1-59 どことなく
どことなく、困っているようにも見えるコールズさんを見て、トーチライトさんが少し笑った。
「そういう自覚があるのは、いいことだと思うわよ」
それでね、とトーチライトさんの言葉が続く。
「明日の、あなたの予定なんだけれど」
明日の予定。
「時間は、午前十時から」
午前十時。
「予定表があるはずだ」
予定表……ちょっと待ってくださいね。
「えーと、グリーンリーフさんからもらった資料あれこれは……」
寝室のドア、オープン。あったあった。あの紙袋だ。
「すいません、ちょっと探す時間を頂いていいですか」
「ゆっくりでいいですからね」
はいっす。えーと、これは……女子の身体のあれこれの資料か。こっちは……もらった資料の一覧。
えー、これじゃない、これでもなくて、むーん、おぅ、これか。
「ありましたです」
「それを見ながら確認してね」
イェス、マム。
「まずは、お金の支給が最初にあります」
お金。
「そのあとは、この世界のことの説明ね。私かコールズくんが担当することになると思います」
世界の説明。
ふむふむ。
「あの、『転生者のための世界知識』という本は、読んでおいた方がいいですか?」
「どっちでもいいわよ。無理して読むぐらいなら、寝てしまいなさい」
イェス、マム。
「正午前までには終わる予定だから、そのあと、お昼ご飯を食べて、そうね、美容師さんに髪を切ってもらえるよう、手配しておいてもいいけど」
美容師さん。
あー、それ、助かりますです。
「午後からは自由にしてもらっていいから、買い物に行きたいのであれば、付き添いの者を用意します」
お買い物。付き添い。
……ふぁい。
「お前、眠いんだろ? さっきから、支部長の言葉を繰り返してばかりだぞ」




