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10 スキルと年齢詐称?

改訂版バージョン2です。

「ひとつ質問があります」


「瞳の色ね」


「はい」


 俺の疑問は聞く前から見抜かれていた。


「髪の色が変わったことと理由は同じよ。

 錬成魔法の無茶で魂の定着が強引に行われたのは分かったわよね」


「ええ、まあ……」


 どうやら、そのことと関連があるようだ。


「その際に肉体の方にも変化があったの。

 私が補った分の細胞が活性化したのよ」


「その結果が、この変化ですか」


「そうよ」


 だとしても瞳の色がベリル様と異なる状態になるとは思えないのだが。


「その瞳の色は私のものを受け継いでいる証拠よ」


「え、でも……」


「神になった時にこの色に変化したのよ。

 神格を得るとみんな瞳の色が薄紫になるの」


「そうだったんですか」


 ようやく納得がいったことで、つい溜め息が漏れ出てしまった。

 だが、安堵するには些かタイミングが早すぎたと言える。


「でも髪の長さは錬成魔法の無茶とは関係ないわよ」


「はい?」


「脳内スマホで日付を確認してみなさい」


「はあ」


 錬成魔法を使ったのは昨日のはずだが何があるというのだろう。

 それでも言われるままに日付を見た。


 目が釘付けとなり──


「………………………………………」


 俺は言葉を失った。


「あれから1年たっているのよ」


 俺はコクコクと頷くしかできなかった。


 言っておくが、1年が日本の1日に相当しますなんてオチはない。

 こちらの1年は360日だ。

 が、時間的なズレがあって地球の1年とほぼ同じだという。

 厳密に言えば向こうの4年間の平均値とほぼ同じ。

 そういう訳で、こちらには閏年がない。


 細々した部分も地球に似通っている。

 1年を12等分して月をカウントするのも曜日や時間のルールも同じ。

 違うのは1ヶ月がきっかり30日ということと1秒の長さが微妙に長いくらいか。


 こんなことを頭の中で復習して現実逃避するくらいには衝撃を受けていた。

 時間をかけて、どうにか動揺を静める。


「もしかして付きっ切りだったんですか」


 目覚めたときから居たもんな。

 予兆を感じ取って飛んで来たと言われても驚かんがね。


「ずっとじゃないわ。

 何度か様子を見に来たけど」


 俺の推測に近い状態だったようだ。


「今回は昨日からね。

 留守にする間は結界を張って私以外は誰も入れないようにしていたのよ」


「すみません。

 ご迷惑をおかけしました」


「いいのよ。

 ちゃんと反省してるんだもの」


 そんなことを言われながら頭をなでられた。

 いくら生まれ変わって思春期後半の少年になったとはいえ小さい子扱いは恥ずかしい。

 まあ、拒否すると反省していないとか言われそうなので我慢した。


「………………………………………………………………………………」


 長い闘いであった。

 羞恥心の海に溺れるかと思ったさ。

 忘れるためにも引っ越し作業の続きをしようと思ったのだが。


「あ、そうだ」


「どうしたの?」


 ひとつ解決しておかなければならない問題が残っている。

 根拠のない自信がどうしても消えてくれないのだ。

 それを正直に白状してベリル様にアドバイスを求めた。


「とりあえず『表示設定オン』って言ってごらんなさい」


 唐突すぎて訳が分からない。

 が、俺は戸惑いつつも従った。


「なんだこれっ!?」


[レベルアップしました]した]した]した]した]した]した]した]した]……

[スキルを取得しました]た]た]た]た]た]た]た]た]た]た]……

[スキルの熟練度が上がりました]]]]]]]]]]]……

[スキルポイントを獲得しました]]]]]]]]]]]……


 視野外の領域を埋め尽くしていく情報の奔流。

 メッセージボックスが埋もれるように次々と表示されていく。

 ギュウギュウ詰めだし、いちいち確認ボタンを押すのが面倒だ。


『もっと見やすくならんかね、これ』


 内心で愚痴りながらボタンを押すと急に表示が変わった。

 うんざりするほどあったメッセージボックスが一瞬で消え去ったのだ。


 かわりに俺が思い描いた通りに整理された状態の表示に変更された。

 なにげに表計算ソフト風である。


 どうやら俺の思考に合わせてカスタマイズできる仕様のようだ。


『スゲえな、どうなってるんだ?』


[スキル【諸法の理】の仕様です]


 今度はテキストエディタ風の画面が開いてメッセージが表示された。


『何だ、その妙な名前のスキルは?』


 改行して次の行に回答が表示された。


[神級スキルのひとつです

 特級スキルの【システム・ヘルプ・チュートリアル】などが統合されたものです]


 いちいちツッコミが入る。


[ありがとうございます]


『褒めてねぇ、鬱陶しいわっ。

 もう少し空気読めっての』


 俺の思い通りにできるなら、これで静かになるはずだ。


「………………」


 エディタ画面上に返事がない。

 【諸法の理】とかいうスキルは俺の推測通りに自重した。


 この調子だと過去ログも保存しておけそうだ。


『そのあたりどうなんだ?

 返事しろ【諸法の理】とやら』


[スキルの仕様に含まれています]


 融通が利くのは神級スキルだからか。

 なんにせよ助かる。


 表計算の方に意識を向ける。

 スキル関連のメッセージのみ表示させた。

 やたらと多い。


[統合条件に達したのでスキル【○○】を取得しました。

 以下のスキルの上位互換として使用可能となります]


 なんてのもあって無駄に情報が多い。


『分類とスキルの名称だけで充分だろ』


 せっかく表計算風になったんだし並べ替えとかもしてほしいところだ。

 そう思ったら、またしても一瞬で完了していた。

 便利すぎるんだが……


 代わりに不穏な分類のスキルが目につくようになった。

 【万象の匠】【天眼】【多重思考】の3個は神級スキルだってさ。


 【魔導の極み】とか【超空間】のような特級以上のもある。

 【剛健】と【時計】のように上級などは山ほどあった。

 最下位の一般スキルは生まれ変わる前に持ってたと思しきものも多い。


『もしかしてスキルの取得は思ってたほど難しくないのか?』


 【剣術】は中学時代の部活で剣道部だった頃に得たっぽい。


 【格闘】は中高の体育の授業でやった柔道か。

 高校の部活で自衛隊勤務のOBに仕込まれた分も含まれていそうだ。


 ちなみに高校の部活はサバイバルゲーム同好会。

 通称、サバゲ同好会である。

 そのせいか【槍術】とか【射撃】まである。

 銃剣道は【槍術】に含まれるようだ。


 勉強系のもあるんだろうなと抽出してみたら、上級に【学問】がありましたよ。

 どうやら検索もできるようだ。


『ならば【鑑定】スキルは、どうだ?』


 2件ヒットした。

 結果を確認すると【天眼】【鑑定】とある。

 ただし【鑑定】はグレー表示だ。


『答えろ。

 どういうことだ?』


[スキル【鑑定】は他の視覚系スキルと共に【天眼】に統合されました。

 【鑑定】もそのまま利用可能ですが、その場合は【天眼】を経由します。

 タイムラグを発生させず利用したい場合は【天眼・鑑定】を用いてください]


 試しに自分に対して【天眼・鑑定】を使ってみた。

 結果は表計算のシートを増やして表示させる。


[ハルト・ヒガ/人間種・エルダーヒューマン/ミズホ国君主/男/1才──]


 名前は生まれ変わったんだから納得できる。

 職業欄が国の君主ってのも建国したからな。

 国民は俺1人だけど。


『1才ってなんだよっ!?』


 15才相当で生まれ変わって1年間眠ってたんだから16才じゃないのか?

 生まれ変わったから0才からカウントとか勘弁してくれ。

 誰だ、16才で赤ちゃんプレイとか言ってる奴は!?


 強く拒否して再び【天眼・鑑定】を使ってみたけど結果は変わらなかった。

 脳内で管理する情報なら好きに変更できても肉体情報は変えられないらしい。


『神様っ! 俺をリアル16才にしてください!!』


 ……神様なら直ぐ側にいたよ。


「というわけでベリル様、俺を16才にしてください」


「はい?」


 まるで紅茶好きの警部殿のようなイントネーションで聞き返される。

 さすがに唐突すぎたので一から説明する。


「──という訳で俺を16才にしてください」


「あらー、ウッカリしてたわ」


 神様がウッカリするって怖いんですけど?


「ハルトくん」


「はい」


「お誕生日おめでとう」


 ガックリきましたよ、ええ。

 筋金入りの天然だ……


「有り難うございます。

 誕生日のプレゼントは現在の年齢を見た目と一致するようにして欲しいです」


 念のために俺のリアル年齢が1才だということを再び説明した。


「え? ……あらら、ホントだわ。

 ウッカリさんだったわね、ごめんなさい」


 二度目のウッカリなんですけど……


「これは問題よね。

 うーん、どうしようかしら」


 そう言いながらベリル様が考え込み始めてしまった。

 もしかして神様でも無理なの?


『嘘だと言ってよ、ベリル様!』


読んでくれてありがとう。

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