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銀のペンダント  作者: 上村文処
エピソード2 授業~師匠~笑う
88/1011

2-20 あのー

「あのー、それって、普通の、装飾品としてのお値段なんですか?」


 ここはファンタジーな剣と魔法の世界だし、もしかしたら、すごい力を秘めたもの、というパターンも有り得る。


「守護の魔力付与があったと思います」


 ほーほー。守護の魔力付与。


「魔力付与というのは、物に与えられた魔導の力のこと、という理解の仕方をしておいてください。守護というのは、攻撃から身を守るための、魔導による結界を常に張った状態にする魔力付与のことです」


 ふむ?

 あ、そうか。私は、魔力付与という言葉を聞くのが初めてのはずなんだった。だから説明してくれたのか。


「はー、そういうものがあるんですか」


 ……なんか、グリーンリーフさんを騙しているみたいで、心苦しいな。


「はい。魔道具の使い方は、……申し訳ありません、宿舎へご案内した時に、私が説明するべきことでした」


 話の途中で、急に謝られた?


「いえ、えーと、そうなんですか?」

「室内に据え付けの魔道具の使い方は、ブロッサムさんにきちんとお伝えしておかないといけないことですから」


 あー、なるほど。そういうことか。


「でも、もう、ご存じなんですよね?」

「そっすね。トーチライトさんに、蛍光灯の使い方を教わったりとかしました」


 あとは、その応用で、どうにかなりましたですよ?


「私の不手際でご迷惑をおかけ致しまして、誠に申し訳ありませんでした」


 そんな、深々と頭を下げなくても。


「お気になさらないでください。私の方も、言われるまで気づいてなかったですし」

「そうですか」


 グリーンリーフさんは、ほっとしたみたいだった。


「お話の続きをお願いしますです」

「分かりました。魔道具を使える状態にすることを、結線、というのですが」


 けっせん。銀のペンダントの【格納】の説明に、確か書いてあった言葉だけど、普通に使われる言葉なのか。


「私が調べた髪飾りは、結線の必要なしに守護の結界を張った状態にするものだったみたいで」

「意識しなくても、常に守られた状態になる、とかですか」

「そうです。髪飾りを身に着ける人の魔力の高さに関係なく、強力な守護の力を得ることができるので、手が出ないようなお値段になっていたんだと思います」


 誰でも使える、ということか。


「もし、ご興味がおありでしたら、詳しいことは、明日の魔導についての講義の講師の方にお尋ねになってみてください。私も、これ以上のことを説明することはできなくて」


 申し訳なさそうにグリーンリーフさんがそう言った。


「いえいえ。大丈夫です。良く分かりましたです」


 銀のペンダントの【不可知】は、結線なしに有効になってる。【格納】の方は、結線することで使える。結線なしの方が、高度な魔力付与、ということなのかな。

 ふーむ。


「あのー、あの、髪留め」


 ヘアピン、と呼ぶべきなのかも知れないけど。


「魔力付与があるのかどうか、分からないですけど。そういうの関係なしに、素敵ですよね」

「そうですね」


 少し名残惜しかったけど、私はもう一度、髪留めをじっと眺めてから、バッグの置いてある棚へと向かった。


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