2-78 ほへへ笑い
ほへへ笑いでここは逃げておこう。
「さ、食べましょ。座って」
「失礼します」
座ると、椅子の軋む音が鳴った。使い込まれている椅子、という感じがすごくする。
「いただきまーす」
「いただきます」
奥さんは焼きおにぎりをフォークで小分けにしながら食べていた。私の前に、木製のフォークとスプーンが置かれている。スプーンは多分、深めのカップに入ったスープ用。
「あれ。お箸の方が良かった?」
「いえ、違います、そういうことではないです」
あわあわしつつ、フォークで私も焼きおにぎりを切り崩し、一口。
「……おいしい」
焼けた醤油の匂いを懐かしく感じるのは、私の前世が日本人だからなんだろうけど。
焦げた醤油の香ばしさが、お米の味をすごく引き立てていて、おいしい。
「良かった」
「ほんとにおいしいです」
スープもおいしい。少し硬めに茹でてある豆を噛むと、甘味が出てきて、塩気のあるスープの味に奥行きを与えている。
……なんか、グルメ漫画みたいな物言いだな。
「休憩時間は、好きなだけとっていいからね」
「え。そうなんですか?」
「うちは、全部、職人の自主性に任せてきたから」
それは、駆け出しの私には難しいです。急いで戻るのも、なんか駄目なのかな、とか、ぐるぐる考えてしまいますです。
「そうよね。でも大丈夫。リカルドは、そういうの、一切、気にしないから。大事なのは、ヨリコちゃんが自分のペースを知ること」
なるほど。




