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2-79 無理せず
「無理せず、できる範囲でね」
「はい」
私の返事に対して、穏やかに奥さんは頷いた。
「私、これから出かけてくるから。ヨリコちゃんは、好きなだけここにいていいからね」
それから、と奥さんが続ける。
「食器は、台所に洗わずに置いておいて」
「分かりました」
台所に向かい、手早く食器を洗ったりもろもろの片づけをこなした奥さんは、奥の部屋に行ったあと、すぐに戻って来て、じゃあね、と言って下に降りていってしまった。
動きに無駄がない人だな。
「さて、どうしようかなぁ……」
少し、高いところに透明度の低い窓がある。見上げてしばらく、ぼーっとしてみた。
・ここは、銅の板という宝飾細工のお店の二階
・私は、お昼ご飯をごちそうになっている
・焼きおにぎり、ものすごくおいしい
・豆のスープもおいしい
うん。
・おっさんの課題の意味が分からない
・手先の使い方を覚えろ、ということなんだとは思う
うーん。
「ま、やるしかないな」
奥さんに言われた通り、できる範囲のことをやろう。
ただし、手を抜いたりはしない。そういうのは、好きじゃない。
食べ終えた食器を台所に持っていき、椅子の位置を元に戻して、私は一階に降りた。
おっさんの気配はない。
「あの人、何をしてるんだろう」
作業台に戻ると、棒と皮紐が十個ずつ増えていた。
……やったろうやないか。




