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銀のペンダント  作者: 上村文処
エピソード1 転生~ステータス画面~戦い
19/1011

1-19 トーチライトさん

 トーチライトさんの目線が、私の手の動きを追う。それでも、このペンダントについて、何かを指摘しようとする様子は見えない。


「ほへ?」


 視線の動きに合わせて首を傾け、トーチライトさんを見つめてみたら、戸惑った様子で微笑み返されただけだった。

 ま、これのことはしばらく、私の中だけに留めておくことにするか。


「ブロッサムさん」


 名前で呼ばれた。


「はい?」

「簡単には答えられないと思うんだけど、あなたは、この世界で、何をしたい?」


 トーチライトさんが、ゆっくりと丁寧な言い方で私に問いかけてきた。


「……そうですねー」


 〈ステータス画面〉について、色々と聞かれるのかなと思っていたので、この問いかけには不意を突かれたところがあった。上手く説明はできないけれど、トーチライトさんはとても、真摯な人、のような気がする。

 であるならば、私も同じように、真摯に答えなければならない。


「その、可能か不可能かは分からないですけど。この世界のことも、まだ良く知りませんし」


 ようこそ、剣と魔法の世界へ、とトーチライトさんは言った。平和な世界なら、剣、という言葉はいらない。転生者(リレイター)向けに、分かりやすさを重視した説明の仕方であるにしても、だ。

 この世界は、きっと、剣が必要な世界なのだろう。


「もしかしたら、簡単なことではないのかも知れないですけど」


 剣が必要なこの世界で、簡単ではないこと、というのは、なんだろう。


「私は、ただ、平凡に、静かに生きて、天寿を全うして、この世界とお別れしたいです」


 自分の心の奥を探るうちに、自然と、そんな言葉が出てきていた。


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