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131 皆といろいろ遊んでみた

改訂版です。

 おせちにお雑煮がお正月の食の醍醐味ならば、娯楽の醍醐味はカルタに羽子板に凧揚げだろう。

 妖精組も楽しみにしていた。

 まずは食後の腹ごなしってことでカルタから。


「猫に──」


「こんばんわ!」


 元気よく対の札を取りに行く参加者。

 勝ち抜きとか順位を決めたりはしていないんだが楽しそうに遊んでいる。


 スピードが違うので新国民組が妖精組に混じって遊びづらいのが難点だ。

 それでも楽しそうに観戦していた。


「猫に挨拶するて、どういうことやの?」


「目が光って驚いたシチュエーションみたいよ」


「絵ぇ見たら分かるがな」


「動転して口走ったとか?」


「誰の体験談やねん」


 アニスとレイナの漫才じみたやり取りが繰り広げられたりもしている。


 文言がおかしいのは妖精組が作ったからだ。

 楽しんでいたから俺はあえて口出ししなかった。

 木の札の削り方とか色の塗り方でアドバイスはしたけれど。


 売り物になりそうな仕上がりになったので大量に複製してみるのもありかもね。

 ただ、西方で流行らせるのは難しいと思う。

 机の上では遊びづらいからね。

 皆も畳敷きの大広間で遊んでいるし。


「あれはいいものだ」


「え?」


 何処かで聞いたような台詞に思わずそちらを見たら……


「何やってんだ、ルーリア?」


 目尻を下げに下げて畳の感触を確かめるように頬ずりしていた。


「はっ!」


 慌てて取り繕うが、新国民組だってドン引きしているし今更だ。


「そんなに気に入ったならルーリアの部屋を畳敷きに改装するが?」


「いや、そこまでは」


「遠慮はいらんぞ」


「しかし、大仕事になるだろう」


「一部屋の改装くらい飯を食うほどの時間も必要ない」


「なんと、誠か!?」


「こんなことでウソをついても誰も得しないだろ」


「ならば、ぜひお願いしたいっ!!」


 頭突きされるんじゃないかと思うくらい食い気味に頼まれてしまいましたよ。

 俺としては苦笑するしかない。

 そこまで熱烈に希望するならとカルタ遊びの会場を抜け出して和風スタイルに変更してきたよ。


 仕上がりは畳部屋なんだけどベッドや椅子のある洋風テイストが残る和室で落ち着いた。

 俺のセンスではない。

 改装しながらルーリアの要望を取り入れていった結果だ。

 あまりに出来が良かったので俺の部屋も土足禁止にすることにした。


 錬成魔法、万歳!

 それと魔法を教えてくれたベリルママに感謝を。


 で、大広間に戻ってきたんだけど、熱戦が続いていた。


「犬も歩けば──」


「溝にはまる!」


 うん、某獣医漫画のネタだな。


「告白は──」


「月が綺麗ですね!」


 ここで文豪ネタが出てくるとは、君らどんだけ動画見てるんだ。


「なあなあ、賢者はん」


「何かな?」


「なんで告白が月が綺麗ってなるん?」


「元ネタがあるんだよ」


 そう前置きしてから説明はしたけど……


「なんや、それ。訳わからんがな」


 予想通りクレームがついた。

 そういうのは講師から新聞記者になった文豪に言ってほしいと思う。


 なんにせよ、元日は夜遅くまで城内が賑やかでしたとさ。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 明けて2日の朝を迎える──

 とはいかず、一富士二鷹三茄子の初夢タイムを迎えてしまった。

 日本にいた頃は夢など見た覚えのない俺が、である。

 しかも夢を見ていると自覚している明晰夢の状態だったり。


 白い空間に自分だけがポツンといる。


『ピンポンパンポーン!』


 声で効果音を言わなくてもいいと思うんだけど。

 ラソル様だったらシカトするところだったさ。

 久々のベリルママだったのでツッコミを入れずに待つ。


『お母さんは怒っています』


 新年早々にお小言ですか。


『連絡なしなんて信じられません。プンスカプンプン』


 かわいらしく言われると真摯に応じるべきなのか調子を合わせた方が良いのか反応に困る。

 メールしておけば回避できたかもと思ったが今更だ。


『ごめんなさい』


 とりあえず夢の中で謝っておいた。


『なぁんて言ってるけど、本当は怒っていません』


 ガクー


 ズッコケた。


『悲しくなるからメールだけでもして頂戴ね』


 そこは、やはりしておくべきだったんだな。

 悲しくなるとか言われると戦々恐々だ。

 泣かれたら罪悪感ゲージが一気に振り切ってしまいかねんからなぁ。


『目が覚めたら年賀メールを送ります』


 それすら忘れていたとは失点が大きすぎる。


『えーっと、ゴメンね。言い忘れてたんだけどぉ』


 謝られるようなことをした覚えはないんだがなんだろう?

 いきなりだからドキドキしてしょうがない。

 落ち着け、俺。


『これは一方通行で伝えるメッセージだから応答はできないの』


 もしもしぃ?


『そういうのは最初に言っておいてください』


 いや、ここで言っても伝わらんのだけど。

 自分でボケて自分でツッコミを入れるのはむなしいものだ。

 それよりも話の続きに集中しよう。


『それでね、業務連絡があります』


 効果音もどきの入り方で予想できてましたよ。


『お母さんは春頃までお仕事に出かけています』


 神様が何ヶ月もかかる仕事って思った以上に大事だな。


『その間は連絡が取れません』


 メールもダメっぽいな。

 まあ、年賀メールは予定通り送っておこう。


『留守はルディアちゃんたちに任せてきたので大丈夫だと思います』


 ルディア様も割とキツいと言ってたような気がするし心配だなぁ。

 俺にできることなんて何もないと思うけど。


『万が一の時は姉さんに連絡を入れてください』


 姉さんって俺のいた世界の管理神でベリルママの上司にして従姉な人だよな。


 それより万が一って何だろう。

 管理神が不在だと世界の状態が不安定になるとかだったら嫌だな。

 それでセールマールの管理神に連絡しろってこと?

 思った以上に大事になりそうな気がするんですが。

 魔神が復活とかしないよね?


『心配しなくても世界は安定してるし姉さんも見てくれてるから大丈夫よー』


 そうであることを切に願う。


『連絡先はメールで送っておいたので後で確認してねー』


 そんなメッセージを最後に俺の意識は暗転し朝までぐっすりであった。


「悲しいものがあるな」


 目覚めた直後の第一声がこれだ。


「くっくぅくー?」


 どうしたのさ? なんてローズに心配される始末である。


「初夢なのに業務連絡だけで終わったのがショックでな」


「くくぅくくー?」


 どういうこと? か。

 説明しても結果は変わらんしなぁと思いつつも夢の内容を話してみた。


「そんな訳で縁起物は出てこなかったし微妙な気分になった訳」


「くーっくぅくくぅくーくうくー」


 神様が出てくるから縁起は良い、だって?

 そういう考え方もできるか。


「じゃあ、この夢見は良かったってことか。


「くっ。くうくくぅーくぅーくくっくぅ」


 判定。縁起はいいけど波乱もありそう、か。

 どのあたりがだよと思ったが夢属性の精霊獣にしか分からない部分のような気がする。


 波乱がありそうなのはゲールウエザー王国だろうな。

 あそこの第2王女を助けたし。

 国に帰ってどんな報告をしているのかが気になる。


 後は同国内のブリーズの街か。

 あそこでも目立ってしまったしなぁ。

 春までに新国民組を一定水準まで鍛えようと思っているので行かないという選択肢はないんだけど。


 とはいえ三が日から特訓なんてことはしない。

 休みなんだから遊びます。

 昨日はカルタ三昧だったけど、今日は外に出て遊ぶのだ。


 まずは羽子板なんだけど、これも新国民組には勝ち目がないんだよなぁ。

 かといって狭いグループだけで遊んでいると壁ができかねない。

 そのあたりは彼女らも分かっているようで観戦したりして妖精組と打ち解けていた。


「あたしらと全然違う」


「あの速さでよく続くものだな」


「羽根の残像が直線やで」


 最初のうちはレイナ、リーシャ、アニスが唖然としていたけどね。

 それでも見慣れると羽根の動きを目で追うことが出来るようになっていた。


 昼からの予定は凧揚げだ。

 風魔法の助けを借りれば誰でも簡単に大きな凧や連凧などをあげられる。

 え? ズルいって?

 競技じゃないんだし楽しければ何だって構わないんだよ。

 魔法に頼らず腕を磨こうという面子が徐々に増えていったし。


「なんか地味やと思わん?」


「慣れてしまうとな」


 アニスとリーシャがこんな会話をするのも飽きてきた証拠だ。

 見れば他の面子も似たような様子である。


「正月とは関係なくなるけど、こんなのもあるぞ」


 フライングディスクを出すと──


 シュババババッ!


 パピシーたちが一瞬で集まってきた。

 何をするものなのかを本能で理解しているのかもな。


 さっそく遊び始めたんだけど、パピシーとそれ以外の面子で温度差が出た。

 気合いの入り方が違うせいだ。


「本気すぎて怖いわよ」


 レイナがドン引きするレベルである。


「じゃあ、こんなバリエーションもある」


 ディスクゴルフを提案してみた。

 簡単に言えばゴルフっぽいルールとコースで遊ぶフライングディスクである。

 カップの代わりに専用のゴールがあって、そこに何回で放り込めるかというゲームだ。


 ゴールは少し低めの位置に広い目のバスケットがあって、ここがゴルフのカップに相当する。

 その上に飛んで来たディスクを止めるための鎖が数本。

 ここに上手く当てればバスケットに落ちる訳だ。


「これはスピードも体力も要求されないんだな」


 ルーリアが感心しながらプレイしている。


「障害物が邪魔なんだけどっ」


 投げながら愚痴っているのはレイナだ。

 言っておくけど木を迂回するコースとかもあるからね、レイナくん。


「水切りシュートニャー」


 ミーニャたちは池越えコースか。


「池ポチャなの」


「ディスクが軽すぎるんじゃない?」


 シェリーとルーシーの冷静なツッコミ。


「「残念」」


 ハッピーとチーが落胆する。


「無念ニャー」


 それぞれに楽しめているようで何よりだ。

 そのうち情報交換したりして攻略し始めたお陰か更に賑やかになり予想以上の反響となった。


 仲良きことは良きことかな。

 この調子で明日のボウリング大会でも楽しんでもらえればと思う。


読んでくれてありがとう。

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