1-37 ま、あるんなら
ま、あるんなら使おう。
「えーと、まず、オンにして」
プラグインを管理するところにある、メモ、という文字をしばらく長押しすると、暗くなっていたメモプラグイン欄の背景色が、明るくなった。
あ、点滅してる。
「時計プラグインと同じパターンかー」
点滅しているメモプラグイン欄を摘むと、小さな光が私の指先に宿った。ステータス情報を表示する方の、うーん、時計は右下に置いたから、左下に置いてみよう。
使い勝手が悪かったら、変えればいいだけだし。
「ほい。お、できたできた」
光っている指先で左下に触れると、メモっぽい、紙とペンが一つになったようなアイコンが、触れた場所に出てきた。プラグイン管理の方の、メモプラグイン欄の点滅は消えている。
「とりゃ」
アイコンを押したら、メモ用の、だと思われる、半透明の板状のものが出てきた。消す時は、多分、アイコンをもう一回、かな。
「ちょい」
んむ、消えた。
「とりゃ」
うん。
「ちょい」
うん。
「とりゃちょいとりゃちょいとりゃちょいとりゃちょいとりゃちょいとりゃちょい」
……何やってんだ、私。
「えーと、使い方は」
技能欄の〈ステータス画面〉を長押しすると……技能階梯別の技能要素一覧が出てきた。
「メモプラグインが、どの技能階梯で追加されたのか、分からないのがなぁ……」
不親切な設計だ。
んーと。あ、これか。
「メモパネル、というのか。メモパネルの上で、字を書けば変換される……のか」
試しに。まずは、呼び出して。
「何を書こうかな」
どうも、ヨリコです。
「おー、書けた。私の書いた字じゃなくて、なんか、ちゃんと、きれいな文字に書き換わる。なるほど」
消す時は……打ち消し線を入れる? 横線を文字の上に引けばいいのかな。
「横に、びーーーっと、あ、消えた」
空中に文字が浮かんでいるから、不思議な感じだけど。手触りもないし。
「まだ、使ってないプラグインも触ってみるか。ちゃんと、分かっておかないと」
今、何時……おぅ。
十六時五十六分。
ターイム、リミッツ。
「さて、ご飯に行く準備は……食券と銅貨はエプロンのポケットの中だし。あ、鍵を忘れてた」
ポケットに、よし、入った。
あとは……ステータス情報は消して、と。
「お、できた」
消すための動作をしなくても、慣れたら、消したり、呼び出したりできるみたいだ。
少し、集中しなければならないにしても、思わず出ちゃった、ということがないということだから、それはそれで問題ない。
「早く、慣れないとなー」
まだ課題は山積みだ。
夕方五時の鐘の音を聴きながら、ふと出た溜息を打ち消すように、ほへ、と言ってみた。




