2-28 HYO
HYO!?
「両手上げて驚くようなこと?」
いやー、あー。
思わず、アメリカンなオーバーリアクションが出てしまいました。
「人族以外に転生者はいないと、思い込んでいたので、つい」
「へー」
眼鏡を鼻眼鏡ポジションにして、レインツリーさんが私をじっと見た。
「ヨリちゃんさー」
馴れ馴れしい系の人か、この人。
「えー、まだ出会ったばかりなのに、下の名前混じりのあだ名呼びとか、あたし、恥ずかしいずら」
とりあえずの小ボケ小芝居ジャブを。
「ヨリちゃんさー」
駄目だ、聞いてねぇし、効いてねぇ。
「どうして、王立図書院の設立が人族によるものなのか、という質問をしたの?」
「NYOoooo……」
……まぁ、いいか。
「魔法は、人族以外の命ある者が使えるんですよね」
「うん。動物とか植物も使える」
あ、命ある者じゃなくて、命あるものなのか。
ならばなおさら。
「こう、種族ごとの力、という理解の仕方もできますよね?」
「あー、うん。エルフの魔法、猫の魔法、樫の木の魔法、みたいな分け方ね」
「そうですそうです」
「それで?」
「固有技能を、転生者という種族の魔法だと見なせるのだとしたら、魔導学は魔法の再現を目的にしている以上、固有技能を研究の対象にしてるのかなぁ、と思ったわけです」
この人には正直に、思っていたことを言おう。なんか、そうした方がいい気がする。
「転生者は、人族以外にいないのだと、そのー、思っていたので、だとしたら、設立した人族が優先的に固有技能の研究をするための組織が、王立図書院なのかなー、と」
転生者の尽力は、私、転生三日目ですけど、既に色々と見てきたので。その成果がこの世界のそこいらにあるということは、みんなで研究して、こう、共有してたりとか。
「つまり、それを確認するための入口の質問だったわけか」
ぐ。
「まぁ、はい、そうっす」
ということは、とレインツリーさんが眼鏡を鼻眼鏡ポジションからニュートルポジションに戻した。
「ヨリちゃん、王立図書院に関わりを持ちたくないの?」
……鋭いな、この人。
「私、エレノアからあなたの固有技能のことは聞いてないのね。あの子、そういうことをぺらぺらしゃべるような子じゃないし。シバもだけど」
コールズさんも下の名前で呼び捨てか。
「だから、推測だけどさ。ヨリちゃんの固有技能、なんか、やばいの?」




