2-75 二つ
二つある作業台のうちの、カウンターから遠い方の作業台を顎で指して、座って待ってろと私に言ったおっさんは、ものすごくたくさんのものがある作業台の前に陣取り、何かを用意していた。
レインツリーさんは用事があるとかで、もうこの場にはいない。さっきの契約書をトーチライトさんに届けに行ったのかも知れない。
「よし」
そう言って立ち上がったおっさんが、私の前に金属製の細い棒と、皮製の紐を並べた。数えてみたら、どちらも十個あった。
「その紐を、端に一度引っ掛けてから、隙間がないように巻け」
へ?
「これを巻くんですか?」
「そうだ」
それだけを言うと、おっさんはちょうど私の右横らへんにあるドアの向こうに、消えていってしまった。
うーぬ。
「んーと。この棒に、この皮紐を巻く?」
隙間のないようにって言ってたな。
むーん。
まぁ、こういうのは考えても仕方がない。やれと言われたことを愚直にやるだけだ。
棒の長さが微妙に違うのか。皮紐の長さも違う。
組み合わせの正解を探せってこと?
ぬーん。
とりあえず、これと、これ。
「ここに、引っ掛けて、巻く」
切り欠きのようになっているところに引っ掛けて。
巻き巻き巻き巻き……。
「できた……けど。ちょっと、隙間があるな、これ」
長さが微妙に足りない?
引っ掛け方が悪いのかな。
もっと丁寧にやらないと駄目だ。
リトライ。今度は違う皮紐。
巻き巻き巻き巻き巻き。巻き巻き。
「あ、これ、皮紐の幅も微妙に違うのか」
えーと。順番に試していくしかないのか、これ。
んーむ。
「まずは、真ん中へんぐらいの長さの棒を、基準の棒にして」
同じく、真ん中へんぐらいの長さの皮紐を、基準の皮紐にして。
巻いて巻いて巻いて。
駄目だ、きれいに巻けてない。微妙な隙間が。
「難しいな。これ」
あ。私の能力値がオール4だからか。もしかして?
いや、それを言い訳にするのは、駄目だな。
「もう一回」




