1-16 えーと
えーと。
どういうことでしょう?
「固有技能の技能階梯は、第三支部で把握している限り、転生直後の数値は1です」
おぅ。
「高すぎる、ということですか?」
「ええ」
トーチライトさんは、私のステータス情報を見て、何か、考え込んでいるようだった。
「ゲームみたいだって言ったよな、ブロッサム」
「あー、はい。そのー、転生者でないと、ピンとこないかもなのですが、そんな感じですよね? ステータスだとか、技能だとか」
技能点という言葉も出てきてましたよね。
「技能点を使うことで技能階梯を上げることが、できはするが、そんなに簡単な話じゃない」
ふむ?
「ゲームみたいじゃ、全くないんだよ。この世界は」
ふーむ。
「細かいことも、順を追って話した方が良さそうね。少し、長くなるけど」
長くなるのか。
「でしたら、先に身分証を作ってしまいませんですか。私も知りたいことがたくさんありますし、その、長くなるお話の時に、質問を挟ませて頂ければ」
「そう……そうね。ごめんなさい、そうしましょうか」
トーチライトさんが端末宝珠に触れた。ステータス情報の隣に、もう一枚、半透明の板状のものが、ひゅっと現れた。
「本来であれば、身分証に登録可能な技能と装備はそれぞれ、八つなんだけど、あなたの場合は、このままでいいわね」
「たくさんある人は、選ぶということですか?」
装備。ふむ。
「表示したいものを事前に身に着けてから、身分証を作成するの」
むーん?
「身分証というのは、自分のできることが何なのかを、他人に伝えるためのものだ。お前自身の全てを記録するようなものじゃない」
他人に伝える、と言いますと。
「戦うことを商売にするんなら、剣をどれだけ使えるか、どういう武器で戦うかを、はっきりさせておいた方がいいだろう?」
あー、はいはいはい。
「履歴書みたいなものですか? もしかして」
「そうだ」
「名前も、あ、ヨリコ・ブロッサムで登録済みですけど、これって変えたりとかは?」
「登録されている情報を書き換えることはできない」
偽名が使えないし、自分のできることについて、嘘もつけないと。
「その通りだ。ま、本来であれば、端末宝珠の担当者に、登録する技能や装備を申請して、選んでもらうんだけどな」
九個以上、技能を持っている人もいるから、ということですね。
この、横の半透明の板状のものは、そういう操作をするためのものですか。
なるほどなるほど。
略してなるなる。
「では、えーと、細かいことはあとでお聞きしますので、身分証をお願いします」
分かりました、と言って、トーチライトさんがさっきのカードと同じものを、机の引き出しから取り出した。さっきのは、サンプル的なやつだったのかな。
そして、ステータス情報の隣に出ている半透明の板状のものに、トーチライトさんが何やら触るなどしていると。
ステータス情報が光り、端末宝珠の水晶球からゆっくりと伸びてきた光線が、机の上に置かれたカードに、私の情報を焼きつけるようにして、書き込んでいった。




