1-55 おー
「おー、明るくなりましたね」
光の強さは、目に優しく、ほどよい感じ。
「ブロッサムさん、鍵を返しておくわね」
「お部屋の鍵と、宿舎の入口の鍵、ですよね」
はい、どもです。
あのー、ところで、なのですが。
「こういう、魔道具って、私にも使えるようになるもんなんですかね」
光っているガラスを見上げながら、トーチライトさんに尋ねてみた。
誰にでも使えるものであるのなら、私も使えるようにならないといけなさそうだし。
「魔力が4以上あれば使えるように調整されているから、大丈夫よ」
最小値でオッケー、と。ほーほー。
「そうね……こっちの蛍光灯を使ってみる?」
光っているやつの隣にある、まだ暗いままの細長いガラスをトーチライトさんが指さした。
「えーと、蛍光灯っていうんですか? これ」
「ええ。そうよ」
「転生者の尽力の産物だったりとかですか」
「そうね」
グリーンリーフさんが言ってたのって、これか。
……なんか、もうちょっと、ファンタジーな世界向けの名前はなかったのか。
「むぅ。あ、やってみたいです。教えて頂けますですか」
「もちろん。宿舎の部屋はもう、暗いでしょうし、今、覚えておいた方がいいわよね」
そういえば、そうですね。
やはり、早急に使い方を覚えねば。
「まずは、蛍光灯に触ってもらえる?」
はい。ぴとっと。ぬ、冷たい。
「これはもう、感覚なんだけれど、触れているところから、自分の身体の中にある魔力を流し入れるようにしてみて」
流し入れる……むーん。
身体の中にある魔力。ぬーん。
「手のひらに少しだけ力を入れて、次に指先に力を入れるようにすると、上手くいくと思うんだけど」
手のひら……指先。
「にょっ? なんか、流れ出ていく感じが」
「その感覚を、忘れないようにしてね。あなたの魔力が少しだけ、蛍光灯に伝わっていっている感覚だから」
はー、なるなる。しかし、えーと、これ、やめどきが……あ、止まった。
「必要な量の魔力の送り込みが終わったら、その流れを断ち切ってみて」
流れを断ち切る。蛍光灯さん的にはもう、お腹いっぱいみたいだから、これ以上、流れてはいかないけれど、確かに、まだ、こう、つながってる感じが。
「ほいや」
手を離す時に、こう、指先にまた、力を入れる感じで……おぅ!
「光りましたよ!」
「成功ね」
はへー。呪文唱えたりとかじゃなくて、なんだろう、自分の中の魔力でスイッチを押す感じ、なのか。
「はー。こういう感じなんですね」
「簡単でしょう?」
「ですねぇ……」
柔らかい光を投げかけてくる蛍光灯を見上げていると、ほぅ、という溜息が出てきた。




