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銀のペンダント  作者: 上村文処
エピソード2 授業~師匠~笑う
158/1024

2-90 奥さん

 奥さんからもゴーサインが出たところで。

 まずは、丸いパンを手でちぎって……わりと固めのしっかりしたパンなんだな。

 で、これにシチューをつけまして。


「……おいしい」


 奥さんは隣にいるので、どんな表情なのかよく分からないけれども、なんとなく、私の言葉を聞いて笑ったような気がした。

 おっさんは、焼きハムを一枚、フォークで突き刺して、そのまま無造作にシチューの中に入れた。で、また、パンをつけて食べている。

 そんな技が。


「技って何さ?」


 もぐもぐしていた焼きハムをちゃんと飲み込んでから、レインツリーさんが言った。


「いえ、ハム入れるのありなんだなー、と思って」

「好きに食え」

「あ、はい」


 私が見てたの、気づいてたのか、おっさん。


「好きに食べなさいね」


 奥さんからも、同じ言葉が。


「そうさせて頂きますです」


 なんか、緊張していたのが抜けてきたような気がする。マイペースにもぐもぐし続けるレインツリーさんが、真正面にいるのが多分、効果としては大きいんだろうな。

 ハム食べよ。これは、ナイフで切らないと駄目っぽい。

 一枚頂いて、切って、切って、切って……パンに挟んでシチューつけて食べよう。

 んむ、うまい。

 シチューの中のお野菜もおいしい。じゃがいも、たまねぎ、にんじん。の、ようなもの。

 味付けは素朴で、どこか、ほっとする感じだ。懐かしい、というのとも違うけど。

 なんだろうな。この感じ。

 あ、そうだ。質問することがあるんだった。


「あのー、明日(あした)のことなのですが」


 特定の誰かではなく、三人に同時に話しかけてます、という雰囲気を出せるだけ出して、私は尋ねた。


明日(あした)? あ、日曜日だね」

「そうですそうです」


 リターンはレインツリーさんから。


「日曜日は、就業訓練だとお休みにしないといけないって、エレノアが言ってた」


 なるほど。


「だから、ヨリちゃんは、明日はお休み。でさ、どうするの、二人とも」


 レインツリーさんが、おっさんと奥さんに話を向けた。


「就業訓練は最長で四日間までなんだけど、ヨリちゃんに、水曜日以降も来てもらうつもり?」

「ああ。俺はそれでいい」


 ……おぅ。


「そういえば、看板出てたけど。お店、またやるの?」

「そうだ。先生には、また、世話になる」

「そりゃ、全然いいよ。でも、」


 レインツリーさんが、少しだけ、()を置いた。


「いいんだね?」


 ぬ? 何がいいんだろう?


「ああ」


 お隣をちら見したら、とても静かな目で、奥さんがおっさんを見ていた。


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