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銀のペンダント  作者: 上村文処
エピソード2 授業~師匠~笑う
172/1024

2-104 この音

 この音の感じだと……お掃除かな。


「お手伝いせねば」


 作業部屋に続くドアに手をかけたところで、気になったことがあった。


・奥さんは、ご近所の方々に、多分、私のことを紹介してくれている

・ルーペさんは、この部屋に、私のためのスペースを作ってくれた


 何もできない。細工師として、自分の足で立てるようになるかどうかも分からない。

 転生者(リレイター)ではあるけれど、人の役に立つような使い方が、今のところ全く分からない固有技能(ギフト・スキル)しか持っていない私に、どうして、ここまでしてくれるんだろう。


・レインツリーさんに色々言われた

・だから、私に親切にしてくれている


 レインツリーさんも奥さんも、ルーペさんも、そんな人たちじゃない。

 と思う。

 レインツリーさんは、自主性を重んじる人のように思えるし、仮にレインツリーさんに言われたからと言って、はいわかりましたと、その通りにするような人にも、ルーペさんは見えない。


「そもそも」


 ルーペさんは、宝飾細工の世界ではすごい人らしい。

 宝飾細工の技術は、魔道具を作る上で、とても大切な工程を担っている。だから、この世界にとって、とても大事なもの。

 レインツリーさんが言ってたけど、魔力の無駄を省くことに関しては、天才とかなんとか。

 どうしてそんな人が、私なんかを雇う気になったんだろう。

 考えないようにしていたことが、頭の中をぐるぐるし始めた。そうなってくると、このドアの向こうにいる人たちに、自分なんかは相応しくなくて、呑気にお掃除をお手伝いせねば、なんて言うこと自体が無礼千万に思えてくる。

 私が手伝わない方が、手早くなんでも片付けてしまうかも知れないし。

 というか、絶対そうだろうし。


「お前、何やってんだ」

「ほいっっ!?」


 ドアが、向こうから開いた。開け放たれている玄関から、陽射しが差している。奥さんが、カウンターを拭く手を止めて、笑った。


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