1-23 はいラー
「はい、ラーメンセットね」
おばさんがそう言って、コールズさんのトレイにラーメンとチャーハンを置いた。チャーハンは、量が多め。メニューには、小チャーハンと書いてあるけど。
「もしかして、大盛りとかもできるんですか」
「銅一でな」
どういち? あ、銅貨一枚。
食券と一緒に銅貨を一枚、カウンターに置いたコールズさんが、すぐ近くのテーブルに向かった。
「こっちはお嬢ちゃんのカレーセットね。それと、」
おばさんが、私からは見えない位置にあるらしい、棚的なところから取り出したものは。
「プリンね」
わーい。おー、焼きプリン。
「えーと、食券一枚と、銅貨二枚ですよね?」
おばさんがにこにこしながら頷いたので、エプロンのポケットから食券一枚と銅貨二枚を出して、私もコールズさんにならい、カウンターに置いた。
「はい、ごゆっくり」
「どもです」
トレイを持って、コールズさんの……隣りに行くべきか、それとも向かいに座るべきか。
「どうした。早く座れ」
向かいに座ろう。よいせっと。
さて。
この、カレーセットなわけですけど。
「本当にカレーなんですね」
具材が溶け込んでいるタイプのカレーで、ご飯は白米ではなく、玄米的な何かなのか、色が少しついている。サラダは、キャベツの千切りと……アスパラ?
「見た目は近いし味もだいたい同じだが、食材に使われているものは違ったりするからな」
「へー。すいません、そこのドレッシング、取ってもらっていいですか」
「ほら」
どうもどうも。
……ドレッシングとかも、置いてあるのね。
「この、器とかお皿とかコップとかは、陶器ですよね」
茶色系の陶器たち。
「食器は陶器か、木製が多いな」
おばさんが付けてくれた、スプーンとフォークは木製。
椅子やテーブルも木製。建物は石を組んだもの。コンクリートとか、鉄筋とかは、ない、のかな。
ふむ。
「こう、前世の世界っぽさが、すごく限定的というか」
「この世界にあるもので再現するしかないからな。ないものも多いさ」
水取ってくる、と言って、コールズさんが立ち上がった。
「お前の分も持ってこようか?」
「いえ。飲み物ありますので」
氷が浮いてるミルクティー。ストローはさすがにないらしい。
む?
「水? 飲める水ですか?」
「先に言っておくが、水道があるわけじゃないからな」
ですよね。あ、カウンターに置いてある陶器のポット的なものから自分で注ぐのか。
戻ってきたコールズさんが、手に取ったお箸も木製。割り箸とかは、ない。
それはそれとして。
うーむ。
「なんだ」
「醤油ラーメンですか」
「言いたいことは分かるが、とにかく、気にするな。受け入れろ」
焦がした醤油の匂いが。チャーシューのようなもの、も、のってる。
次はラーメン食べてみよう。
いや、待て。
「私、この食堂、普通に使ってますけど、いいんですかね?」
「食堂は食券があれば誰でも使える。職員専用ってわけでもない」
コールズさんが視線を向けた先に、先客のリザードマンさんがいた。
あ、立ち上がった。食器を返すのかな。
ぬ?
「……こちらにいらっしゃるようですけども」
「知り合いだからな。人材派遣会社の社員だよ」
人材派遣会社?




