2-72 さ
さぁ、私はこれから、どうすればいい。
「恩人の頼みだろうがな。俺は、気に入らないことはやらないことにしてるんだ」
駄目だ。この人、目が怖い。
「先生は、俺にこいつをどうさせたい」
「特に何も?」
「あんたは昔から……まぁいい」
おじさん改め、リカルド・ルーペさんが、私の方を見据えた。
圧がすごい。
「お前、今、することないんだろ」
「えーと、そうですね……はい」
「興味あるのか。細工もんに」
レインツリーさんが、リカルド・ルーペさんに私のことをどう説明したのか、聞いておけばよかった。
「いえっ……あのー、はなごろもさんの、二階に飾ってあった髪留めを見てですね、きれいですよねーというお話をしていたらですね、あのー、えーと、ここにいつのまにか、伺うことになりまして」
「俺が聞いているのは、興味があるのかないのか、だ」
……ぬむむ。
「分からないです」
リカルド・ルーペさん改め、このおっさんがさっき言った、興味あるのか、というのは、宝飾品を作ることに興味があるのか、という意味だと思う。でなければ、今、することがないんだろ、という確認をしたりはしないはずだ。
作ることに興味があるかどうかは、今の私には、正直言って分からない。
「そうか」
昨日の夜、レインツリーさんが帰ったあと、部屋でじっくりと銀のペンダントを眺めてみた。表面に細かい紋様が刻まれた、薄い直方体のデザインになっている、ということに、昨日になって気づいた。
直方体といっても、横から見るとぼんやり台形になっている気がする面もあったりして、正確な意味での直方体、というのでもないような気がしたし、そのことにもきっと、意味があるのだろう、とも思った。
デザインそのものの意味についての興味は、ないと言えば嘘になる。銀のペンダントが持つ力の、根拠になっているのだろうということは、素人の私にも分かるからだ。
ただ、銀のペンダントそのものに対する興味は、私が一生、一人で背負っていかなければならない課題のようなもので、誰かに話すべきことではない。だからといって、お店で見た髪留めがきれいだったから、宝飾品作りに興味を持ちました、という、真実ではあるけれど取って付けたような言い方は、このおっさんに対しても失礼だろう。




