2-16 手に取った
手に取った手鏡に映っている自分の顔を見て、口紅ひとつで顔の印象は随分と変わるものなんだなー、と思った。
気恥ずかしさが最初はあったけど、ここまで歩いてくるうちにもう慣れた。
「鏡は女子の必須アイテムですよね?」
「そうですね」
買い物に付き添ってくれているグリーンリーフさんが頷いた。
スプリングフィールドさんによる女の身だしなみの授業のあと、連れてきてもらったのは、鐘楼広場の東側の路地にある女向けの生活雑貨の店で、ここで一通りのものは買えるのであるらしい。
銅貨は十枚単位の筒状のものを五つほど持ってきた。これならどうにか、持ち運べる。エプロンのポケット、限界だけど。
「銅貨五枚か」
安いのか高いのか、良く分からない。木枠に鏡がはめ込まれているだけのもので、大きさは片手の手のひらに乗せられるぐらい。
ま、これは買おう。
でもまずは、バッグ。女である以上、持ち歩かなければならないものが将来的にも色々とあるわけで、何はなくともまずはバッグ。
「バッグって、どこに置いてるんでしょうね?」
「二階だったと思いますよ」
二階ですか。
「このお店、広いですよねー」
「若い子から主婦層まで、幅広く人気のあるお店です。私もよく、ここで買い物をします」
「へー、そうなんですか」
お店の名前は、生活雑貨はなごろも。
独特のネーミングセンス。
「二階に先に行ってもいいですか?」
「もちろんです。ご自由になさってください」
了解であります。
「あー、でも、なんか、目移りしますね」
テール化用のリボン的なものも、色違いのものがあったら良さそう。
口紅入れたりするポーチ的なものも必要だし。使いやすいものがいいな。
「ほへー、身分証用のケースなんかもあるんですねー」
これも欲しいな。銅貨十枚と、P5?




