1-34 廊下を
廊下を満たしている陽射しはまだ明るく、夕方、という時間のようでもない。
夕食の時間まで、あと、一時間ほど、と言われたけど、何か、時間を区切るような予定があったりするのだろうか。
「あのー、質問です」
「はい?」
私を先導して歩き始めたグリーンリーフさんが、立ち止まって振り返った。
「夕食まで、あと、一時間ほど、というのは、どういうことなんでしょうか」
適宜、自分で食堂に行って晩ご飯を食べるのかと思ってたんですけど。
グリーンリーフさんが、あ、しまった、という顔をした。
「支部長がお夕食に同席します。お夕食のお時間に合わせて、職員がブロッサムさんをお迎えに上がりますから」
すいません、説明不足でした、とグリーンリーフさんが頭を下げた。
おぅ。
「いえ、そんな、はい、大丈夫です。すぐ聞かなかった私も悪いですし」
「そう言って頂けると、助かります」
なんだろう、お仕事に対する義務感が、ものすごく強い人なのかも知れないな、この人。
こちらです、と改めて言われて、てくてく廊下を歩いていくと、広い空間に出た。
うーむ、この建物って、わりと、天井、高め? 広い場所に出たからそう思うのかな。
「こちらが、転生者組合第三支部の、受付になります」
受付カウンターみたいなのがあって、そこには、私と同じような感じの服を着た女の人たちが、四人ほど……あ、スプリングフィールドさんがいた。
目が合ったので頭を下げたら、下げ返された。
「あちらが、入口ですね」
受付カウンターの真正面に、両開きのドアがあった。左右にスライドするタイプのやつで、入りやすいように、という配慮なのか、片方が半分ぐらい、開けられている。
「開いてますね」
「ご用の方に、お気兼ねなくお入り頂けるように、開けたままにしてあります」
なるほど。
「どうぞ、こちらへ」
受付カウンターには、端末宝珠が、四人の受付担当の人のところに置いてあった。スプリングフィールドさんも、あれ、使える人なのか。
「身分証の発行は、こちらで?」
「そうですね」
前を行くグリーンリーフさんに尋ねたら、振り返って答えてくれた。
そして再び、てくてくと。わりと歩くのな。
「この建物って、広いですよね?」
「元々あった建物に、新館、という形で増築した部分があるので、建物二つ分ぐらいの広さにはなりますね」
ほーほー、と頷きつつ、さらにてくてく。
「もう少しです」
そう言って、職員以外立ち入り禁止と書かれたドアの前で、グリーンリーフさんが立ち止まった。




