2-98 今日は、いい
「今日は、いいお天気ですね」
「そうですね」
日曜日。食堂は閑散としていて、コールズさんとは会えず。
朝ご飯を食べたあと、外出許可をもらいに受付まで行ったら、グリーンリーフさんに付き添いの職員さんとして、ご紹介頂いたのが、イレーナ・ヒルさん。今、私のお天気談義に言葉を返してくれた人だ。
銀色の長い髪をそのまま真っ直ぐ背中に落としていて、背は高め。瞳の色も銀色な、銀色尽くしの、きれいな人だった。
「あのー」
何でしょうか、という雰囲気で微笑みながら、ヒルさんが私の方を見た。
「このまま、銅の板の方まで行って、そのあと、はなごろもに寄りたいんですけども」
水路沿いに歩いていけば、銅の板がある職人区画から、はなごろものある商業区画まで行くことができる。今朝、『転生者のための世界知識』に付いている地図を眺めていて、気づいた。
「ええ。お買い物ですね」
「はい。カーディガンがあったら、帰り道が寒くなくていいかなぁって思いまして」
「夕方を過ぎると、まだ冷えますからね」
「ですよね」
水路のある辺りに差し掛かれば、銅の板も見えてくる。店の前は静かで、人通りもない。私たちの話し声が、静けさの中で少し、目立っているようにも思える。
「ご挨拶されて行きますか? お待ちしますよ」
「いえ……大丈夫です。ご迷惑かも知れませんし」
「分かりました」
銅の板の前を通るルートを選んだ理由は、自分でも分からない。強いて言えば、なんとなく、だ。




