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銀のペンダント  作者: 上村文処
エピソード2 授業~師匠~笑う
142/1024

2-74 それが

「それが分かってるんなら、まぁいい」


 ぬ?


「先生の言いたいことは分かった」

「そう?」

「ああ」

「じゃあ、話を進めていい?」

「先生のしたいようにしてくれ」

「分かった」


 じゃ、これね、と、レインツリーさんが、どこからかは分からないけれど、紙を一枚、取り出して、カウンターの上に置いた。


「ヨリちゃん、就業訓練、途中じゃない? それで、エレノアとも相談したんだけど、もし、ヨリちゃんがいいならね。リカルドのところでしばらく、見習いをやってみない?」


 ほへ?


「あのー、ものすごい、お話が急展開なんですけども」

「俺はどっちでもいい。お前が決めろ」


 ぬぅ。


「私は、リカルドに、ヨリちゃんの就業訓練のことを強制したりはしてないからね。今のヨリちゃんとのやり取りで、訓練場所として、ここを使うことを了解してくれた……のよね?」


 おっさんは、何も言わない。黙ってる時は、イエス、の意味なのかな、この人。


「だから、あとはヨリちゃん次第。あ、もちろん、バイト代的なものが組合(ギルド)から出るよ」


 おぅ、そういえば、そんな話もあったような。

 うーむ。


「あのー、ルーペさん」


 目だけを動かして、おっさんが私を見てきた。だから、それが怖いんだって。世の中ではそういうのを、睨む、と言うんだよ?


「えーとですね」


 おっさん、黙ったままだけど。……しゃべって、いいのかな。


「そのー、私、何もできないです。さっきも言いましたけど」


 返事がない。

 駄目だ。私、この人、苦手だ。


「細工もんに興味があるのかって、さっき聞いたよな」


 やっとしゃべった。


「はい」

「お前は、分からない、と言った」

「はい」

「だったら、それでいい。俺の方は問題ない」


 えーと?

 今度は私が黙る番だった。しばらく、考え込んでいると、おっさんが急に立ち上がって、カウンターの左端を開けた。


「中に入ってこい。始めるぞ」

「今からですか?」

「することないんだろ。このまま帰るぐらいなら、何か覚えようとしてから帰れ」


 ……まぁ、言いたいことは分からなくはないですけど。


「リカルド、これ、契約書。ここにサイン頂戴」

「分かった。――ジェンナ!」


 カーテンを開けて、多分、さっきのおばさんだろうな。あの人を大きな、良く通る声でおっさんが呼んだ。


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