2-9 戻ってきた
戻ってきたスプリングフィールドさんが、はっ、とした顔をして私を見た。
「お昼、まだでしたよね?」
「そうですね。そういえば」
十時から正午までが、お金の受け取りやら、この世界のお話やらで、昼食のあとに予定の続き、というお話ではありましたですね。
でも、まぁ。
「トーチライトさんに急なご用事が入ったみたいですし、美容師さんにもう、お待ち頂いているのなら、そちらを優先で構いませんですよ」
「申し訳ありません。私どもの都合で、ご不便を」
いや、そんな大仰な。
「時間も……」
時計を取り出して確認。
「十二時半近いですし。だから、お気になさらずに」
スプリングフィールドさんが丁寧に頭を下げたあと、分かりました、と言った。
「それでは、こちらへどうぞ」
そして私の隣に、ぴたっと並んだ。
ぬん?
「行きましょう」
また、この人、距離感がおかしくなってるな。
まぁ、いいか。
「この通路を道なりに行った、突き当たりの部屋です」
スプリングフィールドさんに半歩ほど遅れて、私も歩き出す。
「なんか、建物の中が静かですね」
「はい」
……会話が止まった。
あんまり、しゃべらない人なんだな、スプリングフィールドさんって。
「やっぱり、魔物警報の関連で、皆さん、お忙しいんですか」
「はい。そうですね」
……そうですね、が増えた。
「こちらのお部屋です。――失礼します。ブロッサムさんをお連れしました」
「どうぞ」
お、グリーンリーフさん。




