ。


「先触れを出さなかったのはすまぬが」


 ガンフォールは構わず話を続ける。


「火急の用件がある」


 ガンフォールの雰囲気に感じ入るものがあったのか宰相もようやく落ち着きを取り戻す様子を見せた。


「火急ですか」


「昨年末にブリーズの街で色々あったという報告が上がっておるじゃろう」


 宰相の目がやや見開かれた。

 なぜ、それを? そう言いたげな空気が伝わってくるかのようだ。


「ワシは直接関わっておらんが報告は受けたのでな」


「……部下の方が当事者であると?」


 ハマーやボルトの方を見る。


「それだけではないがな」


「と言いますと?」


「説明はするが、こんな場所で立ち話もあるまいて」


 ガンフォールに指摘されてハッと我に返る宰相。

 普段ならそんなこともないのだろうが、まだまだ動転から抜け出せずにいたか。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 別室に案内されて待つことしばし。

 小一時間では済まないくらいは余裕で待たされている。


「言ってる間に晩飯の時間になるな」


「大方、お嬢ちゃんたちの報告を受けて対応を協議しておるのじゃろう」


「仕方ないさ。王女の発言は無視できないとはいえ予言と聞かされちゃ戸惑いもするだろうよ」


 呆れたと言わんばかりにガンフォールはフンと鼻を鳴らした。


「おまけに狙って予言できるわけではないときているから都合が良すぎると思われても何の不思議もない」


「そこは証人がおるじゃろうが」


「それだけでホイホイ信じられる世の中ならいいがな」


 ガンフォールが渋い顔をした。

 過去に酒の仕入れで騙されたことを思い出したのかもな。


「まあ、ワンクッション置けたと思えば悪いことばかりでもないさ」


「そういうものかの」


「王女たちが報告してくれたお陰で俺たちが説明する手間は大幅に減ったはずだ」


「ふむ、同じことを何度も繰り返し聞かれるようなことにはならぬか」


「たぶんね」


 一度は俺たち自身の言葉で説明することに……

 ん?


「この離れに誰か入ってきたぞ」


 気配的には男と女の2人組だな。

 殺気は放っていないがローズやシヅカも気付いたようだ。


「なんじゃと?」


 誰よりも早く気配を察知したことでガンフォールには目を丸くされてしまった。

 ハマーやボルトはフリーズの街で一緒に行動していた関係で慣れていたらしく然もありなんといった顔をしている。


「我々を呼びに来たか」


「だと思いたい」


 難癖をつけてくる輩でないことを願うばかりだ。


読んでくれてありがとう。

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