1-18 さて
さて。どうしようか。
トーチライトさんとコールズさんが、何やら重苦しい雰囲気で、再び、私のステータス情報に見入っている。
ここは景気づけに、あれを。
「ばいんばいん」
「何やってんだ、お前」
ふむ。
「いえ、なんだかお二人とも、雰囲気が重いと言いますか」
トーチライトさんが力なく笑った。
「気を遣わせてしまったみたいね」
「いえ。ばいんばいんしたかっただけなので。私、ばいんばいんガールですから」
記録に残れ。私の奇態なこの言動。
「……さっきの話の続きなんだけど」
あ、なかったことにしたっぽい。
「私の固有技能の、技能階梯の話ですよね。あと、技能点がどうとか」
「この世界の、仕組みの話、ということになるかと思うけど」
長くなるけれど、と改めて前置きされて、ソファーに戻ってトーチライトさんがしてくれた説明は本当に長い話だったので、私なりに頭の中で要約してみると、こんな感じになった。
・技能には習得値というものがある
・習得値が一定の値以上になると、技能点を使用して、技能階梯を上昇させることができる
・技能階梯ごとに、何ができるのかを表す技能要素というものがある
・技能階梯の上昇は、端末宝珠の力を借りて行なう
で。
・習得値は、対応する技能を使うことで上昇する
・技能点は、種族により異なるが、人間であれば、レベルの上昇により1点ずつもらえる
さらに。
・全技能の習得値の合計値が規定値以上になると、レベルが上昇する
・つまり、複数の技能を育てていった方が、レベルが上がりやすい
むーん。
これって、当たり前のことのような気がするんですけど。
「頑張ると、できることが増える、ということですよね? 努力は裏切らない、というか」
「そういうことだ」
あー、だから、簡単じゃない、と。技能点を使うだけで、ほいほい技能が強くなるわけではない、ということですか。
「そうだ」
そうなってくると。
「私の〈ステータス画面〉の、100という数字は、確かに異常ですね」
この仕組みを色々な面で無視してる。
「なんだか頭の中がぐるぐるしてきましたよ」
そう言って胸元に手をやり、ばいんばいんした時に左側に寄った銀のペンダントの位置を、今までもそうしてきたように、私は正した。




