2-2 それは
それは、自分ひとりの問題にしないで、助けを求めるべき時は、求めなさい、みたいなことなんでしょうか?
「自分を中心に周りを見るってことを、俺たち転生者はやっちまいがちだってことさ」
……そうかも知れない。
「肝に銘じますです」
「まぁ、気楽にな」
気楽に。
「そうですね」
「それで、これからの予定なんだが」
「十時からですよね。十時前に受付に伺えばいいでしょうか」
「いや、こちらから迎えをやろうと思っているんだが……」
「あ、大丈夫です。時間なら分かりますです」
エプロンのポケットの中に……あったあった。
「これがありますので」
手のひらサイズの、半透明な板状のもの。今朝も起きてから色々と試していたら、〈ステータス画面〉で呼び出すステータス情報が書いてあるものは、ステータス情報パネルというのが正式な名前だということが分かった。だいたい、半透明の板状のものは、なんとかパネルという名前で統一されているようだ。
今、手で持っているこれは、ステータス情報パネルの本体ではなく、ウィジェットパネルというものになる。
「これも、〈ステータス画面〉で呼び出したものなんですが……」
あ、コールズさんが、なんとも言えない顔をしている。
「そうか」
「で、これに時計がついてまして」
テーブルの上に置いて、コールズさんに見えるようにした。パネルの中心部分に、時間を表示するようにしてある。
「まだ、研究中なのですが、こんなこともできるみたいです」
「……普通に便利そうだな」
「えへへ」
ウィジェットパネルプラグイン、リサイズプラグイン、時計プラグイン、ポータブルプラグインの組み合わせ。
プラグインについての説明は……どうしよう。するべきか。
「これの仕組みについては」
「あー、別にいいぞ、そこまで話さなくても」
そうなんですか?
「あぁ。固有技能については、概略以上の情報共有は求められていないから安心しろ」
ほーむ。
まぁ、うーむ。
「では、はい、そうしておきます」
ほいでは。
卵かけご飯食べよう。海苔と一緒に食べるのもおいしいよなー。
「そういえば」
「なんだ」
食堂で食事をしているのは、私とコールズさんしかいない。
「皆さん、あまり食堂で朝ご飯は食べないんですか?」
「まぁ、今日は……そうだな」
コールズさんがお水を飲んだ。
「正直に言うと、少し、立て込んでいる」
……おぅ。
「そのあたりのことは十時になったら、支部長が説明するはずだ」
「……魔物関連だったりですか?」
「そうだ」
コールズさんが、頷いた。
「どうしてそう思った」
あー、むーん。
「なんとなく、です。昨日の夜、馬車を鐘楼広場で見たんですが、そのー、トーチライトさんが、何か、考え込んでいらっしゃってて。魔物についてのお話を聞いたあとだったので、そうなのかなぁ、と」
しばらく黙ったあと、コールズさんが、なるほどな、と言った。
「お前は、ガキの頃の俺より、よっぽど周りが見えてるな」
え? いやー、あはははは、ほへへへへ。
「ま、安心しろ。この街は大丈夫だ。お前はとにかく、この世界に慣れることに集中しろ。……ごっそさん」
ていうか、食べるの早いですね、コールズさん!?
さっきまで一緒に、卵かき混ぜてたのに。
「まだ、時間はあるから、部屋でゆっくりしていてくれ。迎えは出さなくていいんだな?」
「はい、大丈夫です」
立ち上がったコールズさんが、おばさんのところに食器を返しに行きながら、振り返った。
「分かった。グリーンリーフには、受付で待つように伝えておく」
「十時……十五分前には、受付に伺うようにします」
「おぅ。じゃあな」
「はい。ではでは」
……魔物か。




