2-31 これは……
これは……ニジマス。のように見えるもの。
「いただきます」
あ、おいしい。お塩の加減がちょうどいい。
「ヨリちゃん、こっち来てから何食べた?」
きちんと手を合わせていただきますをしたレインツリーさんが、丁寧なお箸使いでお魚の身をほぐしながら、私に尋ねてきた。
「えーと、初日のお昼がカレーとプリンで、お夕飯がお寿司、昨日の朝は焼き鮭の定食、お昼はラーメンと小チャーハンのセット、お夕飯はお好み焼き定食。今朝はハムエッグ定食ですね」
どれもおいしかった。
「お寿司?」
「あ、トーチライトさんに、お寿司屋さんに連れて行ってもらったんです」
お店の名前、なんだったかな。
「もしかして、ささのは?」
「そうですそうです、寿司割烹ささのは、です」
確か、そんな名前だったような気がする。
「へー、あそこ行ったんだ」
レインツリーさんがお味噌汁を一口飲んでから、ふむふむ、と頷いた。
「じゃあ、次は洋食だね」
よし、とレインツリーさんが言った。
「今日の夜は、エレノアを誘って私が洋食屋さんにヨリちゃんを連れて行く」
おぅ。
「でも、トーチライトさん、お忙しそうですよ?」
「あの子、ほっとくとずっと仕事するからね。無理矢理にでも休ませないと、身体壊す」
あー。確かに、手を抜かない人、というイメージは、知り合って三日目にして既にあるなぁ。
「というわけだから、今日の晩御飯は、おばちゃんに任せておきなさい」
おばちゃんって。
「ヨリちゃん、幾つ?」
「年齢ですよね」
「そーそー」
「十九歳です」
「わかーい」
んーむ、なんか、会話のペースを握られ始めているような。




