1-24 また面妖な
また、面妖な言葉が。
人材派遣もそうですけど、会社?
「よぅ、コールズ」
「おぅ」
このリザードマンさんは、コールズさんを肩書きでは呼ばない感じか。それだけ親しい、と。
というか、でっかい人だな。見た目の印象は二足歩行のトカゲさんだけど、でも、なんだろう、強そう。あと、身体に傷跡が多い。
さて、どうしたものか。
あ、にかっと笑われた。
「その子は、今朝のあれか」
「あぁ」
ご挨拶をするタイミングは、今!
「ヨリコ・ブロッサムという名前になりました。はじめまして」
「ガロウだ。よろしくな」
ガロウさん。名字はないのかな。
「えーと、ガロウさん、とお呼びしてもいいんでしょうか? この世界は名字呼びが基本だと教わったもので、そのー」
おーおーおー、と、ガロウさん(仮)、が頷いた。
「リザードマンの名字は、人間の耳には聞き取れんらしくてな。故郷の集落の名前なんだが」
はへー。
「だから、ガロウでいいぞ」
「了解であります」
はは、とガロウさんが笑った。
「変な話し方をする奴だな」
馬鹿にするとかではなくて、他意もなく、そう思ったからそう言った、という感じ。
「癖みたいなもんでして」
「転生者は変わった奴が多いからなぁ」
ガロウさんがコールズさんをちら見した。
「昔のことをごちゃごちゃ言うな。ガキだったんだよ。悪かったな」
「年上に対するものの言い方は、相変わらずだよな、お前。副支部長だろ」
「まぁ、なんだ、あー、すいません」
気心が知れてる、というのは、こんな風な人たちのことを言うのかな。
なんだか楽しそう。
「飯を食う途中なので、邪魔しないでくれませんか」
「あぁ、悪い」
むーん。
人材派遣会社というのが、ものすごく気になってるところがあったりするんですけど。
「うちの会社のことか?」
しまった。口に出してしまった。
「いや、あー、えー、人材派遣とか、こちらの世界にあるんだなーと思いまして」
「社長は転生者だよ」
コールズさんが助け船を。
「それで? クロップ社が、うちの組合に何の用だ? 飯食いに来たわけじゃないんだろ?」
会社の名前はクロップ社か。
それと、敬語忘れてますよ、コールズさん!
「ちょっとな。支部長に話を持ってきたんだが、取り込み中だって言われてな」
それは、もしかしなくても私のせいでは。
「おぅ、なんだか、大切なご用事のお邪魔を」
いやいやいや、とガロウさんが首を振った。少し、尻尾も揺れててかわいい。
「なぁに、たいしたことじゃない。気にせんでくれ」
じゃあな、と言ってガロウさんは去って行った。
さっきから音を立てていたのは、左右の腰に下げている剣か。曲刀、というのだろうか。
武器の持ち込み、オッケーなんですね。
あ、食器、おばさんに返してる。
「あいつは特別だよ。普通は入口で預ける」
「そうなんですか」
ご飯食べながら聞きたいことが、増えた。
「飯食うか」
「ですね」
それでは、いただきマンモス。




