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銀のペンダント  作者: 上村文処
エピソード1 転生~ステータス画面~戦い
48/1011

1-48 考えごと

「考えごとですか?」


 私たちは、どちらからともなく、立ち止まった。


「ブロッサムさん」


 トーチライトさんが、とても改まった声で、私を呼んだ。


「何でしょう?」

「お店に向かう途中でね、腰を落ち着けられる場所で話をしましょうって言ったの、覚えてる?」


 覚えてますです。


「そのことなんだけど」


 この街で行なわれている、国同士の相互監視の理由が、転生者(リレイター)の尽力による利益を、互いに独占しないよう、予防するため、というお話でした。


「あなたは、どうしてそんなことをするのか、その理由を知りたいって、言ったのよね」


 この世界の人たちにとって、共通の敵である魔物(キメラ)と戦うための切り札になる、転生者(リレイター)の作り出したもの、あるいは転生者(リレイター)自体を、独占するという発想が、私には分からない。

 独占するよりも協力した方が、魔物(キメラ)の除去という成果を、生みやすいはずだ。


「言いました」


 私がそう言うと、トーチライトさんが頷いた。


「でも、今はいいです」


 トーチライトさんは驚いたようだった。


「どうして?」

「今日一日は、何も知らないまま過ごしたいです。もしかしたら、甘い考え方なのかも知れません。この世界の方々が直面している現実から、目を背ける行為なのかも知れない」


 でも、ですね。


「この世界は、きれいです。私の前世の記憶に近いところがたくさんあって、とても懐かしい。その懐かしさに、今日、一日だけは、自分を(ひた)していたいんです」


 息を吸い込めば、肺に清い空気が流れ込んでくる。その清さを身体の中にできるだけ、とどめようとしながら、ふと、これが、いとおしい、という感情なのかも知れない、と思った。


「駄目ですかね?」


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