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180 予言の話は前哨戦?

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。

「驚くべきことですか?」


 俺とガンフォールを見比べるようにしながらクリス王女が問いかける。


「予言じゃ」


「「「「「予言!?」」」」」


 ゲールウエザー組が全員素っ頓狂な声を出した。

 一国の王の発言を軽んじる訳にもいかず困惑しているのがうかがえた。

 ただ、まるで信じないという空気にはなっていないのはそれだけではないようだ。

 何人かは俺の方をチラチラ見ているのはフェンリルを目の前で召喚してみせたのが効いているせいか。


「そう、予言じゃ」


 ガンフォールは重苦しく頷き話を続ける。


「ワシが直接聞くのは今回が初めてじゃったが、ここにおるハマーはこれで2回目でな」


 ガンフォールの隣に座るハマーに注目が集まる。

 視線が急に集まったことで居心地悪そうに咳払いをしてからハマーは喋り始めた。


「ワシが予言を初めて聞いたのはハルトが冒険者ギルドへ赴いた時のことだ」


「ブリーズの街ですか」


 マリア女史の問いかけに頷きが返される。


「色々あって最初、ワシは同席しておらなんだ」


 そこからハマーの説明が続く。

 俺がトラブルの目撃証言を依頼されたことから始まり。

 関係者としてハマーだけでなく関係者として商人ギルド長と副ギルド長も連れて来られたこと。


 事細かに順を追って話が進んでいく。

 ルーリアとならず者冒険者たちとのトラブルについても話さないと繋がらんからな。

 いきなり暴動未遂の話をされてもチンプンカンプンだろうし。

 なるたけ丁寧にかつ簡潔にハマーは喋っていた。


 そんな感じで、暴動に発展する前にゴードンが対応しようと腰を上げたところまで説明が終わった。


「その時だよ、ハルトが暴動は発生しないと断言したのは」


 ハマーの言葉を耳にしたゲールウエザー組が一斉に俺の方を見た。

 俺は気にせず5杯目の茶を啜る。


「いきなり詩を朗読するかのように奇妙なことを言い出しおったのだ」


「それはどんな内容だったのですか」


 今度は王女の質問だ。


「天罰が悪党どもに下されるといったことだな」


 さすがのハマーも数ヶ月前のことを一字一句までは覚えていないよな。


 かと思ったらエリスが語り始めた。


「間もなく天より罰が下される。

 暴動の狼煙は嵐によってかき消されることだろう。

 狼煙を上げようとする者には天から降り注ぐ光の矢。

 扇動家たちには凍てつく死の洗礼。

 黒幕はすべてを暴き出され地獄の業火に焼き尽くされん」


 ホント、有能な人だよな。


「私の記憶が確かでしたら先生はこう仰ったはずです」


 俺は湯飲みをテーブルの上に置いてパチパチパチパチと拍手した。


「素晴らしい。一字一句そのままだ」


「お姉様もいらっしゃったのですか!?」


 驚きを見せる王女はエリスのことを年下の友人としてお姉様と呼ぶと決めたようだ。


「ええ。私は冒険者ギルドの職員ですから」


 それを見届けてからハマーが話を続ける。

 にわかに嵐となり落雷があったことはもちろん、その後のこともエリスのフォローを受けながら最後まで説明した。

 衛兵隊長ケニーの話が出た際には護衛組が反応していたが知り合いななのかもな。

 だとすると、そこからの証言も得られるだろう。


「ブリーズにおいて不思議な事件があったとは聞き及んでいます」


 神妙な面持ちでクリス王女が話し始めた。


「悪事を働いている者たちが死んでいる状態で大勢発見されたと」


 他のゲールウエザー組も否定的な様子は見られないところを見ると知っているみたいだな。


「特に指示を出していた商人ギルドの幹部が無残な姿であったとのことですが」


 身元が分かるように頭部より下を炭化させたから無残と言えば無残かな。


「まさかそれが予言されていたなんて……」


 戸惑いを隠せない様子を見せているのは好感触だ。

 ゲールウエザー王国の国王や宰相にどう思われるか考えると、あっさり信じられても困るからね。


 ここでペラペラ喋り出せば王女を騙した詐欺師のレッテルを貼られかねない。

 俺としては6杯目の茶を啜るのみで口を挟むことはせず集まった視線は流すのみである。


「賢者様にお聞きしたいのですが」


 ここでメイド長であるマリア女史が俺に問いかけてきたため目で先を促した。


「予言とはどのようなものなのでしょうか」


「さあ、どのようなものと言われてもね。頭の中で誰かの声が聞こえる感じだな」


 これを言うとローズが腹を抱えて笑い出すんだよな。


『くーくっくっく!』


 転げ回って爆笑してやがる。

 うるさいなぁ。俺だって厨二くさいことを言ってる自覚はあるよ。


「いつどこで聞こえるかは俺にも分からんし都合良く事あるごとに聞こえるものでもない」


 ゲールウエザー組からは困惑した空気が流れてくる。

 まあ、反論してくる様子がないだけマシな反応と言えるだろう。


「現に街が赤イナゴに襲われそうになったときは何も聞こえなかったぞ」


「あ、あれは本当の話だったのか」


 護衛隊長のダイアンが思わずといった感じで口出ししてきた。


「自分もあれはデマだと思っていたのですが」


 副隊長のリンダもそれに同意している。


 街の方では大騒ぎになったのに離れた場所だとデマ扱いされているのか。

 もしかして俺のせい?

 稲妻が連発して落ちた後に炎の竜巻が赤イナゴを塵も残さず消しました。

 こんな報告を受けたら誰だって信じる気になれないだろう。

 おまけに気が付いたら業火の痕跡は何ひとつないなんて言われたら尚更だよな。


「赤イナゴの大群がブリーズの街に押し寄せていたのは間違いありません」


 エリスもあれを監視していた1人だったのか、そう証言した。

 そこまでチェックしてなかったがアクティブだなぁ。


「あれはまさしく天変地異。いえ、天罰の余韻と言うべきでしょうか」


「天罰の余韻?」


 王女の問いに頷きで答えるエリスを皆が興味深げに見守っている。


「件の悪事を首謀した商人が街の各所で放火を目論んでいた話は既にされていますね」


 先程、ハマーの話の中で出てきたことだ。

 ゲールウエザー組の頷きが返される。


「あの者が放火だけではなく赤イナゴの群れを呼び寄せたという疑惑があるのです」


 えっ!? ギブソンにそんな真似できる訳ないだろ。

 さすがに濡れ衣だけど、そう思ってくれた方が色々と都合が良いので何も言わない。

 予言の天罰が俺の仕業だとバレても困るから余計なことを言えないのよ。


 ゲールウエザー組が呆然としている。

 蝗害を起こすほどの赤イナゴを集めて操った者がいたのだとしたら無理もないか。


「あくまで疑惑ですし証拠はありませんから公式見解ではありませんが」


 そう言われて落ち着きを取り戻す始末。

 完全に動揺が取り払われた訳ではなさそうだが。

 それは疑惑は根深く残っているということの証しでもある。


 疑惑から始まる推測は召喚魔法に行き着くものと思われる。

 他にこじつけようがないしな。

 問題は、西方で知られている召喚魔法は規模が小さくても時間と魔力をやたらと浪費するということだ。

 それは俺がフェンリルを召喚した際に皆が腰を抜かさんばかりに驚いていたことでもわかるだろう。


 赤イナゴの方と関連づけられないようにやっとくんだったと後悔しても後の祭りである。

 街中でも連発させたのに雷連発はないよな。

 多分あれで関連づけられたことで疑惑が浮上したんだろう。


「賢者様はどう思われますか?」


 王女はここぞという所でポイントを突くように俺へと話を振ってくるから油断ならない。


「黒幕はすべてを暴き出されると予言しましたよ。それが黒幕の犯行であるという証拠がないのであればそういうことです」


 できればギブソンに罪をおっ被せたかったけどな。

 エリスも俺の指摘で「あっ」という顔をした。

 一字一句まで予言の内容を暗記していたのに残念な人である。


「で、では、別の誰かが……」


「いえ、それはないでしょう」


 王女が動揺し始めたところを否定したのはメイド長である。


「蝗害は偶然と考えた方が自然です。その後のことは説明のしようがありませんが賢者様は何か分かりませんか」


「落雷だの炎の竜巻だのは魔法だとは思うが、俺はエリスのように見張っていた訳じゃないからな」


「そうですか」


「ただ、蝗害を殲滅できるほどの規模となると仙人でもいたんじゃないかとは思う」


「仙人ですか?」


「別の言い方をするなら神の使いだ」


 ここで、それまで空気だった神官ちゃんがビクッと反応した。


「予言に天罰、そして神の使い……」


 なんだか一人でブツブツ呟いているんですけど。


「くうぅっ、私もその場に居合わせたかった……」


 神官ならばこその反応と言えるか。


「とはいえ賢者様が神託を受けられる聖者様でもあるのは確実……」


 証拠もなく勝手に決めつけないでくれよ。


「此度の予言もゾクゾクする……」


 おいおい、影の薄い人じゃなくてヤンデレ系か?

 勘弁してくれよ。


読んでくれてありがとう。

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