1-27 プリン
プリン、おいしかった。
「おいしいものが食べられるのって、幸せですよね」
「そうだな」
食器を返す時、おいしかったですー、とおばさんとおじさんにご挨拶したら、おばさんはまたおいで、と言ってくれた。おじさんは、少し気難しい人なのかと思ってたけど、おぅ、と大きな声で返事が返ってきた。
なんだろう。なんか、とてもいい人たちだな、と思った。
あ、そうだ。
「コールズさん、質問です」
食堂を出て、あれこれ説明を受ける場所に向かう途中、思い出したことがあった。
「なんだ」
「この建物への出入りって、色々、制限があるんですよね?」
武器を預けるとかどうとか。ガロウさんは特別だ、とかそんな話がありましたけど。
「職員含めて、出入りは管理されているな」
ふむ。
「魔法で、ですか?」
「いや。受付があって、そこに名前を書く。職員の場合は、誰がいて、誰がいないかを記録するノートみたいなもんがある」
なるほど。
「あのー、私って、自由に外に出たりとか、できるんですかね?」
「当面は、付き添いの人間と一緒に行動することになるだろうな」
そうなのか。
「今後のお前についての話の続きにも関係するが、一通り、この世界の常識についての説明が終わったら、就業訓練があるからな」
就業の訓練ですか? 職業訓練ではなく?
「職業に就くために必要な常識を理解してもらうための訓練だが、お前自身を、この町の住人に紹介するという意図もある」
ぬん?
「住人への紹介というのは?」
「色々なバイトを経験してもらって、その中から、自分に合いそうな仕事を選んでもらうことになるんだが」
はへー。そのバイトで、この町の人たちとお会いすることになる、と。
「そうだ」
なるなる。
「この就業訓練が終わるまでは、外出時は職員の誰かがお前に付き添うことになる」
なんか、細かく面倒を見てもらえるんですね。
「まぁな」
コールズさんが立ち止まった。
「この会議室で、しばらく待っていてくれ。担当者が来る」
了解です。
「とりあえず、俺はここまでだ。ま、見かけたら気楽に声をかけてくれ。遠慮するなよ?」
「はい。なんだか色々とありがとうございました」
気にするな、と言って、コールズさんが片手を上げ、去っていったのを見届けてから、私は会議室に入った。




