1-57 宿舎に続く
宿舎に続く渡り廊下に差し掛かったところで、丸椅子をその先の入口近くに置いて座っている、コールズさんの姿が見えた。窓から差し込んでいる星明かりの中、腕組みをしたままうつむいて、微動だにしない。
「……もしかして、寝てらっしゃいます?」
「そう……みたいね」
早足でトーチライトさんがコールズさんに近づき、腕をぺしっと叩いた。
「起きなさい、コールズくん」
「……寝てないですよ」
コントみたいな返しだな。
「こんなところで寝てたら、風邪引きますですよ、コールズさん」
「……おぅ」
変な間が空いたあと、いきなりコールズさんがすごい勢いで立ち上がった。
「……ブロッサムか。ああ、そうだ、荷物が届いてるぞ」
「ほい? あ、どうも」
むーん?
これは、別件でトーチライトさんを待ってた感じかな。
「コールズくん、ブロッサムさんの部屋に荷物を運ぶの、手伝ってもらえる?」
「分かりました。ブロッサム、行くぞ」
「了解であります」
コールズさんが、真っ暗な宿舎の中の蛍光灯を点けてくれた。おー、ダンボールっぽい箱が三つ、縦に積んでドアの前から少しずれたところに置いてある。
「えーと、鍵は……こっちか」
ほい、正解。鍵を開いて部屋の中に入り、振り返ったら、箱を二つ抱えたコールズさんが、ドアの前にいた。
コールズさんも、力持ちさんか。
「入るぞ」
「あ、どぞどぞ」
稲荷寿司入りの紙袋を靴箱の上に置き、両手でドアを外に向かってぐっと押し開くと、上手い具合に開いたままになってくれた。
「どこに置けばいい?」
そうですねぇ……。
玄関口の左手に靴箱。この上に置いてもらったとしても、自分で奥の部屋まで運んでいく自信はない。入ってすぐ、右に伸びている短い廊下の突き当たりには、トイレとか、お風呂とかに続くドア。
その部屋を正面に見て、左に折れて続く廊下の先の突き当たり左手にドアがあって、その中が、台所と、寝室。この二つの間には仕切りになる、スライド式のドアがある。
うーん。
「台所らへんに置いて頂けますか」
さすがに、殿方を寝室にお入れするの、あたくし、まだ早いと思いますの。
「台所だな」
……無視された。




