2-100 おっ
おっさんと、目が合った。
「おはようござい、ますっ!」
先制の挨拶。
「ああ」
おっさん、動じず。しかし、それは想定の範囲内。
「なんでここにいる」
今はまだ、朝の八時前。
「えー、玄関の、お掃除をさせて頂こうと思いまして」
「掃除?」
「はい」
怪訝な顔をして私を見たおっさんが、そうか、と言った。
「好きにしろ。奥の部屋に道具がある。勝手に使え」
「了解であります。では、失礼します」
お店の中に入り、カウンターの入口を上に持ち上げたところで、おっさんが、待て、と言った。
「はい? 何でしょう?」
「これ持ってろ」
おっさんがカウンターの上に置いたのは、鍵だった。
「店の裏口の鍵だ。明日からは、裏から入れ。掃除に出る時に、表の鍵を開けろ」
鍵。
「分かりましたです」
ぬーん。信頼の証、的なことなのか?
とりあえず、お預かりしてエプロンのポケットの中へ。キーケースとか、あった方がいいかもだなー。
ああ、欲しいものが増えていく。
ま、何はともあれ、奥の部屋に行きますかね。
おぅ、そういえば。
「あのー、質問なのですが」
おっさんは腕組みをして、こちらを見ている。質問、していいのかな。
「トイレは、どちらに?」
「奥の部屋にある。好きに使え」
「どうもです」
なるほど。奥の部屋か。ということは、今後は自由に出入りしてもいい、と。
目的があれば、だろうけど。
改めてカウンターの入口を持ち上げて中に入ると、おっさんが少し遅れてついてきた。
「へ?」
なんすか?




