2-83 普通の
普通の醤油じゃないよな。多分。
なんとなく、甘口のような気がするんだけど。
「うーん」
昼食は、昨日と同じようにおっさんに声をかけられ、奥さん手製の焼きおにぎりとスープを頂いた。食事中、途中から一人になるのも昨日と同じ。ただ、奥さんが、挨拶回りに行ってくるわね、とおっしゃったのが、昨日とは違うところ。
どちらへ、と思わないでもなかったが、私が考えても仕方がないことだろうから、
「ご飯も食べたし、頑張ろう」
目の前にある、できることを改めて頑張ることにした。
「おい」
仁王立ちのおっさんが、作業台の前にいた。
「何でしょうか」
「少し、手伝え。あれを持って外に出ろ」
おっさんが、くいっと、顎をカウンターの方にやった。
そこには、平べったい箱に入った大小様々の何かが置かれていた。
「これ、何ですか?」
「看板だ」
おっさんはそう言って、奥にあるドアの向こうに消えた。
言われたことは全てしますですよ、私は。
「よいしょっと……わりと重い」
けど持てる。
お店の入口から外に出て、しばらく待っていると、おっさんが脚立的なものと、工具箱のようなものを抱えて、玄関先にやってきた。
「それを寄越せ」
「どぞ」
「その箱を開いたままにして持ってろ」
脚立的なものの上から二段目にばらばらになっている看板の入った箱を置き、一段目に上がって、玄関を正面に見た時の右端の辺りに、看板を取り付け始めた。私が持っている工具箱の中から、釘を取り出したりして、とんてんかんやっている姿は、素人目に見ても無駄がない。
複数のパーツに分かれていた看板が組み立てられていくに従い、ノミと木槌をモチーフにしたその姿が明らかになってきた。




